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大型造形ができる3Dプリンターの価格
3Dプリンターにはいくつかの造形方式があります。比較的安価なのはFDM方式と光造形方式を用いたものです。
家庭用3Dプリンターならば、数万円で購入できるものもあります。しかし1辺が30cmを超えるような大型造形が可能な3Dプリンターはどの方式でも高価で、数千万円するものも珍しくありません。
大型造形可能な3Dプリンターを選ぶメリットは、大きなサイズのものを造形できることだけでなく、小さな造形物を同時に大量に作れることでしょう。多くの条件を同時に検証する試作や、最終製品の造形で役立ちます。
大型造形3Dプリンターの価格は高額ですが、製品開発スピードは各段にアップします。ただし、大型造形できる3Dプリンターなら何でもいい、というわけではありません。開発用途に適した大型造形3Dプリンターを選ぶことが大切です。
大型造形が可能な3Dプリンターのおすすめ【用途別】
3Dプリンターの値段は、造形方式ごとに幅があり一律に比較することは難しいので、今回は造形方式ごとに大型造形が可能な3Dプリンターの価格と特徴をご紹介します。
ちなみに、それぞれの造形方式ごとのメリット・デメリットは以下の通り。
- メリット:本体価格が安い
- デメリット:造形後に後処理が必要、熱を利用するため造形後に収縮する
- メリット:反りが発生しにくい、透明度が高い造形物が得意
- デメリット:造形後に後処理が必要、直射日光に弱く長期保存に向かない
- メリット:緻密な造形が得意
- デメリット:造形時間が長い、価格が高くなりやすい
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大型造形が可能なFDM方式3Dプリンター
まずはFDM方式の3Dプリンターの中から、大型造形が可能な機種を4つご紹介します。
Stratasys「 F770」
1,000万円以下で購入可能!ABS-M30かASAしか使わないなら!
出典:Stratasys公式
Stratasys社の「F770」は1,000万円以下で購入できる、大型造形可能な3Dプリンターです。造形可能エリアは1,000 mm × 610 mm × 610 mm。
1 mを超える造形が可能なのに価格1,000万円以下に抑えられている理由は、使用可能な素材が汎用プラスチックのABS-M30と、耐候性材料ASAの2種類だけだから。
様々な素材を使って造形をしたい方には向きませんが、ABS-M30やASAを使って試作をしたい方にはおすすめです。
▼F770のスペック情報
価格帯 | 1,000万円以下 | 造形方式 | FDM |
素材 | ABS-M30(BLACK)・ASA(Ivory)の2種のみ | 造形サイズ | 1,000×610×610 mm3 |
本体サイズ/重量 | 1,750 x 1,240 x 1,960 mm3/658 kg | 用途 | ABS-M30やASAを使った試作 |
AON3D 「AON-M2」
スーパーエンプラでも大型造形ができる!
出典:AON3D公式
AON3Dとは2015年にカナダで設立されたスタートアップ企業。温度管理能力をはじめとした技術力の高さに定評があります。
AON-M2は一般的なプラスチック材料だけでなく、スーパーエンプラ(PEEK、PEKKなど)でも大型の造形ができます。材料の自由度が高い3Dプリンターをお探しの方に、まずおすすめしたい1台です。
▼AON-M2のスペック情報
価格帯 | 1,000万~3,000万円 | 造形方式 | FDM |
素材 | ABS・ASA・Nylon (PA66、PA6、PA12)・ PC・PEEK・PEKK・PETG・PSU・PPSU・TPC・TPU・ULTEM™・PolyMide PA6-CF・PolyMax PC-FR・炭素繊維やガラス繊維を含む材料など | 造形サイズ | 450 x 450 x 620 mm3 |
本体サイズ/重量 | 945 x 806 x 1,440 mm3/265 kg | 用途 | 予算3,000万円未満かつスーパーエンプラを使った試作 |
Stratasys 「Fortus 450mc」
400mm程度の大型造形なら!使える材料10種類以上!
出典:Stratasys公式
部品製造やロボット、自動車工業分野などへの導入事例のあるFortus 450mcは、1辺400 mm未満の部品の造形に向いています。
ABS系樹脂をはじめとした一般的なプラスチックや、スーパーエンプラでの造形が可能です。より大きなサイズの造形がしたい場合は、次にご紹介するF900と合わせてご検討ください。
▼Fortus 450mcのスペック情報
価格帯 | 3,000万円~ | 造形方式 | FDM |
素材 | ABS-M30・ABS-M30i・ABS-ESD7・ASA・PC ・PC-ISO・FDM-Nylon12・ULTEM™ 9085・ULTEM™ 1010・PC-ABS など14種 | 造形サイズ | 406 x 355 x 406 mm3 |
本体サイズ/重量 | 1,270×902×1943 mm3/680 kg | 用途 | スーパーエンプラを使った試作 |
Stratasys「F900」
900 mm以上の大きさで造形できる!
出典:Stratasys公式
FDM方式の3Dプリンターで「1辺900 mm以上欲しい」「スーパーエンプラを含む10種類以上の素材を使いたい」のなら、Stratasys社の「F900」を選ぶのが良いでしょう。
F900の価格は7,000万円以上とかなり高額ですが、さまざまなニーズに1台で応えられます。大型部品をシングルピースで造形したいのなら、一度検討してみてはいかがでしょうか。
▼F900のスペック情報
価格帯 | 7,000万円~ | 造形方式 | FDM |
素材 | ABS-M30・PC・PC-ABS・PPSF・ナイロン12など16種の樹脂 | 造形サイズ | 914.4 x 609.6 x 914.4 mm3 |
本体サイズ/重量 | 2,772 x 1,683 x 2,027 mm3/2,869 kg | 用途 | 900 mm以上のサイズの造形 |
大型造形が可能な光造形方式3Dプリンター
光造形方式は、3Dプリンターの中でも最も歴史ある造形方式。透明度の高い造形物を作ったり、比較的精密な造形をしたりできるのが特徴です。大型サイズの造形ができれば、用途も増えて使い勝手も良くなります。
D-MEC「ACCULAS® BA-85S」
光造形方式の国産機で大型造形をしたいなら!
出典:D-MEC公式
2015年から販売されているD-MECのACCULAS® BA-85Sは最大850mm × 650mm × 500mmの造形物を製作できます。高靭性や高耐衝撃性の材料から透明な材料まで5種類のJSR製の光硬化樹脂が使えます。
450 × 450 × 300 mm3 の造形サイズで用途に足るようなら、同じD-MEC社のACCULAS® BA-45Sも候補に入れてみても良いでしょう。
▼ACCULAS® BA-85Sのスペック情報
価格帯 | 1000万〜5000万 | 造形方式 | 光造形(SLA) |
素材 | SCR739(高靭性)/SCR786(高透明・靭性・耐熱)/SCR735(高靭性・耐熱)/SCR11122(透明・耐湿)/SCR712X(高靭性・高耐衝撃性) | 造形サイズ | 850 x 650 x 500 mm3 |
本体サイズ/重量 | 1,900 x 1,200 x 2,100 mm3 | 用途 | 開発試作 |
3Dsystems「ProX™ 800」
造形サイズ650 mm × 750 mm × 550 mm!多彩な素材を利用可能!
出典:3Dsystems公式
3DsystemsのProXシリーズでは、光硬化性樹脂を満たした槽に光を照射して1層ずつ造形しています。寸法精度が高く、滑らかな表面の造形物を作ることができます。
さらに同シリーズのProX™ 950なら、1,500 mm × 750 mm × 550 mmと1 mを超える大きな造形物を作製可能です。造形サイズが大きくなった分だけ、本体サイズが大きいのがデメリットでしょう。
▼ProX™ 800のスペック情報
価格帯 | 5000万〜7000万 | 造形方式 | 光造形(SLA) |
素材 | Accura® 25 Accura® 48 HTR Accura® 55 Accura® 60 Accura® Xtreme Accura® Xtreme™ White 200 Accura® Bluestone Accura® PEAK Accura® CeraMAX Accura® e-Stone Accura® SL5530 Accura® Cast Free(SL7800) Accura® ABS White(SL7810) Accura® Black(SL7820) Accura® ClearVue Free(SL7870) |
造形サイズ | 650 x 750 x 550 mm3 |
本体サイズ/重量 | 1,370 x 1,600 x 2,260 mm3/1,724 kg | 用途 | 10種類以上の材料を使った光造形 |
大型造形が可能なその他の3Dプリンター
PolyJet方式の3Dプリンターでも一辺30 cmを超える大型造形が可能な機種があります。カラフルな造形物を作りたいなら、FDM方式や光造形方式よりもおすすめです。
Stratasys 「J850」
50万色が表現可能!デザイン系3D造形におすすめ
出典:Stratasys公式
StratasysのJ850はフルカラーの3D造形物を作製するのに向いています。造形サイズは490 mm × 390 mm × 200 mm。
同時にセッティング可能な素材の数は7種類!複数種類の素材を混ぜて同時に加工できるので、色の表現幅が広いのが特徴です。色を含めたデザインの確認での利用にピッタリです。
▼J850のスペック情報
価格帯 | 3,000万〜5,000万 | 造形方式 | インクジェット(PolyJet) |
素材 | 硬質樹脂・ラバーライク樹脂・ABSライク樹脂・複合樹脂(1,000種以上)など | 造形サイズ | 490 x 390 x 200 mm3 |
本体サイズ/重量 | 1,100 x 1400 x 1260 mm3/430 kg | 用途 | 様々な材料を試したい・材料を混ぜて造形したい |
HP「Jet Fusion 3D 4200」
HP独自のテクノロジーが詰まった造形方式でムダなく製作できる!
出典:HP公式
HP社のJet Fusion 3D 4200では独自に開発された技術「HP Multi Jet Fusion テクノロジー」で造形できます。HP Multi Jet Fusion テクノロジーはモデルとなった粉末造形方式に比べ、速く正確に造形できるところがメリットです。
通常、材料の80%ほどは使わず破棄せざるを得ないのですが、Jet Fusion 3D 4200なら余った材料を再利用可能。材料の無駄がなくコストダウンできますので、長く使えばイニシャル費の高さをカバーできるでしょう。
▼Jet Fusion 3D 4200のスペック情報
価格帯 | 3000万〜5000万 | 造形方式 | HP Multi Jet Fusion テクノロジー |
素材 | ナイロン樹脂・PA12とPA12GB(ガラスピーズ)など ※今後、増加予定あり | 造形サイズ | 380 x 380 x 284 mm3 |
本体サイズ/重量 | 2,210 x 1,200 x 1,448 mm3/750 kg | 用途 | 速く正確に造形したい |
Stratasys 「Objet1000」
ポリジェット方式3Dプリンターで最大サイズの造形ができる!
出典:Stratasys公式
ポリジェット方式では、他の方式に比べて高い精度で複合素材を加工できます。Objet1000は最大1,000 mm × 800 mm × 500 mmの造形が可能。
PPライク素材やゴムライク素材など数多くの素材が使えるので、耐久性が必要な場面でも役に立ちます。後処理が不要なのも生産性向上に繋がるでしょう。
▼Objet1000のスペック情報
価格帯 | 5000万〜7000万 | 造形方式 | インクジェット(PolyJet) |
素材 | 硬質樹脂(VeroClearなど5種)・ラバーライク(TangoBlackなど4種)・PPライク・ABSライク・複合樹脂(1,000種以上) | 造形サイズ | 1,000 x 800 x 500 mm3 |
本体サイズ/重量 | 2,800 x 1,800 x 1,800 mm3/1,950 kg | 用途 | PPライク素材、ゴムライク素材を用いた精度の高い造形 |
EOS「M 290」
金属加工が得意なEOSの、大型造形可能モデル
出典:EOS公式
金属を使って3Dプリンターで大型造形したいなら、ドイツのEOS社が開発したM290がおすすめです。3Dプリンターを利用して金型を作れば、3次元水管を組み込むこともできます。
M290なら軽合金、鋼鉄類から超合金、複合材まで多彩な金属材料を使えます。金属用3Dプリンターの造形サイズは、他の造形方式に比べて少し小さめになってしまうのがネックです。
▼M290のスペック情報
価格帯 | 7000万程度 | 造形方式 | 粉末積層造形方式 |
素材 | 金属 | 造形サイズ | 250 x 250 x 325 mm3 |
本体サイズ/重量 | 2,500 x 1,300 x 2,190 mm3/1,250 kg | 用途 | 金属を使用した大型造形 |
業務用に大型造形3Dプリンターを導入するなら、補助金利用がおすすめ
大型の3Dプリンターはどれも価格が高くて導入をためらってしまいがちですが、申請すれば国からの補助金が利用できることはご存知でしょうか?「ものづくり補助金」と呼ばれる中小企業向けの支援制度で、最大で1,000万円を超える補助を受けることができます。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するものです。(「ものづくり補助金総合サイト」より引用)
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まとめ
大型造形が可能な3Dプリンターの価格は1,000万円以上のものがほとんど。
- 【FDM大型】Stratasys「F770」:1,000万円以下
- 【FDM大型】AON3D 「AON-M2」:1,000万~3,000万円
- 【FDM大型】Stratasys 「Fortus 450mc」:3,000万円~
- 【FDM大型】Stratasys「F900」:7,000万円~
- 【光造形の大型】D-MEC「ACCULAS® BA-85S」:1,000万~5,000万円
- 【光造形の大型】3Dsystems「ProX™ 800」:5,000万~7,000万円
- 【ポリジェット大型】Stratasys 「J850」:3,000万〜5,000万円
- 【HP Multi Jet Fusion大型】HP「Jet Fusion 3D 4200」:3,000万〜5,000万円
- 【ポリジェット大型】Stratasys 「Objet1000」:5,000万~7,000万円
- 【金属大型】EOS「M 290」:7,000万円程度
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