「コピー機ビジネスは儲かる」は今や昔
コピー(複写機)の国内市場は飽和し、過当競争で縮小傾向の厳しい状況にあります。複写機事業を主軸とする企業はいち早く複写機ビジネスから脱却し次の稼げる事業を育てなければ将来消えゆく企業となるかもしれません。
要因としては”ペーパーレス化”や”競合との競争によるカウンター単価の下落”(コピー機のカウンター料金は今、こんなに安い)が挙げられます。また、今後AIやIOTが発展していくと予想される中で”紙を刷る”という行為自体が時代遅れになる時が近い将来やってくるからです。
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今の状況はかつて写真フィルム事業で好業績を誇っていたコダック、富士フィルム、コニカの構図に似ています。かつて3社は市場を寡占していて高収益をあげていました。当時まさかこの超優良企業が倒産するとはありえないと思われていました。
ですが2012年にコダックが日本の会社更生法に当たる法律の適用され上場廃止になりました。富士フィルムは医療や電子材料・複写機事業へ多角化、コニカはミノルタとの合併で複写機事業へ主力事業のスライドで乗り切ってきました。写真フィルム業界で起きた業界転覆が次は複写機業界で起きようとしています。
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複写機事業の売上比率を比較して各社の状況を調べてみた
現在の各メーカーの売上に占める複写機事業の割合が高い順に並べてみました。
(金額単位:百万円)
順位 | 企業 | 会計年度 | 売上高 | 複写機売上高 | 複写機事業割合 |
1位 | リコー | 17年度 | 2,028,800 | 1,793,000 | 88.4% |
2位 | コニカミノルタ | 17年度 | 953,679 | 762,190 | 79.9% |
3位 | 富士フィルム | 16年度 | 2,322,163 | 1,080,900 | 46.5% |
4位 | キャノン | 17年度 | 4,080,015 | 1,965,928 | 45.7% |
5位 | 京セラ | 17年度 | 1,577,039 | 371,058 | 23.5% |
6位 | シャープ | 17年度 | 2,427,271 | 322,591 | 13.3% |
- リコーが約9割、コニカミノルタが約8割の高い複写機ビジネスの構成比率
- 富士フィルムとキャノンは約半分の構成比率
- 京セラ、シャープは3割未満の低い構成比率
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リコーは複写機メーカーの中で今一番危うい
複写機事業の売上構成比が高いリコーとコニカミノルタは複写機以外の事業を早々に育てないと将来のコダックになる確率が高いと言えます。コニカミノルタは創薬支援などで海外企業を買収したりと医療事業へシフトチェンジしようと見えますが、リコーは先行きが不透明です。拠点統合やリストラ、保有株式売却や事業売却など新たなビジネスを作るというよりも身を削っているだけでその場しのぎ付け焼刃のように見受けられます。
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富士フィルムは米ゼロックスの合併問題で暗雲立ち込める
また旬な話題で富士ゼロックスを有する富士フィルムが米ゼロックス合併騒動で暗雲が立ち込めています。米ゼロックスと富士フィルムが合併すると売上規模3.3兆円に達しシェア・規模ともに最大手になります。事業多角化で複写機の依存度が低かった富士フィルムですが、今回の合併が現実となれば複写機の比率が2/3を越えると試算され複写機ビジネスの比重が大幅に増えます。私の個人的な見立てでは、合併は凶となる可能性が高いと思います。
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一番安定し将来性を感じるのがキャノン?
既存の複写機ビジネスの割合が50%未満と低く安定しています。またキャノンは4つの新規事業「商業印刷」「ネットワークカメラ」「産業機器」「メディカル」を明確に掲げ脱複写機へスライドして実績を出しています。今のところ大手複写機メーカーの中で生き残る可能性が高いのはキャノンと言えるでしょう。
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とはいえ、複写機ビジネスはまだ膨大な利益を生む「キャッシュカウ」と呼ばれる商売です。固定費・経費削減で何とか持たせている間にいち早く次の稼げる事業を立ち上げ育てるられるかが生き残りのカギを握ります。これから数年の方針を誤ると現在、超優良企業の複写機会社がいずれ経営破綻など現実的に起こりうるかもしれません。