業務用コピー機メーカーとしてエプソンは後発で、大きなシェアを持っているのはリコー、ゼロックス、キャノンなどのレーザー複合機メーカーです。それらのメーカー比較記事はこちらです。【関連記事】業務用複合機メーカーのおすすめ比較
エプソンの歴史
「EPSON」のロゴで知られているセイコーエプソン株式会社は、1942年に有限会社大和工業として長野県に創業。その後、株式会社第二精工舎(現セイコーインスツル(株))より第二精工舎諏訪工場の事業所を譲渡された後、社名を変更しながら現在に至ります。
EPSONの特徴は製品カテゴリの多さにあり、家庭用インクジェットプリンタColorio(カラリオ)を始め、ビジネス用途でのプリンター、産業用の大判プリンター、その他時計も含め、様々な製品を製造しています。
エプソンの動向
近年、レーザープリンターのカテゴリにおいては、OKIやBrother、京セラなどが台頭しシェアを奪っており、EPSONがOffirio(オフィリオ)のブランド名で展開していたレーザープリンターはEPSON自体があまり注力しなくなりました。恐らくシェアの奪還が厳しいことやエンジン部分のロイヤリティ(後述)などが関係しています。
代わりに長年培ってきたEPSON独自のインクジェットの技術・ノウハウを結集して作り上げたのが新たなビジネスインクジェットのカテゴリ(通称:スマートチャージ)です。
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現在EPSONのレーザープリンターカテゴリでは、LP-M8170シリーズが唯一のA3複合機として販売されています。注力しなくなったとはいえ、やはりEPSON製品。
機器としても性能としても良品であるため、今回はLP-M8170シリーズについてピックアップしご紹介します。
EPSON業務用レーザープリンターの特徴
強み
(1)エンジンの耐久性が高く大量印刷向け
EPSONが複合機のプリンター部分(エンジン)に採用しているのは富士ゼロックス製の DocuPrint C34xxシリーズであり、EPSONのプリンター部分は富士ゼロックスのOEM製品です。LP-M8170の装置の耐久性は90万枚とかなりの高耐久力を持っており、通常換算(5年間使用)で、月間約15,000枚の印刷が可能です。
大量の印刷をしたい場合は、耐久性の高いEPSON複合機は適していると言えます。
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(2)ランニングコストはOKIより安い
オフィス用のレーザープリンターに記載されている公称値のランニングコストは、各社公平性を保つため「JIS 6932(ISO/IEC19798)」という同一規格を用いて算出します。
EPSONの公称値では、カラー約10.9円、モノクロ約2.7円となっており、同等性能のOKI(MC883dnw=カラー約11.7円/モノクロ約2.8円)と比べると、ランニングコストが安いのが特長です。>>OKIコピー機の特徴とランニングコスト
一方、カウンター契約が必要な業務用複合機メーカーの中でも、京セラはカラー7円/枚、モノクロ0.7円/枚のカウンター料金で保守価格もカウンター料金に含まれるので、京セラの方がランニングコストは大幅に安いと言えます。
弱み
(1)印字速度
EPSONの複合機は大手のコピー機と比べると低価格帯の商品であるため、どうしても大企業に導入されているキヤノンやリコーゼロックスなどと比べると、印刷の速度などで圧倒的な差が出てしまいます。
大手三社のミドルスペックのコピー機が40ppm以上(1分間に40枚以上)の印刷速度なのに比べ、EPSONはカラー/モノクロ共に32ppm以下と印字速度は劣るといえます。
(2)保守費用が高い
EPSONの複合機は家電量販店などでも買える一般的な家庭用プリンターと同じ扱いであるため、通常は本体購入時に保守のサービスは付いていません。(※一般的なコピー機はカウンターチャージ料金という印刷代に保守費用が上乗せされています)
EPSONは別途オプションとして保守パックを購入することはできますが、保守パックの価格が高いため、「ここまでの費用を本体とは別に払うのであれば、コピー機にするか、同等性能のOKIを買うか」と悩んでしまうところです。
※保守パック参考価格:TLPM81705=405,000円(税別)/本体と同時購入、5年間保守、定期交換部品含む。
(3)組立てが大変な為、搬入作業が必須
EPSONの複合機は、複合機というよりは“複合機のようなモノ”という変わった特徴を持っています。
メーカーサイトにも記載されていますがEPSONの複合機は、本体である「プリンター」を「専用キャスター」に乗せ、それらを「プリンター専用のラック」と組み合わせ(合体させ)ることで複合機となる仕様です。そのため部品点数が多く、一般の方が「既に出来上がっている複合機」との認識で購入してしまうと、組立てが煩雑です。
LP-M販売時からそういったユーザーの声が多かったことから、一部量販店などでは、EPSON製品を案内する際は必ず「搬入・設置メニュー」を案内しています。
当メニューの価格としては21,000円~75,000円(時間や条件で異なる)と高額なため、こちらもデメリットとして挙げられます。
エプソンのコピー機が向いている企業
想定されるケースとして、以下の3点のケースがあります。
①オフィス規模が小さく、大型の複合機が置けないなどの中小企業
1台の複合機を数人~数十人(20人程度)で使用する場合はEPSONの複合機で問題ないでしょう。
➁Adobe社PostScript 3の出力環境が必要
100万円以下のプリンターとしては珍しく、Adobe社純正のPostScript 3の出力に対応しています。(注:最上位モデルのLP-M8170PSのみ対応)
IllustratorやPhotoshopなどAdobe系ソフトを多用するデザイナーなど、出力環境として純正のPS出力機が欲しい場合は、EPSONがおすすめです。
➂大企業でのサブ機として使用
近年、大企業の印刷環境はキヤノン、リコー、ゼロックスなどの大手三社の大型機に集約されている場合が多いです。(大きなフロアの真ん中にコピー機が1台だけ、等)
ただし、このような現場でヒアリングをすると、「コピーをしたいのに待ち時間が長い」などの不満もしばしば。
集約化の結果として、1台のコピー機に、プリントやコピー、FAXなどの使用が集中してしまい、ユーザーの渋滞が起こることもあるそうです。そういったケースでは、メイン機として大型のコピー機、サブ機にEPSON複合機など、用途にあわせて印刷環境を分散化させるのも良いといえます。
エプソンのコピー機が向いていない企業
逆にお勧めしないパターンとして以下の3パターンが想定されます。
①写真印刷など印刷濃度が高い(ベタ塗り)印刷が多い
EPSONは一般的なコピー機のチャージ制(1枚印刷すると〇円)とは異なり、換えのトナーを購入するという方式です。(家庭用プリンターでいう換えのインクを購入するのと同じ)。そのため、トナーの消費が激しい濃度の高い印刷を頻繁にするとトナー購入の費用が高額となってしまいます。
ただし先述のとおり、LP-M8170PS(最上位モデル)はAdobe社純正の PostScript 3に対応しており、トナー代よりも出力品質を重視される場合は別です。
➁高速印刷を行う環境
EPSONの弱みでも紹介したとおり、LP-M8170は印刷速度が速いわけではありません。
32ppmという速度であるため、一度に大量のページや資料を印刷する場合は、ややストレスを感じることでしょう。
➂中綴じやホチキス止めが必要
中綴じなどは非対応なため、それらの機能が必須な環境ではおすすめできません。
EPSONレーザープリンターの価格相場
①最上位モデル:
LP-M8170PS(Adobe純正PostScript 3対応)=標準価格:779,980円(税別)(想定売価=63万~75万円程度)
➁通常モデル:
LP-M8170F(ファクス対応モデル)=標準価格:679,980円(税別)(想定=55万円~65万円程度)
➂エントリーモデル:
LP-M8170A(ファクス非対応のエントリーモデル)=標準価格:559,980円(税別)(想定=47万円~53万円程度)
おすすめ機種
ファクス文化が薄れつつある昨今、ファクス機能が必須でなければ、エントリーモデルであるLP-M8170Aで必要十分です。
まとめ