京セラは3年連続で増益を確保!新型コロナの影響は?【複合機業界に関するニュース】

京セラは3年連続で増益を確保!新型コロナの影響は?【複合機業界に関するニュース】

【複合機業界ニュース】京セラは新型コロナの影響を受けても利益増!

 

京セラ 出典:京セラ

 

京セラが27日発表した2020年3月期連結決算(国際会計基準)は、税引前利益が前期比5.8%増の1488億円だった。新型コロナウイルス感染症の流行で電子部品や複合機の需要が落ち込んだが、ソーラー事業などの構造改革で収益性が改善し、3年連続で増益を確保した。

売上高は1.5%減の1兆5990億円。昨年6月に買収した米工具販売会社などで約600億円の上積み効果があったが、自動車市場の停滞で電子部品が失速し、企業の出社抑制でプリンターや複合機が低迷。コロナによる減収影響は160億円に及んだ。為替も円高に振れ、約360億円目減りした。

一方、利益は本業のもうけを示す営業利益段階から増益に。米子会社AVXの訴訟関連費用で100億円を計上したが、前期に実施したソーラーパネルの原材料購入契約の見直しなどが寄与し、純利益は4.4%増の1077億円だった。

引用:京都新聞社 『京セラ 税引前利益5.8%増 ソーラーで収益改善 3月期』

 

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ニュースを解説!3つのポイント

この報道から読み取れるポイントは、以下の3点に集約されます。それぞれのポイントを独自の視点で読み解きながら解説しましょう。

 

報道のポイントは・・・

  • 3年連続の増益
  • 構造改革により収益改善
  • コロナ禍中も電子デバイス(5G、半導体)は堅調

 

3年連続増益

ここ最近、新型コロナウィルスの影響もあり、各社が厳しい決算を発表しています。

しかしながら京セラは、売上高・収益共に好調で、20年度(以降年度はFY表記)決算においても『3年連続の増益』となっています。直近の3年間を振り返りながら、京セラの“強さ”について探ってみましょう。

 

通期決算資料 FY18(2017.04~03) FY19(2018.04~03) FY20(2019.04~03)
売上高 1,577,039 1,623,710(2.9%) 1,599,053(▲1.5%)
営業利益 95,575 94,823(▲0.8%) 100,193(5.7%)
税引前利益 131,866 140,610(6.6%) 148,826(5.8%)
出典:京セラ 通期決算資料 合算(単位:百万円)

 

表の通り、京セラの通期決算は売上高ベースで1.5%と微減するも、FY18時点と比較すると1.3%増と、確実に成長しています。また税引前利益を見てみると、堅調に毎年6%程度の増益となっています。

なぜ景況に左右されず、ここまで堅実な成長を行えるのでしょうか?複合機だけでは見えてこない京セラの経営について解説していきます。

 

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京セラの強さの秘密は?

京セラは創業者であり現日本航空名誉会長の稲盛和夫氏が考案した『アメーバ経営』などが有名ですが、強みである戦略を上げると枚挙にいとまがありません。今回の記事では京セラの実績に直接的に関係している『事業の多角化』と『M&A』、『構造改革』に絞って解説します。

事業構成比率

京セラは事業の多角化がうまく機能しており、事業構成比率も整っていることが特徴です。

『事業の多角化』戦略は経営の地盤を強固にし、事業間で売上げや利益を相互補完できます。そのため、会社のリソースを集中させて特定の事業を拡大させる『選択と集中』に比べると、消費転換や疫病などの非常事態に左右されにくいメリットを持っています。

また「斜陽産業」に属する部門を抱えていた場合も、同時に成長が見込まれる「成長産業」の部門を持つことで、企業自体へのダメージを軽減、相殺させることができ、将来的には成長産業が自社のメイン事業になる可能性もあります。多くの大企業は、このようにリスクを分散させながら、経営の舵を取っています。

では、京セラの事業比率、とりわけ複合機が含まれる『ドキュメントソリューション』は現状どのようになっているのか確認してみましょう。

 

セグメント別通期決算資料 FY18 FY19 FY20 事業構成比率
    産業・自動車用部品 売上高 287,620 314,339(9.3%) 341,093(8.5%) 21.3%
利益 32,557 38,450(22.5%) 15,813(▲58.9%)
半導体関連部品 売上高 257,237 249,217(▲3.1%) 247,228(▲0.8%) 15.5%
利益 32,476 10,932(▲64.8%) 30,551(179.1%)
電子デバイス 売上高 305,145 364,827(19.6%) 324,113(▲11.2%) 20.3%
利益 47,285 66,926(43.5%) 31,744(▲52.6%)
部品事業計 売上高 850,002 928,383(9.2%) 912,434(▲1.7%) 57.1%
利益 112,318 116,308(3.6%) 78,068(▲32.9%)
  コミュニケーション 売上高 255,535 252,067(▲1.4%) 252,062(▲0.1%) 17.0%
利益 5,061 10,393(134%) 11,450(10.2%)
ドキュメントソリューション 売上高 371,058 375,147(1.1%) 359,915(▲4.1%) 22.5%
利益 41,141 43,528(6.6%) 34,498(▲20.8%)
生活・環境 売上高 112,212 80,114(▲28.6%) 86,691(8.2%) 4.6%
利益 -55,010 -67,016 -1,198
機器・システム事業計 売上高 738,805 707,328(▲4.3%) 698,668(▲1.2%) 44.1%
利益 -8,808 -13,095 34,741
  その他 売上高 18,827 17190(▲8.7%) 16,737(▲2.6%) 1%
調整・消却 売上高 -30,595 -29,191 -28,786 -2.2%
利益 26,735 660 -4,484
合計 売上高 1,577,039 1,623,710(3%) 1,599,053(▲1.5%) 100.0%
利益 131,866

140,610(6.6%)

148,826(5.8%)
出典:京セラ通期IR資料 合算(単位:百万円)

 

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FY17時、ドキュメントソリューションの事業構成比は23.5%でしたが、FY20では1ポイント減少の22.5%です。

報道のとおり、コロナの影響による出社抑制などで、利益は昨対比▲20.8%を計上するものの、その損益は他部門の収益でカバーされています。ドキュメントソリューションの事業に限らず、京セラは各事業が補完関係を築きながら最終的な収益を押し上げており、まさに多角化戦略の成功事例といっても過言ではありません。

 

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構造改革とM&A

京セラの経営体制が盤石な理由は、現状を維持するのではなく、構造改革とM&A(企業の合併・買収)を積極的に行いながら、経営状況を常に『最適化』することに専念しているからです。

例えば、今回の決算にも大きく影響を与えた「生活・環境」セグメントに関して言えば、この中の一事業である太陽光事業は、中国の台頭によるパネル価格の下落を受け、大きな赤字に転落しました。長期契約で調達予定としていたポリシリコンの価格が大幅に下落したことに伴い、京セラはFY18とFY19に1,000億円もの引当損失を計上したのです。

FY17時点では13.5億程度の利益が出ていた事業だけに、契約の見直しなど含めて構造改革を実施し、今回の決算時には収益性が改善したと発表しています。

また、M&Aを積極的に行うことで、弱点を補強したり、更に強化したりと、企業自体を強化しながら成長してきたのが京セラです。京セラのM&Aで有名なのは「三田工業」への支援です。1998年、経営難に陥った三田工業を支援し、今に至るのが「ドキュメントソリューション」事業です。

一方で、見切りをつけるのが早いことも特徴です。過去にデジタルカメラ事業やパソコン事業も手掛けていましたが、収益の増加や改善が見込まれないと判断すれば、すぐに撤退するのが京セラです。

 

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21年度は業績予測どおりとなるか?

キヤノンは通期予測を「未定」としたのに対し、京セラは強気なカンファレンスコールを行い、FY21の予測を以下の通りとしました。

 

通期決算予測 FY19(2018.04~03)実績 FY20(2019.04~03)実績 FY21(2020.04~03)予測
売上高 1,623,710(2.9%) 1,599,053(▲1.5%) 1,500,000
営業利益 94,823(▲0.8%) 100,193(5.7%) 75,000
税引前利益 140,610(6.6%) 148,826(5.8%) 120,000
出典:京セラ 通期決算資料 合算(単位:百万円)

 

京セラによると、次世代通信規格の5Gの普及や半導体市場が回復しつつあるとしながらも、「FY21はコロナの影響による世界的な景気低迷が継続する」とし、「自動車関連部品やドキュメントソリューションは需要低迷が予想される」と見込んでいるようです。

しかし、悪状況下でも積極的に事業機会を獲得し、AIやロボットを活用した生産性向上・原価削減に取り組みながら目標達成を目指すと発表しました。

現状の京セラにとって、収益性の高いセグメントは間違いなく「半導体関連部品」と「コミュニケーション」です。

また「生活・環境」における太陽光事業や医療事業も増収増益となれば、他部門が予測を上回る不調となっても、大きな赤字転落とはならないでしょう。

 

 

コロナ終息後の京セラはどうなる?

通信、半導体関連の事業を持つ京セラにとって、デジタル化の加速は事業機会獲得のチャンスです。

リモートオフィスを支えるサーバー需要の増加予想は、すでに半導体業界などでも支持されており、中国、韓国などの半導体メーカーも量産体制を整える動きを見せています。また、日本では先日本格導入された5Gや、IoTの需要が高まると予測されています。

デジタル化の需要に上手く対応しつつ、「半導体」と「コミュニケーション」、「生活・環境」セグメントの成長を維持・最適化できれば、これらの事業が「ドキュメントソリューション」や、その他事業を下支えしてくれる存在となるでしょう。

 

 

まとめ:京セラの現状と今後の展望

今回のニュースから、京セラの現状と今後をまとめてみます。

 

  • 3年連続の増益となっている
  • 京セラの複合機事業比率は3割未満と低い
  • 事業の多角化や構造改革、M&Aなど『事業の最適化』を行っている
  • 現時点で「自動車」や「ドキュメント」は需要低迷と予測
  • デジタル化の加速により、「半導体」と「コミュニケーション」事業は回復基調
  • 京セラの主力事業は「半導体」「コミュニケーション」「生活・環境」となる可能性

 

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