業務用エアコンはオフィスや店舗に数多く導入され、暑い夏場の冷房や冬場の暖房などに欠かせない家電製品となっています。
業務用エアコンは大きな電力を消費しますが、エアコンの構造や冷暖房の原理を知っておくと、急な故障時などにも対策できます。
また、故障やメンテナンス時にも、エアコンの仕組みをしっていると対処が早くなります。
そこで、今回は業務用エアコンの仕組みや原理、エアコンの仕組み上よくあるトラブルなどについて詳しく解説していきます。
冷暖房の仕組み
業務用エアコンは、冷房と暖房で空調の原理が異なります。
それぞれ別々に見ていきましょう。
冷暖房の原理
エアコンは液体と気体の性質を使って熱をコントロールしています。
冷房は、液体が気体になる際に周りの熱を巻き込んで奪う蒸発熱(気化熱)を利用しており、これにより冷たい空気をエアコン内部から放出しています。
たとえば、注射をするときにアルコール消毒をしますが、消毒する際に皮膚にひやっとした感覚を感じることがないでしょうか。
あの感覚は、アルコールが蒸発するときに皮膚から熱を奪うために感じます。
冷房は、この原理を利用し室内機と室外機の循環するパイプに冷媒という液体を循環させ、液体と気体の過程(物質の三態)を繰り返して、空気を冷やします。
また、冷媒の流れを逆方向にすると暖房になります。
冷暖房の冷媒サイクル
ここでは、エアコン内部の冷媒の役割、冷暖房のサイクルを具体的に解説していきます。
冷媒の役割
なぜ冷暖房が室内で効くのかというと、外気を取り入れているからです。
ここでは、暖房の場合を例に解説します。
エアコンの中では、室内機と室外機の間を「冷媒」と呼ばれるガスが循環しています。
この冷媒は空気中の熱を遠くに伝える役割を果たします。
エアコンには熱交換器が室内機の内部と室外機の内部に備えられており、冷媒が運んできた熱を伝える役割を果たします。
では冬の暖房時には、外気は冷たいのに熱をどのように取り入れるのでしょうか。
それを可能にしているのが、エアコンに充填されている冷媒です。
冷暖房のサイクル
ここでも暖房運転の場合のサイクルを例として解説していきます。
まず、気化した冷媒がコンプレッサー(圧縮機)で圧縮され、約80℃の高圧高温状態となります。
その後、高圧高温の冷媒ガスはガス管を通って室内機の熱交換器の中に送られ、室内の冷たい空気にさらされ、約50℃に冷えて液化します。
この際に、室内にある冷たい空気は熱が伝えられ、温風にかわっていきます。
冷やされ液化した冷媒は、液管を通って膨張弁と呼ばれる部分に入ります。
膨張弁を通過した冷媒はさらに圧力が弱まり、0℃程度の低温低圧になって室外機の熱交換器の中に入ります。
低温低圧となった冷媒は、熱交換機で冷媒より温度の高い外気から熱が伝えられ、液体から気体へ蒸発していきます。
この際、より多くの熱が得られるように、熱交換器に外気から風が送り込まれます。
この風は冷媒によって熱を奪われるため、室外機から放出される風は冷風となっています。
気化して低温低圧となった冷媒はコンプレッサーによって圧力を加えられ、また高温高圧になります。
このサイクルを繰り返すことによって、室内を暖房していくのです。
エアコンの仕組み上生じやすいトラブル
これまでエアコンの冷暖房の仕組みについて紹介してきましたが、エアコンには仕組み上生じやすいトラブルがあります。
いくつか具体的に見ていきましょう。
①冷媒がないと冷暖房機能が使えない
冷媒がガス欠などになると、それが原因で空気の熱を吸収する物質がなくなるため、エアコンを起動しても部屋の冷暖房機能が使えなくなってしまいます。
ガス欠を見分ける方法は色々とありますが、初心者でも確認できる簡単な方法があります。
エアコン本体内部のフィルターを外すと見えてくる鉄製の熱交換器に霜がついている場合は、エアコンの本体からガス漏れを起こしている可能性が高いと判断できます。
また、室外機の細長いパイプの周辺に霜がついている場合は、室外機からガス漏れを起こしていると判断することができます。
どちらのガス漏れも冷暖房を運転して数十分で霜が付き始めます。
これらの症状が見られる場合は、すぐに専門の業者に修理やメンテナンスを依頼しましょう。
ガス欠の原因の大半はエアコン設置時の施工ミスです。
施工ミスの場合、業者によって無料で修理してくれることがほとんどです。
②ドレンホースの詰まりが原因で水漏れ
業務用エアコンの室内機から発生するドレンパンの水は、ドレンホースというホースを通じてエアコン内部から野外へ吐き出されます。
そして、その水以外にエアコンが吸い込んだ部屋のホコリや汚れなど、エアコンが空気の入れ替えの際に吸い込んだものも一緒にドレンホースを伝って流れていきます。
それらの汚れがドレンホース内で蓄積してしまうと、ホース内で詰まってしまうことがあります。
汚れの詰まりによってドレンホースの水の流れが止まると、本来野外に排出されるべき水がエアコンの本体まで逆流してしまい、室内で水漏れを起こしまうのです。
この水漏れを解消するにはドレンホースの中の汚れを掃除するしかありません。
掃除機などを使って自身で取り除くことが可能ですが、自信がない場合は業者に依頼したほうが良いでしょう。
③室外機の発熱により異常停止する
夏場によく生じるトラブルに、エアコンの室外機が一定以上の熱を持ち、エアコンと室外機内部のシステムを守るために自動的に機能が停止することがあります。
これはよく故障と勘違いされますが、一時的なシステム停止です。
たとえば、室外機にカバーをかけたり、周囲に多くの物が置かれたりしていると室外機が外の空気を吸い込むことを阻害し、室内の空気の熱を放出することができなくなります。
そのため室外機が空気の流れの異常を感知してエラー停止するのです。
原因一番多いのが、室外機周辺に風の流れを悪くするものが置かれているパターンです。
特に執務室に荷物が多い場合は、夏場に一時的に室外機の周囲にダンボールなどを積んでしまい、それが原因で室外機が停止するのです。
このような場合は、室外機とまわりの荷物を30センチほどまで離し、風通しを良くしたうえで、数十分待ってから冷房をもう一度運転してみましょう。
もし本体のランプが点灯したりなどのエラーが出てしまい、エアコンも室外機も完全に停止してしまった場合は、リモコンで一度エアコンの運転を切り、再度運転を開始します。
もしくは、エアコンのコンセントを一度抜いた後、再度差し込んで運転を再開してみると良いでしょう。
④暖房運転中に無風状態になる
夏場と対照的に、寒い時期特有のトラブルも存在します。
エアコンの暖房は、先ほど触れたとおり、室外機の熱交換器を氷点下まで冷やすことで室内機から温風を出す仕組みとなっています。
ところが、外の天気が雨や雪など湿度が多いような条件で暖房運転を続けていると、室外機の熱交換器に霜や氷が付着します。
業務用エアコンの暖房の場合は、室外機の配管内部を流れる冷媒ガスの作用によって熱交換機部の温度は0℃以下にまで低くなっているため、熱交換器に付着した水分はそのまま凍ってしまうのです。
この状態が長時間続くと、室外機の熱交換器全体が氷で覆われてしまい、暖房能力が落ちてエアコンから温風を出すことができなくなってきます。
業務用エアコンにこの症状が見られた場合は、「霜取り運転」と呼ばれる機能を使うと状態が解消されます。
霜取り運転とは、室外機についてしまった霜や氷を溶かすための機能のことで、一旦室内の暖房を停止します。
この時の室内へ送るエアコンの風は、微風または停止状態となり、温風運転はできません。
室外機もコンプレッサーの動く音はしますが、ファンが停止している状態になります。
霜取り運転が終了するのは運転を始めてから約10分程度までであり、運転を続けると徐々に霜が溶けて液状化し、室外機から水が出てきます。
この処理が終了すれば、普段通りエアコンを使用できるようになります。
稀に、暖房を開始する段階で室外機に霜がついたままになっている場合、先に霜取り運転をおこなってから暖房が開始される場合もあります。
⑤熱交換器に汚れ・ほこりの蓄積による異臭
エアコンは室内の空気を吸い込んで、温度調節をした風を吹き出すという仕組みで成り立っています。
この空気を吸い込んだ際に、一緒に目に見えない細かいホコリなども吸い込んでおり、エアコンの中に入ったはホコリはフィルターで一度せき止められますが、さらに細かいホコリはフィルターのわずかな網目を通り抜けてしまいます。
この細かいホコリはエアコンの内部にとどまり、やがて、時間の経過とともに汚れのかたまりとして大きくなります。
この汚れの集団がエアコンの熱交換器にたまるっていくことになります。
熱交換器にホコリや汚れがたまってしまうと、エアコンを運転した際に風と一緒に目に見えない細かい汚れのかけらも吹き出し口から放出することになり、エアコンの風の送風の中にホコリや汚れが含まれ、異臭を放つ風が室内に充満することになります。
フィルターや熱交換器の正面外部は初心者でも清掃することが可能ですが、エアコンの裏側や熱交換器の内部の清掃をする場合は、高い専門知識が必要になります。
エアコン内部の細かい清掃をおこなう場合は、業者に依頼することをおすすめします。
まとめ
- エアコンは気化熱を利用して冷暖房を行っている
- 冷媒と呼ばれるエアコン内部のガスが熱を伝える役割を果たす
- ドレンホースの汚れが原因で室内で水漏れが起こる
- 室外機の周辺は荷物を置くと発熱で停止してしまうことがある
- エアコンの異臭は内部のホコリなどが原因