富士ゼロックスが業績を牽引!富士フイルムホールディングスの20年3月期決算【複合機業界ニュース】

富士ゼロックスが業績を牽引!富士フイルムホールディングスの20年3月期決算【複合機業界ニュース】
この記事は、2020年6月に執筆されました。情報が古い可能性があります。ご了承ください。

【複合機業界ニュース】富士フイルムホールディングスの20年3月期決算

 

富士フイルムホールディングスは22日、2020年3月期の連結純利益が1249億円で前の期比9%減少したと発表した。精密各社が新型コロナウイルスの影響で業績を大幅に悪化させる中では踏みとどまったともいえる。いち早く事務機器事業の構造改革を進め、ヘルスケア分野を強化してきた経営戦略が効果を発揮している。

~中略~

富士フイルムは事務機器を手掛ける富士ゼロックスが業績をけん引した。他社に先駆けて18年3月期から人員削減や拠点の統廃合など構造改革を進めてきた効果で、営業利益を181億円押し上げた。事業別の営業利益は9%増の1050億円となった。19年11月に富士ゼロックスを完全子会社化したことで、少数株主利益の流出を抑えた効果もある。

引用:日本経済新聞『富士フイルム前期、コロナ禍で踏みとどまる9%減益』

 

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ニュースを解説!2つのポイント

報道のポイントは・・・

  • 富士フィルムH全体では、連結純利益は▲9%
  • 富士ゼロックスが営業利益を押し上げ、富士フィルムH全体の実績を牽引した

 

 

ゼロックスの決算情報は?

新型コロナウィルスの影響により、多くの業種・企業でマイナス実績が目立つ中、富士ゼロックスは好調のようです。この一報には、株主を含め、同社を目指す就職活動生なども、ひとまず安堵といった様子でしょうか。

ニュース記事では、富士ゼロックスは他社に先駆けて18年3月期(FY17)からリストラを行い「構造改革が進められた結果」と報じていましたが、構造改革後、どのように実績が変化したのでしょうか?

まずは、富士ゼロックスの2017年度(FY17)から2019年度(FY19)の「売上高」の推移を確認します。

売上高はFY17と比較して、▲9%です。しかし、先の構造改革(リストラなどによる人員削減)などを勘案すると、パーヘッド換算では従業員一人当たりの売上高は上がっているのではないでしょうか。

次は「営業利益」です。

 

驚くことに、FY17は84億円だった営業利益が、FY19には1,050億円まで上昇しています。これはFY17に、先述の構造改革費が適用されている結果でしょう。同社決算情報でも「構造改革費用等一時費用」として、700億円が計上されているため、一時費用を除く同社FY17の営業利益は784億円となります。

この実績値から読み取れるのは、以下の2点です。

 

  • 構造改革を断行し、稼ぐ力は増している
  • 構造改革には一時的な痛みが必要。富士ゼロックスは700億円を捻出した

 

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富士ゼロックスの事業領域ついて

ここまで、富士ゼロックスの売上高および営業利益をみてきました。

競合他社が実績を下げる中、富士ゼロックスは堅調な成長を維持し、利益も右肩上がりの状況です。構造改革による痛みは経験しているものの、それによって萎縮することなく成長しているのは何故でしょうか?

同社の「何」が成長力となっているのか、富士ゼロックスを事業領域別に確認してみます。

 

富士ゼロックスの事業領域は3つ

事業費率と名称は上記グラフの通りとなっており、それぞれの領域では、以下の事業を行っています。

 

▼事業領域と名称

  • 「オフィスプロダクト&プリンター」:大手市場および中小規模事業所(SMB)市場向けに複合機・プリンターなどのオフィス機器を提供
  • 「プロダクションサービス」:商業印刷分野におけるデジタル印刷機(プロダクションプリンター)や、印刷ワークフロー・ソリューションを提供
  • 「ソリューション&サービス」:システムインテグレーションやクラウドサービスによる付加価値の高いソリューションや、複合機管理や基幹業務プロセスの役務代行サービス(BPO:ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を提供

 

富士ゼロックスの強みは?

富士ゼロックスは、コピー機の事業比率が55.4%と比較的高いにも関わらず、競合他社と比べても業績不振とならなかったのは不思議な点です。3つの事業領域が、決算上どのようになっていたのか?を確認し、その「強さの秘密」を読み解いてみましょう。

富士フィルムベースの発表ではあるものの、ゼロックスの全体概要は「新型コロナウィルスの影響を受けた」としており、特に「オフィスプロダクト&プリンター」領域は、オフィス閉鎖などで製品販売が減少したとのことでした。

ここまでは他社と同様です。

しかし、富士ゼロックスはリモートワークの拡大により、中⼩規模の事業所では、ネットワークセキュリティー対策を⽀援するアウトソーシングサービス「beat」や、 全国のセブン-イレブン店頭の複合機「ネットプリントサービス」の需要が拡⼤したとのことです。

領域別にトピックスをまとめました。

 

▼領域別に見たトピックス

  • 「オフィスプロダクト&プリンター」領域は、欧⽶向けの輸出や中国での販売が減少したものの、日本国内はカラー複合機の「ApeosPort-VII C」シリーズの販売が第3四半期まで堅調に推移。
  • 「プロダクションサービス」領域は全体的に販売台数が増加
  • 「ソリューション&サービス」領域は国内オフィスのIT環境構築や運⽤を⼀括してサポートす る「beat」サービスが伸⻑

 

上記決算内容からも読み取れるように、富士ゼロックスも競合他社同様、オフィス用途の機器の売上は減少しています。しかし、同社の強みでもあるソリューション分野では、アウトソーシングサービス「beat」やリモートオフィスの広がりにより、セブン-イレブン向け複合機の需要増など、コロナの影響がプラスに働いた側面を持っています。

 

収益増は単なるラッキーなのか?

ペーパーレス化に対応するために、富士ゼロックスがソリューション、サービスに力を入れていたことは周知の事実です。コロナ禍によって想定以上の疑似的なペーパーレス化が進んだ結果、同社にとっても想定以上のプラスの結果をもたらしたと言えます。

また、コンビニなどコンシューマーに寄り添ったサービス展開をしている点は、自宅にプリンターを持たないオフィスワーカーの助けとなり、ブラザーなどプリンタメーカー各社の取りこぼしている顧客を見事に掴んでいるとも言えます。

 

▼併せて読みたい!コンビニコピー機の画質は?

【セブンイレブンvsファミマ】コンビニコピー機の写真プリントの画質を検証

 

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コロナ終息後のゼロックス

2019年、富士ゼロックスは親会社である富士フィルムホールディングスの「完全子会社」となりました。これに伴い、2021年以降は社名を、長年親しまれたゼロックスから「富士フィルム ビジネス イノベーション株式会社」へと変更します。

ゼロックスのブランド名が無くなることに少し不安を覚えるものの、より多角的かつ巨大な「富士フィルム」というコングロマリットの一部となることで、医療、カメラ、IT、化粧品など多数の分野へ進出することが可能となります。

また、他部門との事業融合などの実現により、新しい製品が生まれる可能性も秘めており、さらに多方向で躍進することが期待されています。

なお、親会社である富士フィルムは今年度決算をマイナスとしています。

しかし、同社の「ヘルスケア&マテリアルズ」セグメントの医療ITやディスプレイ素材、新型コロナウィルスで注目を集める『アビガン』などを持っています。注目分野に数多く進出しているため、今後も事業規模を拡大していくと予想されています。

 

まとめ:ゼロックスの現状と今後の展望

今回のニュースから、富士ゼロックスの現状と今後をまとめてみます。

  • 新型コロナウイルスの状況でも、堅調な利益増
  • 構造改革により事業を集中
  • 機器の販売は他社同様落ちているものの、ソリューション分野やIT関連が強い
  • 富士フィルムの完全子会社となったことで、今後より多方面への進出が期待される

 

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