ベテランGメン園川
クラウド型UTMをアプライアンス型と比較
社内のセキュリティ対策にかかせないUTM。従来はアプライアンス型が主流でしたが、近年ではクラウド型への置き換えが進んでいます。
両者を比較した際、最大の違いは「サービスの提供方法」です。
アプライアンス型UTMは、社内にハードウェアを設置してサービスを提供します。
一方で、ハードウェアを設置せずに、クラウド上でサービスを提供するのがクラウド型UTMです。
UTMとしての機能や性能はどちらもサービス次第で、両者に大きな違いはありません。しかし、サービスの提供方法の違いにより、さまざまなメリットやデメリットがあります。
今回の記事では、アプライアンス型UTMとクラウド型UTMをあらゆる観点から比較して、どちらがおすすめなのかを結論づけます。
クラウド型UTMとアプライアンス型UTMの価格を比較
まずは、クラウド型UTMとアプライアンス型UTMの価格を比較します。
社内の人件費を削るならクラウド型UTM一択?
「社内にUTMを運用できるIT人材がいないなら、クラウド型UTM一択です」
「クラウド型UTMなら管理やメンテナンスを全て任せられるため、人件費の削減につながりますよ」
これは、クラウド型UTM販売を手掛ける販売員の売り文句の一つです。果たして、この売り文句は正しいのでしょうか?
答えは、「否」。クラウド型UTMとアプライアンス型UTM、どちらもUTM運用に必要な手間や時間、そして人件費は同じです。
どちらのUTMも管理やメンテナンスを自社で行う必要はありません。
不正アクセスや悪意のある通信の検知は、UTMが自動で行います。社内の誰かが常にUTMの管理ログを見張る必要はありません。UTMの管理やメンテナンスは、基本的に設置業者やメーカーが実施します。
もちろん通信ログやレポートの確認など、社内の誰かが担う作業もあります。しかしこれはクラウド型であっても必要な作業。つまり、UTM運用に必要な人権費や管理業務は両者とも同じです。
クラウド型UTMの価格相場は、PC1台あたり600円/月
クラウド型UTMの価格は、サービス利用料金×社内でインターネットを利用するPC台数で計算します。
クラウド型UTMの価格相場は、PC1台あたり600円/月程度です。
例えば、社内でインターネットを利用する台数が50台なら、30,000円/月程になります。
新人Gメン及川
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オペレーター 杏奈
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アプライアンス型UTMの価格相場は7,500円/月〜
アプライアンス型UTMの価格は、本体価格+ライセンス費用の合計金額です。アプライアンス型UTMの価格は高額になるため、多くの場合「リース契約」を結びます。よって、今回はアプライアンス型UTMの月額リース料金相場をご紹介します。
なお、アプライアンス型UTMの性能によって接続できるPC台数は異なります。具体的な相場は、以下の通りです。
▼アプライアンス型UTMの価格相場
項目/PC台数 | 10台 | 30台 | 50台 | 100台 |
---|---|---|---|---|
本体代金 | 40万円 | 70万円 | 85万円 | 120万円 |
リース料金(5年) | 約7,500円/月 | 約13,000円/月 | 約16,000円/月 | 約23,000円/月 |
ちなみに、UTMを利用できるのはラインセンスの有効期間(5〜7年程度)だけで、それを超えると何の機能も果たしません。つまり、複合機やビジネスホンのように、「再リースを繰り返して長年使う」といったことはできません。
また製品の特性上、同じUTMを長く使うことはセキュリティ上のリスクを抱えるのと同義。よって、アプライアンス型UTMはライセンス更新を目安に買い替えるのが一般的です。
どちらが安いかはPC台数次第
クラウド型UTMの価格相場は、PC1台に対して約600円/月でした。
一方、アプライアンス型UTMの価格相場(リース料金)は、UTMのスペックによって異なりますが、7,500円/月~でした。
料金の計算方法が異なるクラウド型UTMとアプライアンス型UTM。どちらが安いかは社内のPCの接続台数次第です。
▼アプライアンス型UTMとクラウド型UTMの価格相場(月額料金相場)をPC接続台数別に比較
項目/PC台数 | 10台 | 30台 | 50台 | 100台 |
---|---|---|---|---|
アプライアンス型UTM | 約7,500円/月 | 約13,000円/月 | 約16,000円/月 | 約23,000円/月 |
クラウド型UTM | 約6,000円/月 | 約18,000円/月 | 約30,000円/月 | 約60,000円/月 |
PC接続台数が10台程度など少ない場合は、クラウド型UTMのほうがお得です。PC接続台数が30台以上になると、クラウド型UTMよりもアプライアンス型UTMのほうが安く導入できる可能性が高いでしょう。
ただし上記は、あくまで「価格相場」での計算です。実際にアプライアンス型UTMが安いのか、それともクラウド型UTMのほうがお得なのかは、メーカーによって異なります。詳しくは、お問合せください。
拠点の数が多いならクラウド型UTMの方がお得
また、拠点の数も重要です。アプライアンス型は、支店の数だけ本体が必要になるため、支店が多い企業の場合はクラウド型で一括管理した方がお得になるケースが多いでしょう。
例として、PC台数が40台のケースを考えてみましょう。
まず、拠点の数が1箇所の場合は下記の通りです。
- クラウド型UTM
600円×40台=24,000円 - アプライアンス型UTM
最大接続台数50台のUTM=16,000円/月
拠点1か所でPC接続台数40台なら、アプライアンス型を選んだ方が8,000円/月も安くなります。
一方、拠点が2か所に増えるとPC接続台数が同じでも、数字は逆転します。本社にPCが20台、支店に20台でのケースを計算してみます。
- クラウド型UTM
600円×40台=24,000円 - アプライアンス型UTM
最大接続台数30台のUTM=13,000円/月(本社)
最大接続台数30台のUTM=13,000円/月(支店)
合計=26,000円
拠点が2か所でPC接続台数が20台ずつの場合は、クラウド型の方が2,000円/月お得になります。
クラウド型UTMとアプライアンス型UTMの特徴を比較
次は、アプライアンス型UTMとクラウド型UTMの特徴を比較します。
導入までにかかる時間はどちらも一緒
導入を決めてから実際に使えるようになるまでにかかる時間はどちらもほとんど変わりません。クラウド型UTMもアプライアンス型UTMも、契約後、1~2週間で使用できるようになります。
アプライアンス型UTMは本体を設置する工事が必要ですが、契約後、1〜2週間程度で利用開始可能です。
また、クラウド型UTMは、本体を設置する工事の必要はありませんが、ユーザーの登録やPCの設定など諸々の作業が発生します。よって、クラウド型UTMを利用するのもアプライアンス型同様、1~2週間程度必要です。
今後、ユーザー数変動の可能性があるなら、クラウド型UTM
今後、ユーザー数(PC台数)が変動する可能性がある場合は、クラウド型UTMを選びましょう。アプライアンス型UTMは、最初から最大接続台数が決まっています。そのため、PC台数が増えて最大接続台数を超えてしまった場合、新たにUTMを入れ替えなければなりません。
しかし、クラウド型UTMなら、PC台数が増えたとしても契約台数を増やせばいいだけです。
また、ユーザー数が減少する可能性がある場合も、クラウド型UTMならムダがありません。接続台数を柔軟に調整できるのは、クラウド型UTMです。
拠点ごとにUTM管理したいなら、アプライアンス型UTM
アプライアンス型UTMは、拠点の数だけ本体を設置します。ゆえに、アプライアンス型UTMは拠点ごとにUTMを管理できます。例えば、セキュリティの強度を「本社は強固に、支店は業務に支障が出ない程度に」といった調整が可能です。
また、リスク分散の観点からも、アプライアンス型UTMがおすすめです。クラウド型UTMの場合は、サービスにトラブルがあった場合、会社全体のPCがインターネットに繋がらなくなります。アプライアンス型は、本体がトラブルを起こしても、その拠点のPCに影響が出るだけ。リスクを最小限におさえられます。
クラウド型UTMならリモートワークにも対応
リモートワークを推奨する企業様には、クラウド型UTMをおすすめします。
クラウド型UTMなら、自宅からリモートワークを行うPCに対しても有効です。アプライアンス型UTMは、本体の配下にある端末だけに有効であるため、リモートワークに対応していません。
一応、VPN技術を使えば、アプライアンス型UTMでもリモートワークにも対応できますが、複雑な設定や設備投資が必要になります。よって、リモートワークをするPCにもUTMを有効にしたい場合は、クラウド型UTMが無難です。
クラウド型?アプライアンス型?どちらがおすすめ?
では、結局のところクラウド型UTMとアプライアンス型UTMどちらがおすすめなのでしょうか?使い方によって結論が異なりますので、それぞれがおすすめのケースを順番に紹介します。
クラウド型UTMがおすすめ
まずは、クラウド型UTMをおすすめするケースを紹介します。
- 拠点数が多い
- PCが10台以下
- リモートワークを導入している
- PC台数が変動する予定がある
アプライアンス型UTMがおすすめ
次に、アプライアンス型UTMをおすすめするケースを紹介します。
- PC台数が増減しない
- 拠点ごとにUTMを管理したい
- PC接続台数が20~30台以上で価格を安くおさえたい
クラウド型UTMの製品を比較
それでは、おすすめのクラウド型UTMを紹介します。今回紹介するクラウド型UTMは、以下2つです。
- NTTスマートコネクトのクラウド型UTM
- Cisco Umbrella
NTTスマートコネクトのクラウド型UTM
出典:NTTスマートコネクト
NTTスマートコネクトが提供するクラウド型UTMは、「インターネット回線」と「UTM」が一括になったサービスです。
NTTのセキュリティ専門部隊が、ログの管理や早期攻撃検知など、高度なセキュリティオペレーションを行なってくれます。
細かな料金は公開されていませんが、最低利用料金が「38,500円/月〜」と、規模の大きい企業向けのクラウド型UTMです。
Cisco Umbrella
出典:Cisco.com.Japan
Cisco UmbrellaはKDDIが提供するクラウド型UTMです。価格はPC1台あたり550円/月〜で、最低利用台数が10台になっています。
リモートワーク環境でも、ウェブトラフィックに対してログ管理からブロック制御までワンストップで行なってくれます。
無償で3ヶ月間のトライアルが可能です。導入を迷っている方は一度試してみてください。
アプライアンス型UTMの製品を比較
次に、アプライアンス型UTMのおすすめ製品を紹介します。
今回紹介するのは、下記5機種です。
- Fortinet Fortigate
- WatchGuardのUTM
- SophosのXGS Firewall
- Checkpoint
- ヴィーナステック
Fortinet Fortigate
出典:Fortinet
Fortinet社のFortigateは次世代ファイアウォール(NGFW)を搭載した中小企業向けのアプライアンス型UTMです。
世界6ヶ所にあるセキュリティセンターが、24時間365日徹底した体制でUTMを管理しています。
その信頼と実績から、2023年現在、Fortigateは国内最大のシェアを誇っているUTMです。
【関連記事】Fortinet Fortigateの価格比較
WatchGuardのUTM
出典:WatchGuard
WatchGuardのUTMは、世界で120万台以上の導入実績を持っており、業界では最も老舗です。
2019年には、IT World Awardsプログラムの3部門で金賞を受賞しており、UTMとしての信頼度も折り紙つきです。
また、コストパフォーマンスの高さも評価されており、国内でも根強い人気があります。
【関連記事】WatchGuardのUTM価格比較
SophosのXGS Firewall
出典:Sophos
XGS Firewallは、抜群のセキュリティ性能を持っていながら、ネットワーク内の通信速度を損なわないように配慮された、パフォーマンスの高いUTMです。
ラインナップは小規模向け~大規模向けまで展開されており、どの製品も高いパフォーマンスを期待できます。
【関連記事】SophosのXGS Firewallの価格比較
Checkpoint
出典:Checkpoint
Checkpointのセキュリティレベルは非常に高く、実際に利用されている企業の評判も良いUTMです。
ただし、他社製品と比較して、価格は高く設定されています。
「せっかく導入するならセキュリティレベルが高いUTMにしたい」という場合におすすめしたいUTMです。
【関連記事】Checkpointの価格比較
ヴィーナステック
出典:ヴィーナステック
ヴィーナステックは、業界最先端のX86ベースマルチコアハードウェアアーキテクチャを採用したUTMです。
北京オリンピックや、上海万博のセキュリティにも採用された技術を応用しており、世界的に見ても高水準な性能を持っています。
まとめ
今回は、クラウド型UTMとアプライアンス型UTMをさまざまな角度から比較してきました。
最後に、この記事の要点をまとめます。
- クラウド型UTMとアプライアンス型UTMの最大の違いはサービスの提供方法
- クラウド型UTMの価格相場はPC1台当たり600円/月
- アプライアンス型UTMの価格相場は7,500円/月~
- 実際の利用料金はPC台数次第