家庭用のエアコンと異なり、業務用エアコンには法律で点検の義務が定めれれていることをご存知でしょうか。
業務用エアコンは家庭用エアコンよりも大きなエネルギーを消費するため、環境に配慮して点検義務が課せられているのです。
しかし、多くの方は業務用エアコンの法的取扱いに知識がなく、どのような点に気をつければ良いのかわからないのではないでしょうか。
そこで、今回は業務用エアコンの法的取扱いや点検方法、罰則などについて詳しく解説していきます。
業務用エアコンの点検は法律上の義務
業務用エアコンの点検は法律によって決まっており、必ず定期的な点検をしなければなりません。
ここでは、フロン排出抑制法によって規定された決まりや点検義務の種類について解説していきます。
フロン排出抑制法による決まり
業務用エアコンの点検は、家庭用エアコンと異なり、法律により義務付けられています。
業務用エアコンはフロンガスが含まれているフロン機器です。
フロンには代替フロンと特定フロンの2種類が存在し、特定フロンには含まれる塩素がオゾン層破壊に影響があるとして、製造についても規制がされています。
代替フロンには塩素は含まれていませんが、温室効果ガスの原因と見られており、フロン漏えい環境問題にも影響があることから、法律で点検の義務の対象になっています。
2015年に施行された改正フロン排出抑制法では、フロン類(代替フロン含む)の使用の合理化及び管理の適正化に関する取り決めがなされています。
次に、点検義務の具体的な内容について見ていきましょう。
点検義務の種類
法律で決められている点検義務の種類は、機器の設置に関する義務と機器を使用する際の義務の2種類があります。
機器の設置に関する義務
機器が破損などをしないように、適切な場所への設置が義務づけられています。
適切な場所へ設置後もその環境を維持、保全することが義務となっています。
また、業務用エアコンは室外機の環境も適切に整備しておかなければなりません。
一例を言えば、振動する他のものを室外機の近くに置かない、点検や修理を行う際にも十分な作業空間を確保して置く、などの条件が課せられています。
運転時・点検時の義務
機器を使用する際は、全ての機器の簡易点検が義務付けれています。
また、一定規模以上の業務用エアコンは、有資格者による専門的な点検が必要となってきますので、業者に依頼する必要があります。
また、フロン類の漏えい防止措置、未修理機器への冷媒充填の禁止も同法では義務付けられています。
フロン類の充填は、都道府県で登録されている第一種フロン類充填回収業者に委託しなければならないことになっています。
したがって、フロン類の漏えいが見られた場合は、すぐに業者等に依頼して防止措置を行わなければなりません。
さらに、機器の管理に関する点検や整備の履歴は、機器毎に記録簿へ情報を記載し、保存しておかなければいけません。
この記録の保存は廃棄までの記録が義務と定められています。
最後に、フロン類の漏えい量の算定と報告の義務をご紹介します。
第一種フロン類充填回収業者による充填があった場合、回収証明書の交付を受け、漏えい量の算定を行います。
一定以上の漏えいがあった場合は、年度毎に国に報告する義務があります。
管理者とは
上述したフロン排出抑制法の義務や違反した場合の罰則は、管理者がその責任を負うこととなっています。
この場合の管理者とは、3つのパターンによりそれぞれ異なります。
業務用エアコンを自己所有・自己管理している場合、管理者はその設備を保有している人となります。
この場合、所有者がそのまま管理者になるためわかりやすいと思います。
次に、業務用エアコンをレンタル・リースしている場合、所有者ではなく日常的に使用、管理している人が管理者となります。
つまり、業務用エアコン自体の保有者はレンタル会社やリース会社になりますが、点検などの義務は使用者に発生するということです。
リース会社任せではなく、使用している自分たちが義務を負っているということを忘れず、定期的な点検を怠らないようにしましょう。
最後に、エアコンが他人所有・他人管理である場合ですが、この場合はテナント利用者でなくビルのオーナーが管理者となります。
自分が管理者として責任があるかどうかを必ず確認しておきましょう。
点検の頻度と資格
全ての業務用エアコンには冷凍冷蔵機器の簡易点検が、一定規模以上の業務用エアコン、冷凍冷蔵機器には専門業者による定期点検が義務付けられています。
ここからは、具体的な業務用エアコンの点検頻度や必要な資格について解説していきます。
必要な点検頻度
フロン排出抑制法では、業務用エアコンの点検頻度についても規定があります。
業務用エアコンは室外機に記載されている電動機出力の違いによって点検頻度が変わります。
50kW以上のエアコンであれば、1年に1回以上の点検が必要です。
点検はエアコンの運転をしないオフシーズンであれば業者のスケジュールも埋まっていないことが多く、迅速に対応してくれるでしょう。
梅雨明けなどにはカビなどによる不具合も発生することがありますので、シーズン前に点検しておくと安心です。
また、7.5kW以上50kW未満のエアコンは3年に1回以上の点検が必要です。
50kW以上の馬力のあるエアコンよりは点検頻度は低くて済みますが、その分点検忘れが起こりがちです。
保証書などをチェックしておき、前回の点検がいつだったのか把握しておくようにしましょう。
必要な資格
一定規模以上の業務用エアコンの点検には、有資格者による点検が必要となります。
規模によりますが、「第一種冷媒フロン類取扱技術者」、「第二種冷媒フロン類取扱技術者」など、冷凍空調業界団体が認定する民間資格の保有者が点検を行わなければなりま
せん。
もちろん、小さな店舗やオフィスの点検であれば、1年または3年に一度という頻度さえ守れば有資格者が行う必要はありません。
詳細については、一般財団法人日本冷媒・環境保全機構のホームページなどで内容を確認してみてください。
違反した場合の罰則等について
フロン排出抑制法では業務用エアコンの点検の義務が規定されていますが、違反した場合には懲役や罰金などの罰則が設けられています。
具体的な罰則内容をケースごとに解説していきます。
フロン排出抑制法の罰則
同法では、「フロン類をみだりに放出した場合」、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金を支払わなければならないと規定されています。
業務用エアコンは多量のフロン類を使用していることをよく理解し、不用意な損傷などが起きないように日々気を付けてください。
破損などが見られる場合は、すぐに業者に相談する必要があります。
次に、「機器の使用・廃棄等に関する義務について、都道府県知事の命令に違反した場合」については、50万円以下の罰金が課されます。
また、「算定漏えい量の未報告・虚偽報告の場合」は、10万円以下の過料が課されます。
こちらは主に業者に任せていれば心配ないと言って良いでしょう。
フロン排出抑制法の細かな規定や要点については、環境省のホームページでも解説がされていますので、気になる方は一度チェックしてみましょう。
法律遵守でしっかりと点検を
業務用エアコンの取扱いについては法律の規定を知らない方も多いため、社内に周知を徹底する必要があります。
特に社内の設備担当者は、他の社員に取扱いについて十分注意するよう伝えておきましょう。
また、社内の備品取扱い規定などにも記載をしておくと良いでしょう。
業務用エアコンの点検日は簿冊などで管理をしておき、総務担当などが直近の点検日、次回の点検予定日を把握しておくようにしましょう。
特に大きな業務用エアコンであれば点検は毎年1回しなければならないため、毎年同じ時期にスケジュールを組んでおくと忘れずに済みます。
エアコンの点検は単にメンテナンスというだけでなく、法的な義務だとしっかり認識することが重要です。
まとめ
- 業務用エアコンの点検は法律上の義務
- 業務用エアコンの点検はフロン排出抑制法に規定されている
- 点検は規模によって1年に1回と3年に1回に分けられる
- 点検をしないと罰則がある
- 直近の点検日や次回の点検日を把握しておく