リコーの20年3月期決算は純利益20%減!【複合機業界ニュース】

リコーの20年3月期決算は純利益20%減!【複合機業界ニュース】

【複合機業界ニュース】リコーの20年3月期決算は純利益20%減!

 

リコー

出典:リコー

 

リコーが8日発表した2020年3月期(前期)の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前の期比20%減の395億円だった。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、主力の事務機の販売が減ったほか、利益率の高い関連消耗品の売れ行きが低調だった。

売上高は微減の2兆85億円、税引き前利益は10%減の758億円だった。国内の中小企業向けを中心にIT(情報技術)機器やソフトウエアなどを一体で提供するオフィスサービス分野の伸びが下支えした。米マイクロソフトの基本ソフト(OS)のサポート終了に伴う更新需要や新型コロナの感染拡大による在宅勤務環境の構築需要を取り込んだ。

21年3月期(今期)の連結業績予想は未定とした。

引用:日本経済新聞『リコーの前期、純利益20%減 新型コロナで事務機苦戦』

 

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ニュースを解説!2つのポイント

報道のポイントは・・・

  • 純利益は前期比で▲20%
  • コロナによる事務機販売が減り、消耗品販売が低調

 

リコーの決算情報は?

大手3社(富士ゼロックス、キャノン、リコー)の中では、一番危ういと思われていたリコーの決算ですが、蓋を開けてみれば、それほど大きなマイナスにはなっておらず「意外と盤石な体制を整えているのかな?」との印象を持ちました。

大手メーカーの決算の中で最も悲惨だったキャノンは、前期比50%近いマイナスとなっているため、リコーの「20%減」は、かなり踏ん張っているようにも見えます。

しかし、本当にその印象が正しいのでしょうか。リコーの実績を確認しながら、リコーの状況をみていきましょう。

まずは、「売上高」です。

 

▼リコーの売上高

 

リコーの売上高

(単位:百万円) 2016年3月期 2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期
売上高 2,209,028 2,028,899 2,063,363 2,013,228 2,008,580

出典:リコー

 

上記の売上高では、FY16以降は「横ばい」の状態で、近年は概ね「2兆100億円」前後の売上高を記録しています。売上高だけ見ると、非常に優良企業ですが、果たして本当に儲かっているのか?は、上記だけで判断できません。

次は、リコーの稼ぐ力を表す「営業利益」の推移を確認してみましょう。

 

▼リコーの営業利益/営業利益率

 

リコーの営業利益

(単位:百万円)  2016年3月期 2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期
営業利益 102,295 33,880 -115,676 86,839 79,040
売上高営業利益率 4.6% 1.7% -5.6% 4.3% 3.9%

出典:リコー

 

ご覧の通り、リコーの営業利益は約790億円と、前年度対比で▲9%減となっております。しかし、それ以上に気になる点が、営業利益率の低さです。

製造業の営業利益率は、概ね4%前後と言われていますが、コピー機業界は「消耗品ビジネス(利益率が高い)」のため、一般的な製造業よりも営業利益率は高い傾向にあります。

例えば、競合の富士ゼロックス(約11%)や、キャノン(約8.7%)などは営業利益率が8%以上となっており、小規模事業のOKIなどもプリンター部門は5%弱の営業利益率を維持しています。

それらの情報を踏まえてリコーの実績を見ると、大手3社の一角であるにも関わらず、他社と比べて利益率が低いことが分かります。

最後は、引用元の記事でも記載されている「純利益」です。

純利益とは、本業での儲け(=営業利益)から、会社の経費(=人件費や銀行への返済利息)などを引き、更に「特別損益」などの費用も加味した後、会社に残った純粋なお金のことを指します。

 

▼リコーの純利益

 

リコーの純利益

(単位:百万円) 2016年3月期 2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期
親会社株主に帰属する当期純利益 62,975 3,489 -135,372 49,526 39,546

出典:リコー

 

当然、営業利益が低いと会社に残るお金も少なくなります。リコーの純利益は約395億円と前年度対比▲20%と記事の通りの結果となっています。

 

ここまでの説明を簡単にまとめてみます。

  • リコーは毎期、2兆円以上売り上げている
  • それにもかかわらず、営業利益率は4%台と業界水準よりも低い
  • そのため、純利益が低く、儲かっている印象はない

 

リコーの事業領域

もともとコピー機業界は「ペーパーレス化」の影響を受け、事業転換の必要性に迫られています。その中で、ゼロックスやキヤノンは大規模な事業の構造改革を断行し、全く異なる業種への参入を行っている状況です。

一方、リコーだけは“打ち手無し”の状況のまま、10年以上が過ぎてしまった感が否めず、投資家からも「企業の存在意義が分からない」と言われることがある状況です。

そんなリコーの現在の事業領域と事業構成比率を確認してみましょう。

 

リコーの事業構成比率

(単位:百万円) 2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期
オフィスプリンティング 1,165,979 1,144,053 1,086,428 1,006,274
オフィスサービス 425,612 447,973 481,392 568,955
商用印刷 186,110 185,933 185,292 178,396
産業印刷 11,883 19,200 20,692 23,006
サーマル 57,287 61,458 66,368 61,896
その他 182,028 204,746 173,056 170,053

出典:リコー

 

セグメント名だけでは分かりにくいかもしれませんが、ITサービスや、その他の産業分野(ディスプレイ、半導体)を持つ競合と比べ、リコーは今もなお全力で「印刷」の分野に力を注いでいる状況です。

「事業の多角化を進めている」とは、毎期発表するものの、どうしても「印刷の発想の枠」から抜け切れていない印象を持ちます。

 

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コロナ終息後のリコーは?

率直に言って、リコーには危うい印象があります。

現状の同社セグメントは全振りで「印刷業」や「オフィス」へ傾いており、コロナ後もリモートワークの継続が行われた場合やオフィスという概念が失われた際に、真っ先に淘汰されてしまう気がします。

今後のコピー機業界は、再編に向けて加速することが予想され、事業の8割近くをオフィス関連(しかも斜陽産業)に集中し、さらに巨体であるリコーを買収したい企業はないでしょう。

リコーは独自で生き残るためにも、まずは「利益率」の改善をいち早く進める必要があります。

具体的には、営業部門のコントロールとリストラです。

同社の「消耗品の安売り」「カウンター料金の大幅な値下げ」などは業界内でも有名ですが、まずはこれらを見直すことで営業利益率を上げることができるでしょう。

 

 

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まとめ:リコーの現状と今後の展望

今回のニュースから、リコーの現状と今後をまとめてみます。

 

  • キヤノンに比べると好調な印象のニュース記事
  • 売上高に対する営業利益は業界水準よりも低い
  • 構造改革の断行、営業部門の販売の在り方を是正する必要がある

 

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