ビジネスフォンの電話回線工事
ビジネスフォンは電話機を購入するだけでは使用できません。使用するためには電話の回線工事が必要で、専門の業者が工事を行います。新設・移設・増設など、様々なタイミングで行われる回線工事では、どのようなことが行われ、どのような点に注意をしなければならないのでしょうか?具体的にチェックしていきましょう。
ビジネスフォンの新設工事
専門の工事業者がオフィスを訪問して、電話配線の引き込みや電話機の接続、主装置の設定工事を行います。工事の時間は電話機の台数やフロアの広さ、フロア数によって異なりますが、目安としてはビジネスフォン10台で半日程度です。なお、新設工事に限らず、電話回線の工事には必ず「立ち会い」が求められます。
電話回線の種類
まずは電話回線の手配を行います。ほとんどの場合、ビジネスフォンを購入する際に、電話回線も同時に選択し、工事の依頼まで行います。
電話回線の種類は、主に一般家庭でも使われている「アナログ回線」、1回線で2つの同時通話が可能な「ISDN回線」、NTTが提供する光IP電話「ひかり電話(ひかり回線)」、インターネットを利用する「IP電話」の4つに分かれています。
アナログ回線
音声を銅線に乗せる回線で「一般回線」とも呼ばれています。1回線の同時通話数=1のシンプルな回線なので、誰かが外線で通話中は、その電話が終わるまで外線を利用できません。外線をそれほど使わないオフィスなら差し障りないでしょうが、電話の利用頻度が高いオフィスにはオススメできません。
ISDN回線
銅線の中をデジタル化された音声が通る回線で、ビジネスフォンの主装置やターミナルアダプタを使って音声を変換するため、回線に電話機を繋ぐだけでは機能しません。1回線の同時通話数=2なので、誰かが外線で通話中でも電話の受信・発信ができます。
ひかり回線(光回線)
光ファイバーとも呼ばれる回線で、光による点滅信号で通信します。インターネット回線のオプションサービスになるため、ネットを使うオフィスであれば、基本料金を安く抑えられます(通話料もアナログ回線やISDN回線より割安です)。近年はビジネスフォンの主流な回線として普及しており、NTTの「ひかり電話」の他に、「auひかり」「NURO光」「ドコモ光」「ソフトバンク光」など複数の業者がサービスを提供しています。
なお、「光回線」は大容量のデータを高速で通信できるため、通話だけではなくファイルのダウンロードや転送、ネット動画の閲覧などもスムーズに行うことが可能です。
IP電話
IP電話は光回線と同じく、インターネットを利用して音声通話を行います。電話番号は主に050から始まる番号で、市外局番は取得することができません。
ただし、NTTの光IP電話「ひかり電話」なら、IP電話でも市外局番を取得することが可能です。
新設での電話回線工事の流れ
新設での回線工事を行う前に、まずは電話機の用意が必要です。また、回線工事の前に電話機の配置(レイアウト)を考えておきます。その配置にしたがって、配線工事等が行われます。
新人Gメン及川
オペレーター 杏奈
工事当日までに済ませておくこと
新しく事務所を借りた場合は、オフィス新設の手続きなどを先に済ませておきます。同様に電話機の用意とレイアウトの決定は済ませた状態で、回線工事を依頼します。オーダー内容に合わせて業者が部品を手配し、工事日に回線工事が行われます。
なお、建物によっては主配電盤が施錠されているので、工事当日には解錠できるように管理会社へ依頼をしておきます。
工事当日
新設・移転・増設問わず、工事当日は「立ち会い」が必要です。
最初に、提出したレイアウトに沿ってカーペットが剥がされ、電話線の手配が行われます。業者は慣れているので、特にチェックすることはありませんが、基本的に作業が終了するまで、その場を離れられません。
電話線の手配が終わると、次に主装置を取り付けます。外線設定、内線設定、留守番電話設定、転送設定などが行われ、主装置と電話線を1本ずつ接続していきます。この際、途中で「会社に電話をしてみる」など、簡単なテストが行われます。
次にカーペットを戻し、露出配線の有無をチェックし、配線を整理します。
最後は、発注通りの工事が行われているか?を一緒に確認し、問題があれば修正依頼を、問題がなければ作業完了書にサインをして工事は完了です。
移転や増設の際も、基本的な流れは同じです。
新人Gメン及川
オペレーター 杏奈
また、新しく開設したオフィスはデスクなどの什器(主に電話機を設置する場所になる家具)を、工事前日までに配置しておくと配線の長さにズレが出ません。デスクなどの什器が搬入されていない状態でも工事を行うことは可能ですが、後からデスクの上に電話機を設置することになるため、配線の長さがぴったりにならないことがあります。
新設での電話回線工事費用の目安
電話回線の工事費用は、電話機の台数やフロアの広さ、フロアの数など状況によって異なります。さらに、工事業者によっても料金は大きく異なります。
ベテランGメン園川
新人Gメン及川
ベテランGメン園川
金額 | 内訳 | |
作業員派遣費 | 10,000円 | 10,000円×1人 |
主装置設定費 | 15,000円 | 15,000円×1台 |
電話機接続費 | 100,000円 | 10,000円×10台 |
電話線収容費 | 25,000円 | 5,000円×5回線 |
部品代①:ケーブル代金 | 25,000円 | 500円×50m |
部品代②:モール代金 | 2,000円 | 2,000円×1ヵ所 |
合計金額 | 177,000円 |
※モールとは電話線やLANケーブルなどを配線するときに使用するカバーです。その他、FAX接続費や屋内配線費などが掛かる場合もあります。
ビジネスフォンの移設工事
オフィスの移転や部署の引っ越しなどで、利用中のビジネスフォンを新しい移動先で使うためには、回線工事が必要です。主装置ごと持って行けば、そのまま使えると誤解していることが多いですが、移動先のレイアウトに合わせて配線の引き直し作業や新しく電話回線を収容する等、新設工事と同じくらいの打ち合わせが必要です。
また、同一市内への移転でも電話番号が変わる場合があります。電話番号を変えたくなければ、移転先を正式に決める前に、電話会社へ電話番号の変更について確認しましょう。電話番号が変わる場合は、名刺の変更や公式サイト・SNS公式アカウントの修正など、余計な手間が発生してしまいます。
移転での電話回線工事の流れ
移転で回線工事を行う際は、新設時とは異なり、移転前の事務所にて電話機の回収を行います。ケーブルやモールの撤去作業も行うため、土日など会社が休みの日を工事日に指定しましょう。
また、移転の約1ヶ月前には移転の申請と電話回線の工事の手配を済ませておくと安心です。その際に、電話回線とインターネット回線、ビジネスフォンの工事日を同じ日に指定しておくとスムーズです(ただし、移転前の事務所での作業も発生するため、新設での回線工事より作業時間は掛かります)。
その後の流れは、新設と変わりません。移転先のレイアウトなどは事前に考えておき、主配電盤が施錠されている建物では管理会社に解錠ができるように依頼をしておきます。
移転での電話回線工事の注意点
オフィスの新設時は「やるべきこと」を1つ1つ、順番にこなしていくこともできますが、移転時は全ての移動を一斉に行わなければならないので、ビジネスフォンだけに構っていられません。
そのため、新設時よりもビジネスフォンに費やす時間が少なく、確認不足でトラブルを招いてしまうこともあります。
オペレーター 杏奈
- 移転先の電話回線やインターネットの手配は済んでいますか?
- 移転の日程と電話工事・インターネット工事の日程は合っていますか?
- ビジネスフォンの数や同時通話数を増やす場合、拡張できる機種・プランですか?
上記のうち1つでも確認を怠ってしまうと「移転してからビジネスフォンが使えなくなる」ので、注意が必要です。特に、移設のタイミングで増設を希望するケースが多く、利用中の電話機が拡張できる機種なのか?増設できるプランなのか?を確認し、対応していないようなら「新しくビジネスフォンを買い替える」or「プランを変更する」など、ビジネスフォンの契約を見直す必要があります。
その他にも、移設時は什器の引っ越し業者をはじめとする複数の業者が出入りするため「何をどの会社に何時に依頼したのか?」など、スケジュール管理も非常に手間が掛かります。可能であれば、業者は数社に絞るなどして、移転に関する窓口を少なくすると良いでしょう。
移転での電話回線工事費用の目安
移転工事の費用も工事業者や電話機の数、などによって料金は大きく異なります。
ベテランGメン園川
金額 | 内訳 | |
作業員派遣費 | 10,000円 | 10,000円×1人 |
移転前事務所での撤去作業費 | 25,000円 | 主装置、電話機など一式 |
主装置設定費 | 15,000円 | 15,000円×1台 |
電話機接続費 | 100,000円 | 10,000円×10台 |
電話線収容費 | 25,000円 | 5,000円×5回線 |
部品代①:ケーブル代金 | 25,000円 | 500円×50m |
部品代②:モール代金 | 2,000円 | 2,000円×1ヵ所 |
合計金額 | 202,000円 |
※その他、FAX接続費や屋内配線費などが掛かる場合もあります。
ビジネスフォンの増設工事
スタッフの増員や事業内容の変更で、ビジネスフォンを増設する場合、電話機を新たに用意するだけで使うことができると考えている方も多いですが、電話機の追加接続には業者による増設工事が必要です。また、電話機やプランによっては、増設や同時通話数の増加ができないこともあります。
新人Gメン及川
ベテランGメン園川
そのため、ビジネスフォンを新規で導入する際は、増設時のことも視野に入れて、拡張できる機種の選定や余裕のあるプランを選ぶことが大切です。中古のビジネスフォンを選ぶことは、安さを重視するうえでは非常に有効な方法ですが、増設時に同一機種が見つからない等の懸念もあります。
増設での電話回線工事の流れ
増設工事は、新設と基本的な流れは一緒ですが、事前に主装置のスペックを確認しておく必要があります。「主装置を変更しなくても増設ができる」「主装置にユニットを追加する」「主装置のグレードを上げる」など、主装置のスペックと増設する台数によって、対応方法が変わるので、必ずビジネスフォンを購入した業者に確認しましょう。
また、電話機を増設するだけなら問題ありませんが、電話回線の増設や変更が生じる場合は、一時的にビジネスフォンが利用できなくなることがあります。土日など、会社が休みの日に増設工事を依頼しましょう。
増設での電話回線工事の注意点
電話機の増設に伴い、利用している電話機のレイアウトを変更すると、配線の引き直しが発生するため、工事費が高くなってしまいます。増設時でも現状の電話機は位置を変更しないレイアウトにしましょう。
また、純粋に電話機を増設するだけでは同時通話数は変わりません。同時通話数を増やすことも一緒に検討しましょう(ただし、同時通話数を増やすと利用料金は上がります)。
増設での電話回線工事費用の目安
増設の費用も、新設や移転と同様に、工事業者や電話機の数などによって料金が異なります。
ベテランGメン園川
金額 | 内訳 | |
作業員派遣費 | 10,000円 | 10,000円×1人 |
主装置設定費 | 15,000円 | 15,000円×1台 |
電話機接続費 | 30,000円 | 10,000円×3台 |
部品代①:ケーブル代金 | 25,000円 | 500円×50m |
部品代②:モール代金 | 2,000円 | 2,000円×1ヵ所 |
合計金額 | 82,000円 |
※その他、回線も増やす場合は別途料金が発生します。
【まとめ】電話回線工事は早めに業者へ相談!
このように、電話回線工事は新設・移転・増設で、あらかじめ確認しておくポイントが異なります。工事の流れ自体は変わりませんが、事前の確認を怠ると、特に移転や増設では「ビジネスフォンが使えない」など予期せぬトラブルが起こってしまいます。
- 新設の場合は、ビジネスフォンの用意とレイアウトの決定を事前に行っておく
- 移転の場合は、移転前の事務所でも作業が行われる
- 移転の場合は、オフィス移転の日程と電話工事・ネット工事の日程が合っているか?を確認する
- 増設の場合は、ビジネスフォンの拡張を確認する
- いずれも「立ち会い」が必要で、主配電盤は解錠できるように管理会社へ依頼しておく
- 工事費は業者によって異なる(フロア数や電話機の数など条件によっても異なる)
- 3月~4月など混雑する時期は早めに工事の手配を行う
また、電話工事の際に、LANケーブル工事も一緒に行うと効率的で、事務所内がキレイに仕上がります。現在は電話機とパソコンをセットで利用する企業が多いため、インターネットの接続工事や複合機の設定なども一緒に請け負ってくれる業者に依頼すると良いでしょう。
オペレーター 杏奈