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【3Dプリンター×車】自動車業界活用事例
世界で最も早く自動車業界で3Dプリント技術を取り入れ始めた会社の1つに、アメリカのフォード・モーター・カンパニーが挙げられます。1988年から3Dプリンターを導入したフォードでは、プロトタイプだけでなく、治具や量産車用の部品も3Dプリンターで製造しています。
台数限定モデルや純正のオーダー品など、生産数が少ない場面でも3Dプリント技術は使われ始めています。各種コンポーネントやボディなど全体の製造に3Dプリンターを活用した車も登場しています。
GM:【3Dプリンター×部品】開発期間を9週間短縮
出典:General Motors公式
GMは2020年、ミシガン州デトロイト郊外の研究開発拠点内に3Dプリント産業化センター(AIC)を開設しました。センターには24台の3Dプリンターが設置され、様々な印刷方法での製造をテストできるようになっています。
これまでにもGMは、3Dプリント技術を利用した開発製造に挑戦してきました。例えば、「シボレー・コルベット」の開発に使用されたブレーキ冷却ダクトも3Dプリンターで出力されたものでした。3Dプリント技術の活用により、開発期間を9週間短縮し、コストも60%以上削減できたといいます。
2022年7月には、キャデラックの新型EV「CELESTIQ」に他のGM車両よりも多い、100点以上の3Dプリント部品を組み込む予定だと発表しました。グローバルテクニカルセンターへ100億円規模の設備投資を行い、組み立て工程で仕様する工具や治具、ゲージにも付加製造技術を活用するとのことです。
フォルクスワーゲン:【3Dプリンター×治具】生産コスト90%削減
出典:Volkswagen公式
フォルクスワーゲンでは2010年代から3Dプリンターを導入しています。数十万円程度の安価なデスクトップ型3Dプリンターを利用し、治具や備品の製造に活用しています。
外部業者に委託していた治具など93%のツールを3Dプリント技術を用いて内製化したことで、生産コストを90%以上削減し、ツール開発時間も95%削減することに成功しました。
3Dプリント技術を使えば、現場の意見をフィードバックしたツールを一晩で製造し、翌日にはライン状でテストできるため、生産効率の向上に大きく貢献しています。結果、3Dプリンタの設置から約2ヶ月で100%ROIを達成しました。
現場の利用者にも、治具や工具を3Dプリンターで製造するメリットがあります。金属製だった工具を3Dプリンターで印刷し、ナイロンカーボンファイバー製にすれば、従来の10〜30%程度の重量になり、誰でも取り回しやすくなります。
2020年末、フォルクスワーゲンは多様な材料を加工可能な大型3Dプリンター「Stratasys J850」を2台導入しました。
今後、フォルクスワーゲンはフルカラーの試作品制作にも3Dプリント技術を導入することで、大幅な効率化やデザインの創造性を実現していくことが予想されます。
トヨタ スープラ:【3Dプリンター×復刻パーツ】生産終了パーツの製造
出典:TOYOTA公式
トヨタでは、販売終了している補修部品を復刻し、純正部品として再販する「GRヘリテージパーツプロジェクト」を開始。3Dプリント技術を利用して、旧モデルの部品を製造することで、「思い出の詰まった愛車に乗り続けたい」というユーザーの想いに応えています。
GRヘリテージパーツプロジェクトでは、トヨタ2000GTやA70スープラ、A80スープラ、AE86など根強い人気を誇るトヨタを代表した車種が復刻の対象となっています。
A70スープラのフロントドアガーニッシュの復刻部品は3Dプリンターで製造されています。3Dプリントを担当したSOLOZEは、自動車メーカーの純正パーツ製造に成功した国内初の例として話題になりました。
さらにトヨタでは2022年6月、試作品だけでなく部品も製造するために3Dプリンターを導入。小ロットの実製品での適用が期待されています。
XEV YOYO:【3Dプリンター×すべて】エクステリアに全面的に利用!
出典:XEV公式
2018年にイタリアで誕生した新興企業XEVでは、ガラス、シャーシ、シート以外のエクステリアを全て3Dプリンターで製造した電気自動車「YOYO」を発表しました。
YOYOはLSEV(Low Speed EV)に分類される二人乗りのコンパクトな電気自動車です。バッテリー容量は9.2kWh、航続距離150km、最高時速は時速70kmと、街乗り向きの設計となっています。イタリアの郵便局が5000台注文したことでも話題になりました。
車両製造に3Dプリント技術を利用することで、部品点数が減り、軽量化や低コスト化が容易に叶えられます。従来の車両に比べ、廃棄材料を70%程度まで削減しました。
さらに、デザインや仕様の自由度が高いことがユーザー側の満足度に繋がると期待されています。外装のデザインはオーダーメイドで作成可能。YOYOをベースにし、ユーザーの要望に合わせて様々なバリエーションの製造ができるそうです。
自動車業界向けおすすめ3Dプリンター5選
自動車業界では、3Dプリント技術が広く活用されています。既に実績導入がある3Dプリンターを中心に、おすすめの3Dプリンターをご紹介します。
INTAMSYS「FUNMAT HT」100万円前後
スーパーエンプラが使える業務用3Dプリンター
出典:intamsys.jp公式
まずはパーツや治具作りに3Dプリンターを使ってみたい!という方は、INTAMSYS「FUNMAT HT」を検討してみてはいかがでしょうか。
FUNMAT HT本体は530×490×645 mm3と小型ですが、PEEKやPEI(ULTEM)、PPSUといったスーパーエンプラも加工可能で便利な1台です。もちろんPLAやABSも使えます。使用可能素材が多く、精度が高いにも関わらず、100万円程度で購入可能。
VWのように「まずは治具作りで3Dプリンターのお手並み拝見を・・・」と考えているなら、間違いなく候補に入る1台になるでしょう。
▼FUNMAT HTのスペック情報
価格帯 | 100万円前後 | 造形方式 | FDM |
素材 | ABS-M30・PC・PC-ABS・PPSF・ナイロン12など16種の樹脂 PEEK・PEI(ULTEM)・PPSU・ PA(NYL)・ PC・ ABS・ Carbon Fiber‐Filled・ PETG・PLA・PVA・ETC |
造形エリア | 260 x 260 x 260 mm3 |
本体サイズ/重量 | 530 x 490 x 645 mm3/46 kg | 用途 | 試作品、治具など |
Stratasys「J850」 3,000万円〜5,000万円
VWの導入実績あり!フルカラーの造形におすすめ
出典:Stratasys公式
StratasysのJ850は造形サイズこそ490 mm × 390 mm × 200 mmと小さめですが、色の表現幅は50万色と非常に広くなっています。造形方式はインクジェット(PolyJet)です。
試作品の製作に多彩な表現が可能な3Dプリンターを活用することで、デザイナーの創造性を自由に発揮したモデルを作ることができます。
フルカラーの試作品を3Dプリンターで作れば、従来の手法では必要不可欠だったパーツの組み立てや塗装の工程にかかる時間とコストが削減でき、技術者にとっても3D技術導入のメリットは大きいでしょう。
▼J850のスペック情報
価格帯 | 3,000万円~ | 造形方式 | インクジェット(PolyJet) |
素材 | 硬質樹脂・ラバーライク樹脂・ABSライク樹脂・複合樹脂(1,000種以上)など | 造形サイズ | 490×390×200 mm3 |
本体サイズ/重量 | 1,100 x 1,400 x 1,260 mm3/430 kg | 用途 | フルカラーの試作品など |
HP「Jet Fusion 5200」4,000万円~6,000万円未満
スープラの復刻部品製造で活躍!高品質と高生産性!なのに低コスト
出典:HP公式
HPのJet Fusion 5200はトヨタ社のスープラA70の復刻部品の製造で使用されたことでも有名です。最終部品にも使用可能なほど、高い強度と精度をもった部品を製造できます。
さらに、HPのJet Fusion 5200には高速造形可能、冷却待ち時間不要、粉末処理の手間不要と、作業者にとっても嬉しい技術が詰まっています。付帯設備も導入すれば、後処理も自動化できます。作業効率が良く、部品生産にも耐えうる1台でしょう。
▼Jet Fusion5200のスペック情報
価格帯 | 4,000万円~6,000万円 | 造形方式 | HP Multi Jet Fusion テクノロジー |
素材 | PP、PP11、PP12、PA12GB、TPUおよび今後リリースされる新たな造形材料 | 造形サイズ | 380 x 284 x 300 mm3 |
本体サイズ/重量 | 2,210 x 1,268 x 1,804 mm3/880 kg | 用途 | 試作品、治具、最終部品など |
Stratasys「F900」 7,000万円〜
導入実績あり!900mm以上の造形ができるFDM方式3Dプリンター
出典:Stratasys公式
stratasys社は3Dプリンター世界シェア1位と言われるアメリカの会社です。さまざまな業界での導入実績があります。
stratasys「F900」はFDM方式の3Dプリンターで、1辺900 mm以上の大型造形が可能です。さらにスーパーエンプラを含む10種類以上の素材を使った加工ができます。
使える材料がABS-M30とASAでも構わない場合、「F770」も併せてご検討ください。F900は7,000万円以上と高額ですが、F770なら1,000万円以下で購入できます。
F770の最大造形サイズは1,000×610×610 mm3で、高さ以外はF900よりも大きい造形物を作れるようです。
▼F900のスペック情報
価格帯 | 7,000万円~ | 造形方式 | FDM |
素材 | ABS-M30・PC・PC-ABS・PPSF・ナイロン12など16種の樹脂 | 造形サイズ | 914.4 x 609.6 x 914.4 mm3 |
本体サイズ/重量 | 2,772 x 1,683 x 2,027 mm3/2,869 kg | 用途 | 900 mm以上のサイズの造形。試作品、治具、最終部品など |
▼F770のスペック情報
価格帯 | 1,000万円以下 | 造形方式 | FDM |
素材 | ABS-M30(BLACK)・ASA(Ivory) | 造形サイズ | 1,000 x 610 x 610 mm3 |
本体サイズ/重量 | 1,750 x 1,240 x 1,960 mm3/658 kg | 用途 | 試作品、治具、最終部品など |
EOS「M290」 7,000万円前後
金属3DプリンターといえばEOS!大型造形可能!
出典:EOS公式
金属部品を3Dプリンターで作製したいならEOS「M290」がおすすめです。ドイツのEOS社は金属を加工可能な3Dプリンター技術で高く評価を得ています。
M290なら250 x 250 x 325 mm3のサイズで、軽合金、鋼鉄類から超合金、複合材まで多彩な金属材料を加工可能です。金属の3Dプリンティング技術にはいくつかの手法がありますが、M290は粉末積層造形方式を採用しています。
▼M290のスペック情報
価格帯 | 7,000万円前後 | 造形方式 | 粉末積層造形方式 |
素材 | 金属 | 造形サイズ | 250 x 250 x 325 mm3 |
本体サイズ/重量 | 2,500 x 1,300 x 2,190 mm3/1,250 kg | 用途 | 金属部品、治具の製造 |
まとめ
自動車業界では、デザインから最終部品の製造まで幅広く既に3Dプリント技術が導入されています。納期やコストの削減、車体や治具の軽量化、革新的なデザインの実現など、多くの導入効果が期待されます。
- 部品製造に活用し、開発期間を9週間短縮し、コストも6割削減(GM)
- 治具を3Dプリント技術で内製化し、生産コスト9割削減、ツール開発時間95%カット(VW)
- 生産終了パーツの復刻(トヨタ)
- エクステリアに全面的に利用し、軽量化と低コスト化に成功(XEV)
- INTAMSYS「FUNMAT HT」
- Stratasys「J850」
- HP「Jet Fusion 5200」
- Stratasys「F900」
- EOS「M290」