事務機屋の経営って結構やばい?社員さんからのお手紙

事務機屋の経営って結構やばい?社員さんからのお手紙

複合機メーカーから転職すべきでしょうか

大手事務機器メーカー(リコー、キヤノン、富士フイルムビジネスイノベーション等)系の販売会社にお勤めの方からお便りをいただきました。

仮にお名前を高橋さんとします。

 

はじめまして。私は複写機メーカー系の販売会社に勤める高橋と申します。私はストレートで大学を卒業し、7年前に同社に入り、営業職として在籍中の男です。

静岡で生まれた私は、公立の新学校から都内の大学に順調に進み、上記の複写機メーカー系販売会社に就職できました。リーマンショックの影響で採用が減っていた時だったので、CMもやっている有名企業の子会社に就職できたことで両親は喜んでくれ、姉は旦那さんに「自慢の弟なんだ」と言ってくれていたそうです。

 

そこまでは順調に人生を進んできました。いえ、順調に進んでいるつもりでした。

 

就職した会社は同期が100人以上いましたが、皆サークルのように仲がよく、夢を語り合える友人も作ることができました

お客さんにゴミのように扱われたこともありますが、職場の先輩たちに支えられ、今では後輩や部下の面倒を見る立場になっています。

 

複合機メーカーやその販売会社に多いタイプの経歴ですね。大学は記載されていませんが、おそらく都内の有名私大ではないでしょうか。

Gメン

 

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お手紙は続きます。

 

 

外資系企業に転職した友人

最近、高校で同じ部活だった友人と地元の集まりで会いました。彼は関西の中途半端な大学を卒業し、その後日本中でほぼ問題になることがないような中小企業に入社しました。彼のことを、はっきり言って少し見下しているところがありました。

そんな彼が数年前から外資系の企業を転々としているという噂を聞いていました。再開した日、強引に2人になって話を聞くと、現在外資系の会社は2社目で、20代後半にして年収はなんと1,000万円を大きく越えている様子でした。

 

「収入は多く見えるけど、いつ首を切られるかわかんないからな。」

などと謙遜していましたが、どうやら外資に勤める営業マンというのは似たような外資系のIT企業への転職が容易で、転職を繰り返すと評価が下がっていく日本の会社とは違い、むしろ転職を繰り返して収入を上げていくケースが多く、それを「外資渡り」と呼んでいるのだそうです。

どうしてそんな高収入の会社に入れたのか、尋ねてみました。

「俺は大学もFランだし入った会社も中小だろ。普通に仕事してたらヤバイと思って、入社から3年くらいは毎日睡眠5時間で働いたんだよ。そしたら、運も良かったんだな。その会社で販売してた業務システムがちょっとマニアックでな。転職活動をしてみたら、その分野に詳しくてハードワーク出来る営業マンを探してるっていう外資の会社が声をかけてくれたんだ。

そんな怪しい会社やめとけって親からは反対されたけど、思い切って転職してみたら、確かにノルマ的なやつは厳しいけど、しょうもない会議や報告書も無いし、給料は良いし、結構良いぞってことになって。」

 

最初の転職から2年ほどして少し飽きが来たころに、先輩に誘われる形で次の外資系企業に転職したのだそうです。現在、彼は大手企業のマーケティング部が使う高度なシステムを販売する営業マンで、そのシステムの話は複雑すぎて私には一言半句たりとも理解ができませんでした。

彼は自分の営業スキルや製品知識に自信があるようでした。

 

「お前の会社のことを言うわけじゃないけど、日本の大手メーカー系の営業はやばいぞ。たまにパートナーとして商談に付き合うこともあるけど、彼らは決定的に営業力がなさすぎる。なんでかわかる?それは製品力とかブランド力が有りすぎるからだ。良い靴を履いてたら足の皮が厚くならないのと同じだな。

この前日本の大手メーカーの営業と同行したんだけどさ。大人数で来てるくせに誰一人としてお客さんの話を理解してなくて、とんちんかんなことばかり言ってたぞ。ほとんど40歳以上に見えたけど、あれで大丈夫なんかな。

日本の大手メーカーは個人のスキルを高めることよりも入社した人間を社内に囲ってガラパゴス化するのが好きだろ。その結果、社員が仕事で身につけるのは根本的なスキルとは関係ない、社内での変なルールとか、車はトヨタに乗れとかビールはキリンを飲めとか、そんなことばっかりだもんな。そんなん、社外に出たら何の意味もないのに。」

彼が言うところによると、同期の団結力を高めるのも、先輩後輩が仲が良いのも、ジョブローテーションをさせて特化した技術を育てさせないのも、すべて会社という共同体をから外に出られないように会社が仕組んだもので、個人として生き抜くために必要な能力とは何の関係も無いと言っていました。

また、それに長く浸かってしまうと、ますます転職市場での価値は下がっていくとも言っていました。

 

 

業界を悲観する先輩社員

これまで自分が慕ってきた先輩からも次のようなことを言われました。

 

「ペーパーレスだから複写機事業は縮小していく、って話があるだろ。あれは3割正解だが7割間違えてる。もっと大きな問題なのは過当競争になってるってことだ。

16ギガのUSBって、今は500円くらいで買えるよな。でもあれ、10年前なら5,000円以上はしたんだぜ。要は、誰にでも作れる商品は競争が激しくなるから値段を下げるしか無い。

複写機はメモリとは比べられないけど、独占的な一部の企業だけが作れる商品では無くなってしまった。だから印刷量が減って行く速度よりも、もっともっと高速でこの市場は小さくなっていく。商品が安くなれば利益は減るから間接コストを削る。つまり俺らみたいな営業マンは数を減らすしかないってことだ。

さらに残念なことに、俺らの会社は複写機以外の商品を開発するような力は無い。なぜなら新規事業を軌道に乗せることが出来るような人間は、もうとっくにこの会社から出ていってて、経営者は社内政治に長けた無能なおじさんばかりだ。

40過ぎてわかったんだけど、俺はもう何の力も残ってないよ。たまにあるだろ?今日は何にもする気が起きないな、っていう二日酔いの朝とか。あれと同じだよ。

最初はこの会社で上り詰めようと思ったこともあったし、途中で転職しようかと思ったこともあった。でも一度、この会社に入った時に跳び上がって喜んだ母親に転職の話をしたら泣いて止められたよ。あんなに頑張って、あんたを大学に行かせて今の会社に入れたのにって。

でも、親父や母親の話を信じたら駄目だな。役所と家の中にずっといるだけの両親が世の中で何が起きてるのか知るはずがないんだ。お前も、このまま今の会社で30歳になって、結婚したり子どもを生んで40歳になって、郊外に一軒家買ってローンでも組んでみろ。そうなったら本当に終わりだ。

俺は、騙されてたし力不足だった。でも、お前はまだ間に合うから、考えたほうが良いぞ。」

 

私の営業成績はトップセールスとは言わないまでも、安定して上の方にいます。しかし、世の中で通用するほどの実力を養えているかどうかは自信がありません。長くなってしまいすみません。僕は、この会社やこの業界から出た方が良いのでしょうか?

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転職市場での価値を調べてみては

高橋さん、お便りありがとうございました。リコーやゼロックスでは毎年大量のリストラと早期退職の募集が行われており、業界の中にいる20代、30代のほとんどが危機感を抱いているようです。

高橋さんの先輩が仰っているように国内マーケットが大きくなる可能性はゼロで、今の勤め先が新規事業を軌道に乗せられる可能性が低いなら、当然雇用する社員さんの数もどんどん減っていくことは間違いないでしょう。

一方、20年後の日本に複合機の営業マンが1人も居ないという状況は考えられません。きっとその製品に詳しい人材が生き残るスペースも残っているでしょう。そのために今のお仕事を極めてしまうという方法もあるかもしれません。(難易度は高いと思われますが)

会社に未来は無いけれど、昨日も今日も、なんとなく一日は無事に過ぎてしまいます。

でも、今日より良い明日が訪れる可能性は日に日に下がっていくと思われているのなら、転職市場でどれくらいの価値があるのか、調べてみるというのはいかがでしょうか。その結果今の会社に残るという判断も一つの選択肢でしょう。

 

 

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