エコリカ・キヤノン裁判の概要
2020年10月、エコリカが3,000万円の損害賠償を求めてキヤノンを提訴しました。
リサイクルインクのエコリカが純正メーカーのキヤノンを提訴。https://t.co/XfQC7FED7l
キャノンが施したICチップへの仕様変更が「独禁法違反に当たる」とのエコリカの主張です。
「リサイクルインクを使えなくなるするためだけの仕様変更」と認められるかが争点になりそうです。
— コピー機Gメン (@copyki_gmen) October 27, 2020
インクメーカーには下記の2種類のタイプがあります。
- プリンターメーカーがインクも作る場合:純正メーカー(キヤノン、エプソン、ブラザー等)
- プリンターメーカー以外の会社がインクを作る場合:互換メーカー(エコリカ、ジット、インク革命等)
今回は互換インクメーカーである②のエコリカが、純正インクメーカーである①のキャノンに対して訴訟を起こしました。
訴訟のポイントはICチップと独占禁止法
エコリカは、インクの入れ物であるカートリッジを回収し、洗浄してインクを詰める「リサイクルインク」を販売していますが、キヤノンが施したインクカートリッジのICチップへの仕様変更が原因で一部の商品が販売できなくなったことを問題にしています。
インクに付属しているICチップとは、下の写真の金属部分です。
インク残量がプリンターに表示される機種が多いですが、そのインク残量を測定しているのがこのICチップです。
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互換品が純正品の著作権を侵害している場合は法的に問題になりますが、そうで無い場合は第三者メーカーが互換品を作ることも、訴訟を提起することも自由に認められています。
エコリカが発表した訴訟提起の理由によると、キヤノンのBCI-380/381シリーズのインクカートリッジは、エコリカなどのリサイクルインクメーカーが再利用出来ない仕様に変更されていることが、訴訟提起の理由と書かれています。
ICチップの変更は嫌がらせ?性能向上?
訴訟のポイントは「ICチップの仕様変更に性能の向上が無く、互換インクを排除したかっただけ」と裁判所に見られた場合、今回の訴訟でエコリカが勝つ可能性が高まると見られます。
この点は過去の裁判でも争点になっているため、キヤノンも十分に対策を練っていると思われます。
2021年判決では純正メーカーが敗訴
エコリカとキヤノンの訴訟の裏で、同じ互換インクカートリッジ販売のエレコムが純正メーカーのブラザー工業を訴えていましたが、東京地裁はブラザー工業による独占禁止法違反(不公正な取引方法)を認めて約150万円の支払いをブラザー工業に命じています。
この裁判で朝倉裁判長はブラザー工業のカートリッジの設計について「具体的な必要性はなく、互換品のカートリッジの販売を難しくする目的があった」と言い渡しており、性能向上ではなく互換インク販売会社への「嫌がらせ」と認定しています。
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他のリサイクルメーカーは販売中
エコリカ以外の企業はキヤノンのBCI-380/381シリーズのリサイクルインクを発売できているのでしょうか。
エコリカと並ぶリサイクルインク大手であるジットリサイクルインクの公式サイトを見てみます。
【引用】ジット公式サイト
BCI-380/381シリーズのリサイクルインクがラインナップされています。
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【参考資料】公正取引委員会のページ「印刷機器のインクボトルへのICチップの搭載」
世論はキヤノン応援派が多い?
ここからはネット上の反応を見ながら、世間がエコリカによるキヤノン訴訟をどのように受け止めたかを見ていきます。大まかに分類すると、90%がキヤノンを応援する声で、エコリカを応援する意見は10%程度しかありませんでした。
盗っ人猛々しい
てか、エコリカはパチモン作っておいて図々し過ぎる。
エコリカなんて買った事ないし純正品以外今後も買うつもりはないけどCanonは逆にエコリカを訴えてもいいレベルだと思う。
盗っ人猛々しいとはこのこと。キャノンが作ったインクの空容器にインクを再注入するだけでボロ儲けしてきたぱくり企業が研究開発費を莫大にかけてやっと製品を作ったキャノン側を訴えるとは世も末。
勝手にメーカーが承認していない互換品売っておいて、メーカーに対策されたら独占禁止法違反だって?悪徳弁護士に唆されちゃったのかねぇ。頭に何か湧いているとしか思えない。
ヤフーニュースのコメント欄より引用
Twitterでも同様の意見が見られます。
これキヤノン被害者だよな、他人の褌で相撲取ろうとしてるエコリカ…
— ヘビースモーカー (@GHOSTKNIGHTZ) October 29, 2020
これはどうなんだろう。canonとエコリカで契約があったならまだしも、勝手にリサイクルして売ってて訴えるのはどうかと。そもそも自社製品の消耗品なのになんで共通化しないといけないのよ。https://t.co/OL6wDyQZf9
— 原発は反対だ。 (@gpx_94) October 29, 2020
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このページではあくまで法律論を中心に今回の訴訟を見ていきますので、「エコリカが感情的にムカつく」というタイプの方はこれ以上は読まないことをおすすめします。
ちなみに、エコリカの事業は「違法」と考えられている方もいらっしゃるようですが、現在では純正メーカーであるキヤノンやエプソンでさえ、その主張は行っていません。なぜなら純正メーカー側が盗作(著作権侵害)でリサイクルメーカーを訴訟することは過去の判例から勝率が低いと知っているからです。
一方、ネット上の反応を見ている限り「倫理的にキヤノンが正しい」と感じているユーザーが多いことも事実です。リサイクルインク側としてはこのあたりの世論形成が想定通りに行っていない可能性がある、とは言えるでしょう。
キヤノンとの契約もせずに・・・
他には、「エコリカはキヤノンと契約も交わさずに」という意見も散見されます。
【インク業者のキヤノン提訴は筋違い】
エコリカは、インク価格を高く設定しなければ儲けが出ないメーカー側の事情の隙間を突き、安価なリサイクルインクを契約無しに販売していたため、「ユーザーの選択権」を奪っているというのはキヤノンからすれば受け入れがたい訴えだ。https://t.co/a85koQo24H— BLOGOS (@ld_blogos) October 29, 2020
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エコリカはキヤノンにライセンス料を支払っていない可能性が高いと思われますが、過去にエコリカとキヤノンの間でどのようなやり取りがされたのか(ライセンス料の交渉がされたことがあるのか)は外部には知りようもありません。
またその必要も無いため、「契約なしに販売しているエコリカが悪い」という主張には何の意味もありません。
エコリカ側に賛同者が少ない理由として、純正インクと比較するとリサイクルインクを含めた互換インクの品質が低いという意見が多くありました。具体的な口コミを見てみます。
互換インクを使うと壊れる
互換インクを使うと、純正インク使用時と比較して故障が多いという意見がありました。
再生インクカートリッジ/互換インクはオススメしない。ノズル詰まりなど故障の原因にならないとは言いきれない。
互換インクを使い、プリンターの印字関連(かすれ)早期故障が起こり安いものを使って高いプリンターを壊したと思っている。
ヤフーニュースのコメント欄より引用
一方で純正インクは品質が安定しており、メーカー保証もついているので純正インクを選んでいる利用者が多いようです。実際、国内インク利用者の7~8割程度が純正インクを使っており、世界的にも純正インク利用者が多い地域として知られています。(日系企業の新興国市場における事業革新/名古屋市立大学 松井義司)
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互換インクは使ったことがありませんが、純正インクの品質が一番。
ヤフーニュースのコメント欄より引用
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▼互換インクおすすめランキング
※5名以上の回答があったメーカーのみ掲載
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純正インクより互換インクの方が平均的な品質が悪いというのは一般常識のようになっています。
一方、例えば車のタイヤのように、自動車メーカーが取り付けているタイヤよりもブリジストン・住友ゴムのダンロップなど、タイヤメーカー(互換メーカー)が作っている製品は品質が良いと言う印象が定着している製品もあります。
その点で、互換インク=粗悪という印象が広がっている原因は、利用者の「純正インク信仰」を覆すだけの製品を互換インクメーカーが出せていないからとも言えます。
プリンターが壊れても、互換インク屋は保証しないんでしょ?
昔に一度使った事あるけど、エコリカのインクは粗悪品で発色も悪い
そして当然ながら保証しないと書いてる低俗な会社ですね
互換インクメーカーは発売以来一貫して安心保証(補償するとは言ってない)だな。プリンター本体がどうなろうが難癖つけて絶対補償しない。自社の互換インクだけ返品交換して終わり。
メーカー保証は1年
キヤノンやエプソンなどのプリンター=純正インクメーカーが設定している保証は、購入後1年間です。(有料で長期保証を付けることも可能)
しかし、互換インクを使用すると、メーカー保証が効かなくなるため、「互換インクメーカーは本体保証をしない」と勘違いしている方が多いですが、互換インクメーカーの中にはインク自体の保証だけでなく、プリンター本体が故障した場合にプリンターの修理代もしくは購入費用を負担してくれる会社もあります。
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互換インクメーカーの本体保証
各互換インクメーカーの公式サイトにある本体保証についての記載を見てます。
エコリカ
Q.エコリカリサイクインクカートリッジを使用してプリンターに不具合が発生した場合、保証していただけますか?
A.原因がエコリカリサイクルインクカートリッジにあった場合は、修理代金の補償をさせていただます。
ジット
ジット製品が起因する不具合と考えられる場合、ジットお客様相談室にてプリンタをお預りさせていただき、無償にて修理保証をさせていただきます。
インク革命
当店で購入したインク・トナーを使用してプリンターに不具合が発生した場合、プリンター修理代金のお支払い等で対応させていただきます
期間:プリンター購入から1年間
対象:メーカー保証がついたプリンターで購入後1年以内のプリンターが対象です。
万が一当社のインクが原因で故障した場合、その修理代金(または代替プリンター)を保証致します。
※メーカー保証が半年のプリンターは、当店の保証期間も半年になります。
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勝っても負けても
裁判費用程度で宣伝になるなら安いもの
マイナスであってもこれだけコメントつけば(Yahooニュースに)
この社長の勝ち
ヤフーニュースのコメント欄より引用
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プレイバック!過去の裁判は「両社見事な闘い」で互角
過去の国内での純正インクメーカーと互換インクメーカーとの裁判は、総合的に見ると両者で一進一退の互角の結果と言えます。
合法的な独占を目論む純正メーカーが自社の特許を主張し、一方で特許権をかいくぐったカートリッジを互換メーカーが見事に発明するという、非常に高度で面白い争いを続けており、両社の「そのエネルギーに敬服する」と法学者の帖佐隆氏は述べています。(消耗品ビジネスの攻防と特許権・独占禁止法/久留米大学 帖佐隆)
代表的な2つの裁判の結果とおおまかな争点
【①キヤノン×リサイクルアシスト】純正メーカーのキヤノン勝訴(2007年最高裁)
リサイクルアシストはキヤノンの空になったカートリッジを家電量販店で回収し、それに新しくインクを詰めて販売していました。東京地裁ではカートリッジをリサイクルしている時点で特許権は無くなっているとしてリサイクルアシスト側を勝訴としました。
しかし最高裁では、リサイクルの時点で特許が無くなっているとする東京地裁の見方を覆し、カートリッジに穴を開けてインクを充填するリサイクルアシストの方法がキヤノンの特許を侵害しているとしてキヤノンの勝訴としました。
【②エプソン×エコリカ】互換メーカーのエコリカ勝訴(2007年最高裁)
エプソンが主張する特許が新規性がなく無効との判断で東京地裁でエコリカ勝訴し、その後の最高裁でもエコリカが勝訴しました。この判決が出たのは上記①の判決が出た翌日であり、裁判所にとっても難しい判断であったことが予想できます。
争点は特許侵害から独禁法へ
純正メーカーは当初、カートリッジの形状に関する特許への侵害を主張していました。しかし互換メーカーがこの特許をかいくぐったために、現在のようにICチップ関連の特許を主張せざるを得なくなったという背景が有ります。
しかしその戦略は外れ、ICチップ設置の主目的が「互換インクの排除」であり、特許権として認められないとされました。
これが争点になった別の裁判(大阪地裁2011年(ワ)第13665号)では和解で終了しており内容は公表されていませんが、その後の両者対応を見る限り、互換メーカーの勝訴的な和解であったと見られています。
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裁判の結果はキヤノンの勝利
※2023年6月追記
2023年6月2日、大阪地裁は「リサイクル品を使った際にインク残量データが表示されなくても、リサイクルインクの販売に大きな影響は無い」という趣旨の発言をし、エコリカ側の訴えを退けました。
新人Gメン及川
ベテランGメン園川
エコリカ側は控訴も検討していると発表していますので、今後の展開を注視したいと思います。
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