新人Gメン及川
ベテランGメン園川
オペレーター 杏奈
【3Dプリンター×学校】教育業界での活用事例
文部科学省が2019年に公表した中学校教材整備指針の改訂案に「3Dプリンタ」が追加され、教育業界でも3Dプリンターへ注目が集まるようになりました。
3Dプリンター本体と消耗品の開発・販売を手掛けるSK本舗のアンケート調査によると、「3Dプリンターを使ってみたいと学生・生徒・児童からの声がある」と回答した学校数は65%。生徒も3Dプリンターに高い関心を寄せていることが分かります。
「STE(A)M教育」が注目されていることも、学校への3Dプリンター導入が進んでいる理由の1つでしょう。STE(A)M教育が進む海外はもちろん、日本国内の論文でも、3DプリンターとSTE(A)M教育の関係性に言及しています。
(米国では)先進的な学校の中には STEM ラボを設置し,ロボットや3Dプリンター,工作用の器材などの様々な STEM教育に必要な環境を整えている学校もある
新井(2020)
3D プリンタやレーザーカッターといったデジタル工作機器は従来の道具に比べて,不得手な学習者とっても『アイデアを形にすること』が容易であり(中略)デジタル工作機器を用いたSTE(A)M 実践が学校現場に普及することを期待したい
森田・舟生(2020)
生徒にものづくりの楽しさを教える
東京都港区の広尾学園中学校・高等学校では、7台の3Dプリンターを設置しています。「3Dプリンターがあれば、生徒がいろいろ自主的にやっていくのではないか」と考え、導入を決定しました。
広尾学園中学校・高等学校では、3Dプリンターを完全に生徒たちだけで活用しています。20名程度の学生が3Dプリンターを利用していますが、使い方を教えるのは先生ではなく、ICTルームを運営している生徒達です。
独学で3Dモデリングソフトの使い方を習得し、3Dプリンターで模型を出力して楽しんでいる生徒もいます。生徒が「3Dプリンターを好きに使える」ことで、想像したものを造形できるものづくりの楽しさに触れつつ、自主性を育てることに成功しています。
手で触れる3Dモデルを教材にして、直感的な理解をサポート
出典:「化学・生命科学系の理学教育における3Dプリンタの活用事例」望月et al., J. Comput. Chem. Jpn., 15, 3, 66-67 (2016)
立教大学理学部では2015年度から2年間「3Dプリンタの理学教育での活用」プロジェクトを運営し、理学教育での3Dプリンター活用に成功しました。
大学の化学では、化学反応の過程を教えなくてはなりません。化学反応は化学物質の立体構造が関わっていることが多いため、説明時、生徒の手元に立体モデルがあるかないかでは理解のしやすさに差が出てしまいます。
3Dプリンターで分子模型を作製することで、これまでの板書やCGモデルでの説明よりも、訴求度の高い授業ができるようになったそうです。他にもDNAの二重らせん構造を3Dプリンターで出力することで、タンパク質の配置について直感的に理解できるようになったそうです。
目で見えないモノを扱うことが多い理科分野において、3Dプリンターで出力したモデルがあれば、生徒は現象を直感的に理解できるようになるのです。
海外での取り組み
海外の教育現場における3Dプリンターの活用事例も2つご紹介します。
イギリスでは2012年から教育現場へ3Dプリンターを普及させる政策をスタートさせています。投入される公的資金は50万ポンド(日本円で8千万円ほど)。5歳から教育プログラムがスタートし、3Dモデリングから造形技術までの流れを学べるようになっているそうです。
世界一のIT先進国とも謳われるフィンランドでも3Dプリンターの普及が進んでいます。導入の目的は、実用的なモノをデザインして作る教科横断プロジェクト学習「ハンディクラフト」での利用です。
首都ヘルシンキの全学校で、3万ユーロ(日本円で400万円ほど)を投入し、レーザーカッターと3Dプリンターの導入が進められました。
教育業界向けおすすめ3Dプリンターの選び方
学校で3Dプリンターを導入するとき、不安になるのは以下の点ではないでしょうか。
- ランニングコストが不安
- 3Dデータを扱えない
- 教師が3Dプリンターの使用経験がない
そこで、我々Gメンが教育業界で使用するのにおすすめする3Dプリンターの特徴は以下の通りです。
- 本体価格が安い
- 自動機能が充実している
- 日本語マニュアルがある
それぞれの理由についてご説明します。
本体価格が安い3Dプリンターがおすすめ
3Dプリンターは、造形方式や造形可能材料、造形可能サイズに応じて数万円〜数千万円の価格幅があります。数百万円を超える産業用モデルなら、大型造形、金属の加工、精密な加工ができます。
学校に導入する3Dプリンターでは、こういった高機能はほとんど必要ないので、数万円〜10万円の家庭用3Dプリンターで十分役割を果たせるでしょう。極端なことを言うと、高級な3Dプリンターを1台購入するよりも、同じ予算で複数台の3Dプリンターを購入し、複数の生徒が同時に使えるようにするのがおすすめです。
10万円前後の3Dプリンターをおすすめするのにはもう1つ理由があります。それは、3Dプリンターのランニングコストは本体価格に比例するためです。高級機種で使用が推奨されている純正材料はどれも高いので、生徒が自由に使うには向きません。
オペレーター 杏奈
自動機能が充実している
3Dプリンターでの造形時、土台(プラットフォーム)を平行にしたり、材料を温めたりする必要があります。この準備が足りないと、造形に失敗し、最初からやり直す必要が出てきてしまいます。こういった失敗が多く起きてしまうと時間と材料が無駄になるので、限られた時間と予算での運用が想定される教育現場での利用には難しくなってしまいます。
プラットフォームの平行出しや、材料の温度調整を自動で行える機種を選べば、失敗を事前に防げるので安心です。また複数人が不定期のタイミングで利用するなら、材料の自動補充機能が付いている方が便利でしょう。
さらに事故を未然に防ぐための自動停止機能も付いていれば、より安全に使えます。
日本語への対応は必須!サポート体制もチェック
安価な3Dプリンターはアメリカや中国で作られていることが多いです。日本語のマニュアルがあるか、操作用パネルの表示で日本語表示を選べる機種を選ぶのが無難でしょう。
不明点の相談が可能か、保証期間はどのくらいか、修理をしてくれるかなど、メーカーのサポート体制もチェックしておくのがおすすめです。
新人Gメン及川
教育業界向けおすすめ3Dプリンター3選
学校に導入する上で、おすすめの3Dプリンターを3つご紹介します。
Gメンは現在、XYZ printingに変わる、教育現場でも使いやすく安価な3Dプリンターを調査中です。
XYZ printing「ダヴィンチ Jr Pro X+」¥84,541
価格.comで1位獲得!コスパ最強3Dプリンター
第一にご紹介するのはダヴィンチの「Jr Pro X+」です。基本的な機能は全て兼ね備えているだけでなく「脱着可能なプラットフォーム」「安全センサー」「詰まり検知システム」が搭載されているので、慣れない生徒が扱うときも安心です。
本体台は少し高いですが、長い目で見るとお得になっています。サードパーティ製材料を使用できるので、ランニングコストが抑えられます。さらに材料の自動供給機能や自動キャリブレーション機能があるので、造形失敗による材料のムダ使いも防げます。
家庭用3Dプリンターとしても評価が高く、価格.comでは1位を獲得しています。オプションパーツによる機能拡張も充実しているので、後から他の機種を買い直す必要のない、最強の1台です。
▼ダヴィンチ Jr. Pro X+のスペック情報
価格(税込) | ¥84,541(※2022/7/29 価格.com最安値) | 造形方式 | FDM方式 |
造形サイズ | 175 x 175 x 175 [mm3] | 材料 | ABS PLA タフPLA PETG Wood PLA 抗菌性PLA |
本体サイズ | 420 x 430 x 380 [mm3] | 重量 | 13 kg |
機能 | サードパーティー材料対応 プラットフォーム脱着 プリントプラットフォーム自動校正 材料自動供給機能 Wifi接続 |
日本語対応 | ◯ |
XYZ printing「ダヴィンチ mini w+」¥37,946
Jr Pro X+は高すぎる・・・という方におすすめなエントリーモデル!
ダヴィンチ mini w+は3Dプリンター入門機として人気のモデルです。先ほどご紹介したダヴィンチ Jr Pro X+は機能性・安全性ともに最高レベルですが、10万円弱と価格が高すぎるのがネックでした。ダヴィンチ mini w+はダヴィンチ Jr Pro X+の半額以下の値段にも関わらず、高い性能を持った1台です。
リーズナブルな価格にも関わらず、自動キャリブレーション機能や材料自動供給機能を搭載しているので、初心者でも簡単に扱えます。Wi-Fiで接続可能なのも便利ですね。
板橋区中台中学校での導入実績もあります。気になる方はXYZ printingの公式HPから実際の使用例を見てみてはいかがでしょうか。
▼ダヴィンチ mini w+のスペック情報
価格(税込) | ¥37,946(※2022/7/29 価格.com最安値) | 造形方式 | FDM方式 |
造形サイズ | 150 x 150 x 150 [mm3] | 材料 | PLA PETG タフPLA |
本体サイズ | 390 x 335 x 360 [mm3] | 重量 | 7 kg |
機能 | プリントプラットフォーム自動校正 材料自動供給機能 Wifi接続 |
日本語対応 | ◯ |
ELEGOO 「Mars 2 Pro」¥34,999
細かい造形が得意な光造形方式を採用!精巧な造形物を作るならこれ!
家庭用3Dプリンターでは、造形方式としてFDM方式または光造形方式が採用されていることが多いです。FDM方式は熱で溶かしたフィラメントを積み上げることによって造形していますが、光造形方式では光硬化性の液体樹脂に光を当てることで造形していく仕組みです。
FDM方式は造形の細かさがフィラメントの太さに依存してしまうので、精巧なフィギュアなどの精度の高い造形をしたいなら光造形方式を選ぶのがおすすめです。
ELEGOO Mars 2 Proは光造形方式の中でも格安の入門機として知られています。造形時の音が抑えられているので、休み時間に準備して授業中に造形させるという使い方もできそうです。
光造形方式では、後処理でエタノールやIPAなどのアルコールを使用したり、材料のレジンが消防法の危険物に指定されていたりと、火事や事故のリスクがあります。生徒だけで使わせるには少し危ないので、理科教諭が監督するようにした方が良いでしょう。
▼Mars 2 proのスペック情報
価格(税込) | ¥34,999(※2022/7/29 Amazon.com最安値) | 造形方式 | 光造形方式 |
造形サイズ | 129 x 80 x 160 [mm3] | 材料 | UV硬化レジン(405nm) |
本体サイズ | 200 x 200 x 410 [mm3] | 重量 | 6.2 kg |
機能 | モノクロLCD 脱臭用活性炭ボックス |
日本語対応 | ◯ |
まとめ
3Dプリンターを教育業界に導入することで、生徒のものづくりへの関心を高めるだけでなく、従来の作り方では難しかった三次元の教材作りにも役立ちます。
- 生徒にものづくりの楽しさを伝える
- 教材として生徒の直感的な理解をサポート
XYZ printing「ダヴィンチJr Pro X+」XYZ printing「ダヴィンチmini w+」- ELEGOO「Mars 2 pro」