OKIの20年3月期連結決算は営業益4%減!コロナ後の展望は?【複合機業界ニュース】

OKIの20年3月期連結決算は営業益4%減!コロナ後の展望は?【複合機業界ニュース】

【複合機業界ニュース】OKIの2020年3月期連結決算は営業利益が4%減

 

OKIデータ

出典:OKIデータ

 

OKIが13日発表した2020年3月期の連結決算は、営業利益が前の期比4%減の168億円だった。通信キャリア向けの案件がけん引して売上高は4%増えたが、新型コロナウイルスの感染拡大による工場の操業停止や為替影響が利益を押し下げた。21年3月期の業績見通しは、算定が困難として未定とした。

情報通信事業は通信キャリア向けのネットワーク構築などで24%の増収だった。一方で現金処理機などを手がけるメカトロシステム事業で主力の深圳工場が操業を停止。プリンター事業もユーロに対する円高などが利益を押し下げた。固定資産の売却益など特別利益を計上し、純利益は68%増の140億円だった。

引用:日本経済新聞『OKIの前期、営業益4%減 コロナで操業停止』

 

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ニュースを解説!3つのポイント

報道のポイントは・・・

  • 新型コロナウィルスの影響で工場停止。営業利益は前年比4%減の168億円
  • 通信キャリア向け案件が牽引して売上高は増えた
  • 為替や固定資産売却益などの特別利益が大きい

 

OKIの事業セグメントと決算情報

沖電気工業株式会社は1881年創業の日本の老舗メーカーで、通称をOKIと言います。主要セグメントは、「情報通信」、「メカトロシステム」、「プリンター」、「EMS(機器の設計生産受託サービス)」の4セグメントとなっており、創業以来”モノづくり”に特化した企業です。

 

OKIグループの事業領域

OKIグループは、主に日本国内のインフラ産業、金融機関へ強みを持ち、製品群は航空管制システム、ATM、釣銭機、ETCシステム、発券機端末などがメインです。その中で、唯一コンシューマー向けに展開している製品がプリンターで、OKIの事業会社であるOKIデータが製造・販売を行っています。

セグメント別での商品とサービスは、以下の通りです。

「情報通信」が幅広い商品やサービスを持っている一方、「メカトロ」と「プリンター」は製品とサービスがほぼ絞られている少し偏りのある事業配置です。

 

  • 情報通信:交通システム(航空管制、ETC)、中央官庁/自治体システム(気象予報システム、消防指令システム)、金融システム、通信キャリア(GE-PON、ブロードバンドサービスに対応したプロダクト)、防衛関連システム
  • メカトロ:ATM、出納機、入出金機、つり銭機、予約発券端末、チェックイン端末、ATM監視運用サービス
  • プリンター:複合機、プリンター、大判インクジェット
  • EMS:通信、産業、医療などの設計生産受託サービス
  • その他:主にグループ会社による部品関連事業

 

OKIグループ

出典:OKI

 

OKIグループ連携決算

日本国内のインフラなど、海外より国内比重の高いOKIですが、他社と同様、コロナの影響による利益減は避けられませんでした。セグメント別で実績を見てみましょう。

 

セグメント別

(単位:百万)

FY16 FY17 FY18 FY19 事業構成
比率
通期 通期 前年比 通期 前年比 通期 前年比
  情報通信 売上高 ¥177,391 ¥172,716 -2.6% ¥184,286 6.7% ¥229,065 24.3% 50.10%
営業利益 ¥14,385 ¥13,513 -6.1% ¥14,668 8.5% ¥20,835 42.0%
メカトロシステム 売上高 ¥100,923 ¥93,542 -7.3% ¥82,731 -11.6% ¥70,728 -14.5% 15.47%
営業利益 ¥-11,818 ¥-5,093 56.9% ¥82 98.4% ¥-296 -461.0%
プリンター 売上高 ¥112,389 ¥108,905 -3.1% ¥102,554 -5.8% ¥92,285 -10.0% 20.18%
営業利益 ¥1,033 ¥2,729 164.2% ¥5,740 110.3% ¥2,774 -51.7%
EMS 売上高 ¥43,165 ¥47,677 10.5% ¥65,167 36.7% ¥59,788 -8.3% 13.08%
営業利益 ¥2,058 ¥2,233 8.5% ¥3,705 65.9% ¥2,074 -44.0%
その他 売上高 ¥17,756 ¥15,185 -14.5% ¥6,712 -55.8% ¥5,355 -20.2% 1.17%
営業利益 ¥3,431 ¥2,022 -41.1% ¥877 -56.6% ¥389 -55.6%
本社費・消去 ¥-6,545 ¥-7,682 ¥-7,552 ¥-8,946  
合計 売上高 ¥451,627 ¥438,026 -3.0% ¥441,452 0.8% ¥457,223 3.6% 100.00%
営業利益 ¥2,545 ¥7,721 203.4% ¥17,522 126.9% ¥16,829 -4.0%
出典:OKI連結決算資料より作成

 

今回発表されたFY19は、売上高が3.6%上昇するも、利益は▲4%です。

国内をメイン市場としており、比較的海外の売上費率が低いとされているOKIは、市場の消費停滞が直接的な影響ではなく、むしろ海外工場の停止が大きなダメージを受けたようです。

セグメント別では、製品とサービスが幅広い「情報通信」セグメントは事業比率が50%と高くなっており、また、同セグメントがOKI全体の実績を牽引していることが分かります。国内インフラをメインの事業にして、安定的な増収増益が見込まれます。

一方、ATMや発券機など、機器の製造に特化した「メカトロシステム」セグメントは、ATMなどのシェア率は高いものの、製造原価が高く、コンペや入札で機器を納品することが多いため、利益は低い状況が続いています。

今期はコロナの影響で中国・深セン工場の閉鎖なども影響し、大きなマイナスを記録しています。また、海外ATMのシェアが伸び悩んでおり、2016年にM&Aで買収したブラジルのATM子会社も今期で売却しています。

「プリンター」セグメントは、OKIの全海外事業の内8割を担っており、海外の環境変化に弱い特徴があります。今期においては、まだ大きな売上高のマイナスは見られないものの、ユーロに対する円高という為替差損や、コロナによる減収も影響していると予想されます(日本国内の売上は0.9%増と堅調)。

「EMS」は半導体関連の売上高が減少したようで、そのほか部材調達の遅れから、減収減益を記録しています。

 

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OKIの特別利益について

OKIの決算報告で違和感を覚える点は、毎期大きく変動する利益です。

これは、毎期計上される「特別利益」が関係していると思われます。特別利益は本業での稼ぐ力とは「別」の利益で、構造改革によって得られた利益です。今期のFY19では、「+141億円」を計上していますが、固定資産売却や子会社譲渡など、「身を削りながら利益を確保している」状況です。

 

  • 固定資産売却益+48億
  • 政策保有株式の縮減による投資有価証券売却益+47億
  • ブラジル子会社の譲渡に係る事業構造改善費+24億円

 

 

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コロナ終息後のOKI

基本的に国内インフラをメインに担っている企業であり、事業も多角化されているため、大きくダメージは受けない一方、現状は新規成長分野への進出もなく、大きな変化は見られないでしょう。

ただし、今年度はおよそ85年前にOKIから分派した「沖電線(東証1部)」を再度、完全子会社化し、沖電線の保有する電線工事業や別分野の技術を吸収しています。また、保守会社であるOKIカスタマアドテックと、交換機関連の営業・保守会社のOKIウィンテックを合併するなど、大きな企業改革を断行しています。

今後は、プリンター事業会社の再合併などを行いながら、自社グループ内で分散したコア技術を集結し、別事業に乗り出す可能性がありそうです。

 

OKIのチーム体制

出典:OKI

 

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まとめ:OKIの現状と今後の展望

今回のニュースから、OKIの現状と今後をまとめてみます。

 

  • 国内のインフラを担っており、安定感はある
  • ATMなどはシェアは高いが利益が出ていない
  • 利益の正体は、固定資産などの売却による身売り
  • グループの再統合を行い技術を集結。新規事業への進出準備か。

 

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