プリンターに「ソニータイマー」はある?関係者の8割が「無いと思う」と回答

プリンターに「ソニータイマー」はある?関係者の8割が「無いと思う」と回答

「意図的な寿命の短期化」の疑いでフランス検察が捜査

2017年12月フランス検察は、セイコーエプソンがプリンター本体の買い替えを促すために「意図的に寿命を短くしている可能性がある」として捜査を開始したことが報道されました。ロイター:エプソン、仏検察が予備調査 「製品寿命の意図的短縮化」疑い

フランスでは2015年に「計画的な老朽化」を取り締まる法律が成立しており、これに違反した企業は責任者に対する最大2年の禁錮や罰金が科せられます。

ジャーナリストの清水潔氏もこの件にTwitterで触れており、非常に多くの反応がありました。

オペレーター 杏奈

わざと機械を壊れやすくするなんて、毎日出社してどこに労力割いてんのよ!
いいえ、疑いがあるというだけで何も証拠は出ていませんよ!

新人Gメン及川

詳細は後半でご紹介しますが、むしろ「寿命を短期化するメリットが無い」という意見が多いくらいです。

ベテランGメン園川

 

報道ではエプソンが大きく取り上げられていますが、ブラザー、キヤノン、HPに対しても消費者団体から申し立てがあった模様で、同様にフランス検察による捜査が行われている可能性があります。

 

捜査結果はどうなった?

上記の報道から2年以上が経過し、捜査が完了している可能性もあると考えて情報収集を行いましたが、現時点で検察の捜査に関する続報は一切出ていませんでした。

そこで、エプソンの広報に情報提供を求めたところ、下記のような返信がありました。

 

まず、当社はリリースのとおり、プリンターの「計画的老朽化」を行っているという指摘について全面的に否定します。ただし、検察の状況は当社からはコメントいたしかねますのでご理解ください。(セイコーエプソン株式会社 エプソンWebMaster )

 

現在も捜査中の可能性が高い

オペレーター 杏奈

結局エプソンはクロですか?シロですか?
あくまで推測ですが、現在も捜査中でシロクロはっきりしていない状態だと思います。

ベテランGメン園川

もし違法であることが検察によって明らかになればメディアからその報道があるでしょうし、逆に無罪であることが証明されれば、エプソン側が報道しない理由が無いため、現在も捜査が続いている可能性が高いと思われます。

 

エプソン側が有罪になる可能性は低い

2017年でこの報道がされた時点で多くの有識者が述べていたことですが、裁判で違反行為を立証するのは難しいと見られています。

理由として、メーカーが意図的な寿命の短期化を行っていたとしても、その証拠を客観的にわかる形で残す可能性は低いからです。

 

 

【アンケート】ソニータイマーは設置されていると思いますか?

プリンターのソニータイマー疑惑

 

プリンターの製造・販売・メンテナンスなどに関わっていた方25人に、プリンターメーカーが意図的な製品寿命の短期化を行っていると思うか?をアンケートに取りました。

アンケートの結果はあくまで「プリンター関係者の印象論」です。証拠を持っている回答者は誰もいないようでしたので、ご了承ください。

ベテランGメン園川

オペレーター 杏奈

間接的な関係者の居酒屋トークだと思って見てみます!

 

 

「ソニータイマー無し」の回答が多い

結果は、全体の80%が「寿命が短期化されていると思わない」という回答でした。

回答 数値
寿命が短期化されていると思う 16%(4人)
寿命が短期化されていると思わない 80%(20人)
わからない 4%(1人)

 

続いて、具体的なアンケート結果をご紹介します。

 

 

寿命が短期化されていると思わない

意図的に寿命が短期化されていると思わない【元プリンターの組み立て担当】

故障、不具合などトラブルがあった際は社内での会議、現場での対策、取引先への謝罪や無償での修理対応等の大問題になっていた。わざわざ、寿命を減らす仕掛けを作ったり細工をするのは会社としてはデメリットしかないのでやらない。

 

意図的に寿命が短期化されていると思わない【現役で製品のテスト及び品質管理】

製品の品質チェック項目には耐久性のテストも含まれています。おそらくどこのメーカーでも同様と思いますが、自社基準に満たない製品を市場に投入することはありません。時には製造現場から基準が厳しすぎるとの意見が出されることもありますが、決められた社内基準は厳格に守られています。そもそも技術者には高いプライドがあり、みな懸命に製品の品質を上げようと努力しています。寿命を短くするようなコントロールはそのプライドが許さないと思います。

新人Gメン及川

現役でメーカーに勤める人間が「クロ」なんて言うはず無いよな。
現役の回答者は少数でしたが、それでも回答に偏りが出る可能性は否定できませんね。

ベテランGメン園川

 

意図的に寿命が短期化されていると思わない【元家電量販店でプリンター販売】

少なくとも2010 年代以降のモデルであれば、セール時に 3000 円程度まで価格が落ちるような安い製品でも 5-10 年ほどの長期的な耐久性を誇るプリンタが多く、特に稼働時間でコントロールされているようには感じられなかったため。

 

意図的に寿命が短期化されていると思わない【元家電量販店でプリンター販売】

キャノン、エプソンは本体で利益を取ろうという気は全然なくて(粗利1~4%)、インクで利益を取ります。なので、プリンター本体自体の寿命を短くする利点がメーカー視点余り無いのです。

 

意図的に寿命が短期化されていると思わない【現役でプリンターの内部部品の製造】

意図して短くなるようにコントロールしているわけではなく、内部部品の動作回数や機械強度の関係で寿命が短くなってしまっているものと考えています。近年の製品ではより小型が求められるようになり、個々の部品も必然的に小型を求められる為、強度的には弱くなってしまうのが現状です。
各種メーカーでは当然強度アップを検討しますが、小型対強度のバランスが難しいことが製品寿命に影響を与えてしまっています。

オペレーター 杏奈

ソニータイマーでは無いけれど、内部部品のコストカットの影響で壊れやすくなっているという意見は多く見られました。

 

意図的に寿命が短期化されていると思わない【元プリンターメーカーで修理担当】

強いて言えば、インクの廃タンク関係をタイマーと考えることも出来るとは言えると思います。プリンターは本体より、インク類の販売でマージンをとっている面が大きいので、敢えてタイマーを組み込む必要性は無いかと思います。

 

廃インクタンクとは、印刷やヘッドクリーニングで出たインクのゴミを溜める部品です。

廃インクタンクエラーが出た場合はメーカーでのタンク交換が必要です。例えばエプソンのカラリオであれば11,000円~19,000円の費用がかかります。

ベテランGメン園川

オペレーター 杏奈

高っ!機種に依っては新品プリンターが一台買えますね・・・。
自力でエラー解除する方法もあるようですが、手間がかかるのであまりおすすめはできません。

ベテランGメン園川

 

また、現在ではEP-882のようにユーザ自身で廃インクタンクを交換できる機種も出てきています。

 

 

寿命が短期化されていると思う

意図的に寿命が短期化されていると思う【元家電量販店でプリンター販売】

正確には「インク処理がある為にコントロールせざる得ない」が正解と思います。プリンター以外でも「カメラのショット数」とかパソコンの「ハードディスクの稼働時間」等のカウントしてるモノなら何でも「ソニータイマー発動」はあると思います。
でなきゃ「カウントする工程」を外せばコストダウンになりますよね?でもその工程がある事で一定の動作保証をしているとも捉えられます。今の家電製品でも一定期間「しか」動作保証しませんし。悲しい結論ですが昔みたいに「壊れるまで使う」は今では通用しません。

 

意図的に寿命が短期化されていると思う【元家電量販店営業】

プリンターというとプリントヘッドのノズル部分が一番消耗する訳ですが、基盤も良く壊れたりする。電気的や化学的な保護が足りず、ソニータイマーという状態になってしまっていると思われます。ただ、これを意図的と言えるかは微妙だと思いますが。

 

意図的に寿命が短期化されていると思う【元家電量販店でプリンター販売】

性能面が非常に優れた故障もしないような製品では、お客さんがいつまでも同じ製品を使い続けるので、ある程度使用したところで寿命を迎えるように作られていると思います。

 

 

「短期化することで得をしない」逆を言えば?

プリンターの関係者が見ている限りでは、寿命の意図的な短期化を行っていない可能性が高いと言えそうです。

 

オペレーター 杏奈

寿命を短期化していないという回答の根拠として、多くの人が「ソニータイマーを付けるメリットがない」と回答していましたね。
逆に言えば、「メーカー側にメリットさえあれば、ソニータイマーを付けるのは当然」という前提が共有されているということですね。これは少々驚きました。

ベテランGメン園川

オペレーター 杏奈

まぁ、自分が儲けたいと思うのはみんな一緒ですもんね。

 

プリンター本体を安く販売し、消耗品であるインクを高額で販売することで利益を出すビジネスモデルは「インク商法」として知られています。

プリンターメーカーのインク商法

 

これに従えばプリンターメーカーが寿命を短期化するメリットはありません。

しかし現在、新興国を中心に世界的に純正インクの使用率は下がっており(日系企業の新興国市場における事業革新/名古屋市立大学 松井義司)、2010年以降、純正インクの利用を前提としない大型タンクのプリンターを各メーカーが続々と発売しています。>>エプソンの大型プリンター「エコタンク」の評判

純正インクの利用率が下がり、純正インク利用を前提としないビジネスをプリンターメーカーが構築するとすれば「ソニータイマー設置のメリット無し」という前提が崩れてしまいます。メーカーが「ソニータイマーを設置するメリットがある時代」に入った今後、プリンターメーカーがどのような本体製品を提供するかに注目です。

 

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