2023年から2025年2月で、OA機器販売店が6社の破産申請が公にされています。他にもクビが回らなくなって知人や上位店にタダ同然で譲ったという販売店も含めれば他にも多数存在するでしょう。
破産企業の情報は以下のとおりです。
社名 | 地域 | 破産年月 | 創業年 | 負債総額 |
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シャープ事務機福井販売㈱ | 福井市 | 2025年2月申請 | 1948年 | 約1億円 |
㈱キンキ | 熊本市 | 2024年9月申請 | 1959年 | 約2億4,000万円 |
㈱梅松園 | 奈良市 | 2024年2月破産 | 1921年 | 約3億3,400万円 |
㈲エイダン事務機 | 鳥取市 | 2024年11月申請 | 1984年 | 約1,000万円 |
㈱ナガタイ | 長岡市 | 2023年7月破産 | 1940年 | 約8,000万円 |
㈱石井商店 | 新潟市 | 2023年2月申請 | 1877年 | 約2億9,000万円 |
負債総額は3億円以下がほとんどで小型の倒産が多いと言えます。
延命出来た理由は業界にはびこる悪習が原因?
上記で列記した販売店の創業年を見てみると最も若い会社で創業40年、平均の創業年がなんと1938年と日中戦争が勃発した翌年と、非常に古い会社ばかりが倒産していることがわかります。
なぜこれほど古い販売店が経営を続けていけるのでしょうか?そのヒントの一つは複合機市場の「1社1商流」という独禁法違反の該当する可能性が高い習慣が影響していると思います。
例えばAユーザがリコーの複合機を大塚商会で購入している場合、リコーは大塚商会を通してしか購入させてもらえない、または大塚商会より高いカウンター料金を別の販売店に提示させることで大塚商会を守るという、ユーザから見れば「悪習」と言える商習慣です。
恐らく今回倒産した企業を含む老舗販売店は、複合機が市場に普及していった1980年~2000年にシェアを確保し、その後はメーカーに「1社1商流」で守られながらカウンター料金で利益を得続けていてのんびりしていたところ、コロナ禍での印刷枚数減で貴重な収益源を失い、破産につながった会社が多いのでは無いでしょうか。
逆に言えば「1社1商流」が無ければとっくに破産している、大昔の既存ユーザにしがみついているだけのゾンビ販売店はこの国にまだ数多く蠢いています。
原因はコロナだけ?
複合機販売店に対するコロナ禍の影響を見てみます。
複合機メーカーの中でも複合機が事業に占める割合が多いと言われるリコーの国内売上推移を見てみると、2021年3月期と22年3月期はコロナ前と比較して国内売上が-14%、-19%と大打撃を受けているのがわかります(売上で19%ダウンということは、利益はもっと大きなダメージ)。
一方、2023年3月期以降は国内売上がプラスに転じており、大まかに言えば複合機販売店もは2022~2023年までに事業規模を縮小してギリギリ黒字にすることさえ出来れば、その後は生き残れた可能性が十分有りそうです。
恐らく会社が古すぎて仕入元の変更を含めた検討が出来なかったり、必要な人員整理が出来ずに(4代目社長が古参を切れない)破産に至ったケースも多いでしょう。大手メディアはわかりやすい文脈に乗せる傾向にありますが(誰にでもわかりやすいため)、コロナ禍が本当の原因かは慎重に調査が必要では無いかと思います。
オペレーター 杏奈