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3Dプリンターでコスト削減できる?ランニングコストをチェック
3Dプリンター導入による費用対効果をはじき出すには、「3Dプリンター導入によるコストの確認」と「3Dプリンター導入によるビジネスの拡大」をシビアに算出する必要があります。このうち、3Dプリンター導入によるコストについては、導入時のコストに加え、運用していくうえでのランニングコストも重要です。
実際、3Dプリンター導入によるコスト削減は可能です。3Dプリンターの導入によって、80%以上のコスト削減を実現できている事例もあります。ただし、3Dプリンター導入によって、かえってコストが増大したという事例もないわけではありません。
そこで今回は、「3Dプリンター導入によるコスト削減」について詳しく解説します。あわせて、造形方式別に3Dプリンターのランニングコストも確認しましょう。
3Dプリンター導入でコスト削減はできる!
3Dプリンター導入によるコスト削減は、可能です。3Dプリンター導入によるコスト削減ポイントと、事例を確認しましょう。また、3Dプリンター導入でコスト削減できない事例についても解説します。
3Dプリンター導入でコスト削減できるポイント
3Dプリンター導入でコスト削減できるポイントは、大きく2つです。
- ランニングコスト減によるコスト削減
- 製造時間短縮によるコスト削減
3Dプリンターを使うことで、そもそもの製造工程が大きく削減されることから、ランニングコスト削減と製作時間削減を叶えることが可能です。
例えば、従来なら金型を作って製造していた部品の場合、3Dプリンター導入によって金型は不要になります。また、試作品製作の場合は、素材の選び方によってはかなりのコストダウンにつながります。
3Dプリンターを導入することで、従来なら複雑な製作工程を必要としていた部品も、ワンストップで製作できるようになります。製造工程の簡略化によるコスト削減・時間削減のメリットは、偉大です。
3Dプリンター導入によるコスト削減事例
それでは、実際に3Dプリンターでどのくらいのコスト削減が可能なのか、企業の実例をもとにご紹介します。
自動車用シートの事例:69%にコスト削減&制作時間4週間短縮
TS techではstratasys社の3Dプリンターを導入した結果、軽量化・コスト削減・時間短縮に成功しました。(事例の詳細はこちら)
以前は6週間かかっていたアルミニウム製の取付具制作を、3Dプリンターの導入により、わずか2週間に短縮。実際の取付具が完成するまでの間だけ使用していた、部品チェック用のプラスチック製プロトタイプが不要になり、さらなるコスト削減に成功しました。
従来の工法に比べ制作時間を4週間分短縮し、取付具の制作コストを69%に削減しただけでなく、プラスチック製プロトタイプを制作しないために直接的なコスト削減にも繋がりました。
積層造形のフル生産サービス事例:コスト56%削減&生産時間84%削減
積層造形のフル生産サービスを行うRapid Application Group 社では、3Dsystemsの3Dプリンターの導入によって顧客の目標達成を支援しています。(事例の詳細はこちら)
溶接用固定具のトポロジー最適化によって、部品機能を損なうことなく材料の使用量を削減できました。
材料使用量の削減により固定具の生産コストやプリント時間は削減され、顧客は 1 つの戦略でコストと時間の両方の主要目標を達成できました。
また、3D プリントで作られた軽量の溶接用固定具は扱いやすく、さらなる機能改善をもたらしました。
Rapid Application Group 社では3Dプリンターを導入することで、最終的な溶接用固定具の生産時間を 84%、固定具コストを 56% 削減することに成功したのです。
3Dプリンター導入でコスト削減できない場合もある?
多くの企業では、3Dプリンター導入によって見事にコストを削減し、利益率のアップにつなげています。しかし、中には、「3Dプリンター導入によって、かえってランニングコストが高くなってしまった…」という事例もあります。
- 材料価格が高い場合
- 設計費がかさんでしまう場合
- 大量生産向けの3Dプリンターで小ロット製作する場合
上記のような理由でコスト削減できない場合、3Dプリンターの導入をあきらめるのではなく、コスト削減可能な3Dプリンターを探しましょう。
3Dプリンターには、多くの種類があります。自社の目的に合う3Dプリンターなら、コスト削減が可能かもしれません。
また、自社に最適だと提案された3Dプリンターでもコスト削減できない場合は、3Dプリンターを導入することによって得られる効果についても考えましょう。
実際、3Dプリンター導入によってコスト増になった場合でも、結果として生産性の向上により受注率があがり、利益が大幅に増えたという事例もあります。
3Dプリンターのランニングコスト
それでは次に、3Dプリンターのランニングコストを確認します。
業務用3Dプリンターのランニングコストは数万〜数百万
3Dプリンターのランニングコストは、年間、数万円~数百万円です。
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なお、全ての3Dプリンターに共通してかかってくるランニングコストは、電気代と年間保守料です。
導入を検討している3Dプリンターがあるなら、具体的な製作物を示し、どのくらいのランニングコストになるのか、メーカーや代理店に確認しましょう。
3Dプリンターのランニングコストは導入コストに比例
使用する材料のコストは基本的に3Dプリンターの本体価格に比例します。なぜなら高価格帯の3Dプリンターでは、安定性と強度、精度が最適になるようにメーカーごとに材料設計をしているからです。
サードパーティ製の材料を使えば材料費はかなり抑えられますが、対応していない3Dプリンターの方が多いのが事実。故障のリスクがあるので、対応していない材料を使うことはあまりおすすめできません。
オペレーター 杏奈
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【造形方式別】3Dプリンターのランニングコストを比較
3Dプリンターのランニングコストの内訳を、造形方式別にご紹介します。
FDM方式
出典:ストラタシス公式
まずは家庭用3Dプリンターでも採用されるほどメジャーな造形方式「FDM方式」のランニングコストをご紹介します。FDM方式の3Dプリンターではフィラメント状の樹脂を熱で温めながら吐出して造形します。
- 材料
- ノズル
- プラットフォーム
- 後処理用溶剤など
- 年間保守料
このうち高価になりうるのは、材料と年間保守料です。ただ、PLAやABSなど安価なフィラメント材料をメインで使う場合は、年間数万円程度で済むかもしれません。
ランニングコスト内訳 | 材料 | ノズル | プラットフォーム | 溶剤(後処理用) | 年間保守料 |
費用目安 | 約2,000円〜100,000円(1kgあたり) | 約10,000〜40,000円 | 数千円程度 | 〜100,000円(1kgあたり) | 〜600万円程度 |
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光造形方式
出典:3D SYSTEMS
光造形方式は最も古くからある造形方式で、家庭用から産業用まで広い用途で販売されています。光造形方式の3Dプリンターでは、光硬化性樹脂を満たした容器を用意し、任意の場所に紫外線を当てながらプラットフォームを動かすことで造形します。
- 材料
- ビルドプラットフォーム
- レジンタンク
- 洗浄液(後処理用溶剤)
- 空調設備
- 年間保守料
このうち機種ごとに価格に大きく差が出るのは材料費です。FDM方式と同じく、本体価格と材料費は比例します。高価な光造形方式プリンターの場合、1リットルあたり数万円かかることがほとんどです。
ランニングコスト内訳 | 材料 | ビルドプラットフォーム | レジンタンク | 洗浄液 | 空調設備 | 年間保守料 |
費用目安 | 約2,000〜40,000円(1Lあたり) | 約10,000〜20,000円 | 約10,000〜20,000円 | 5,000〜8,000円(14Lあたり) | 〜100,000円(月額) | 〜数百万円 |
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インクジェット方式
出典:ストラタシス公式
インクジェット方式は、紙に印刷するインクジェットプリンターと同じ仕組みを採用しています。3Dプリンティングではインクジェットヘッドからインクではなく光硬化性樹脂を吐出することで造形します。
- 材料
- サポート専用材料
- 後処理用溶剤
- 空調設備費用
- 年間保守料
高価格帯のインクジェット方式3Dプリンターでは多種多様な材料を使えます。その分材料費は上がり、1kgあたり50,000円を超えることも珍しくありません。
ランニングコスト内訳 | 材料 | サポート専用材料 | 溶剤(後処理用) | 空調設備 | 年間保守料 |
費用目安 | 約30,000〜100,000円(1kgあたり) | 約40,000円(1kgあたり) | 5,000〜8,000円(14Lあたり) | 〜100,000円(月額) | 〜500万円程度 |
金属造形方式
出典:3D SYSTEMS
金属を3Dプリンターで造形するにはいくつかの方法があります。主に使われているのはパウダーベッド方式、指向性エネルギー堆積法、アーク溶接方式です。
すべての金属造形に共通して必要となるランニングコストをご紹介します。
- 材料
- レーザー交換費用(数年に一度)
- 空調設備費用
- 不活性ガス費用(造形方式によっては不要)
- 年間保守料
金属の造形をする上で無視できないのが電気代です。金属材料にとって最適な環境を用意するなら恒温室を作るのがベストですが、かなりの空調代がかかってしまうのでご注意ください。部屋の大きさによっては、3Dプリンターの稼働に必要な電気代を空調代が上回ってしまうかもしれません。
ランニングコスト内訳 | 材料 | レーザー交換 | 空調設備 | 不活性ガス | 年間保守料 |
費用目安 | 〜数百万(月) | 1,000万円(3〜4年に一度) | 〜100,000円(月額) | 〜150,000円(月額) | 〜500万円 |
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まとめ
- 3Dプリンターの導入によりコスト削減に成功した事業者は多い
- 設計や試作開発の段階で、3Dプリンターがあれば数週間単位で時短できる
- 3Dプリンターのランニングコストは高く、年間数万〜数百万円かかる
- 3Dプリンターのランニングコストは本体代に比例する