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複合機・コピー機のトナーカートリッジはトナーの循環役
出典:Amazon
複合機・コピー機に使用されている「トナーカートリッジ」は感光体ドラムへ供給するトナーを循環させる役割を持っています。また、トナーをただ運ぶだけではなく、緻密な制御を行っており、印刷物の品質を大きく左右する重要な運び屋としての役割も果たしています。

大手事務機メーカーのコピー機部門で8年間、生産技術職として勤務していました。設計者と生産現場の橋渡しをする役割を担っていたため、開発から生産までの幅広い知識を持っています。
新製品の立ち上げでトナーカートリッジを担当することも多々あり、技術確立の苦労などを何度も経験しています。今回は、トナーカートリッジについて役立つ知識を、技術的な観点でお伝えできればと思います。
トナーカートリッジの仕組みとは?
トナーカートリッジは、画像や文字を描くためのトナーを循環させるユニットです。
メーカーによって細かな違いはありますが、基本的にはトナーを充填する容器とトナーを帯電させて回転しながら送り出す機構を持ちます。
レーザープリンターなどと違い、業務用の大型複合機・コピー機は、大量印刷の需要があるため、トナーカートリッジにトナーを供給する「トナーボトル」が設置されているタイプがほとんどです。
それでは、トナーカートリッジの働きについて、印刷の仕組みと共に説明していきます。
印刷の仕組み
複合機・コピー機で行われる印刷は「感光体ドラム」と言う筒状の部品が、静電気を帯びてトナーを用紙へ運び出し、熱と圧力で定着することで画像や文字を描きます。
そのドラムにトナーを供給する役目を果たすのが「トナーカートリッジ」で、非常に大切な重要を担っています。まずは、印刷の一連の流れをチェックしてみましょう。
- 帯電:ドラム表面全体を均一に帯電させる
- 露光: 出力された画像や文字の通りに光を当て、ドラム表面内に電荷の差を発生させる
- 現像: 電荷の差によって、光が当たった部分にのみトナーが吸い寄せられドラムに像が描かれる
- 転写:トナーによって描かれた像を紙へ直接転写する、または転写ベルトに1度移してから紙へ転写する
- 定着: 紙に乗せられたトナーに熱と圧力を加えて定着させる
トナーカートリッジは上記の「3」の現像工程において、補給したトナーを帯電させて、ドラムへ移動させる役割を果たします。均一にムラなくトナーを運び出すことで、安定した画質を生み出すことができます。
トナーとは?
トナーとは画像や文字を用紙に表現するために使用される粒径5~8㎛の粒状の樹脂のことで、熱で溶かされて用紙と融着し印刷物となります。
トナーカートリッジのことを「トナー」と呼ぶこともありますが、トナーはあくまで粒状の樹脂そのものを指します。家庭用プリンター(インクジェットプリンター)のインクと同じようなものだと思って良いでしょう。
インクは用紙に染み込ませるのに対し、トナーは紙に乗せて固着させるため、滲みにくく、高速での印刷を可能にしています。
このトナーボトル内には、樹脂の粒だけではなく、キャリアと呼ばれる磁性体の金属粒子が加えられており、樹脂だけでは成り立たない機能的な役目をしています。
部品構成と動作
トナーカートリッジには、一定容量の容器部分があり、トナーボトルから必要な分のトナーを補給します。容器内ではスクリューが回転してトナーを撹拌しており、トナーとキャリアを摩擦→帯電させています。
その隣には、金属の素管で包まれたマグネットローラーがあります。磁性体のキャリアは、帯電したトナーを引き連れてマグネットローラーに吸い寄せられます。
そして、感光ドラムへ適正な量だけトナーを移動させるために、マグネットローラーとの間に数μmのスキマを設けて、金属ブレードが設置されています。これによりマグネットローラー上に、均一にトナーとキャリアが分布されます。
その後、トナーのみ静電気の力で感光体ドラムへ引き寄せられ、キャリアはトナーカートリッジの容器へ戻っていきます。
トナーカートリッジの種類
トナーカートリッジは、製品本体を製造するメーカーだけが生産しているのではなく、様々な生産場所や流通経路があります。
参考までに、大きく4つに分かれるトナーカートリッジの種類を紹介します。
純正トナー:国内純正トナー
複合機・コピー機の各メーカーが、機種ごとに専用で生産したトナーカートリッジのことです。その機種で使用するために生産されたものなので、基本的に純正トナーを使用することをオススメしますが、中古の製品など生産が終了した機種の場合は、入手不可能な場合があります。
出典:Amazon |
品質 | ★★★★★ |
価格 | ★☆☆☆☆ | |
ポイント | ||
高額だが保守契約期間内はトナー交換が無償。 |
純正トナー:海外純正トナー
各メーカーには海外にも製品本体を製造する工場があり、トナーカートリッジも同様に海外工場で生産された純正品が存在します。それらを逆輸入して販売しているものを「海外純正トナー」または「輸入純正トナー」と呼びます。
品質については、国内純正品とほぼ同等と考えて良く、トナー価格の相場によっては国内純正品よりもリーズナブルです。
![]() 出典:Amazon |
品質 | ★★★★☆ |
価格 | ★★★☆☆ | |
ポイント | ||
品質面での問題はないが、日本国内に比べて荷物の取り扱いが雑で不安。 |
非純正トナー:汎用トナー
トナーカートリッジなどの消耗品は、メーカーのグループ会社や下請け会社などで生産し、本体を生産するメーカーが品質チェックなどを行い、純正品として販売される場合があります。
本体のメーカーを通していないものは純正品として販売することはできないため、ノーブランド(NB)品やOEM品と呼ばれ、純正品と同等の品質でありながら、価格が安いことが特徴です。
しかし、近年は中国などで純正品を模造し、汎用トナーとして販売しているものもあるので注意が必要です。
![]() 出典:Amazon |
品質 | ★★★☆☆ |
価格 | ★★★★☆ | |
ポイント | ||
品質は製造会社によって異なり、コスパは良いがメーカー保証の対象外。 |
非純正トナー:リサイクルトナー
リサイクルトナーとは、使用済みのトナーカートリッジを回収し、リサイクル工場にて分解・洗浄・修理・トナー充填を行い、再び利用可能にした製品です。リサイクル品のため、価格は割安です。
リサイクルトナーには、製品本体のメーカーで再生された純正リサイクル品と、各リサイクルメーカーで再生された非純正のものがあり、非純正のものは品質トラブルが起きやすく、あまりおすすめできません。
![]() 出典:Amazon |
品質 | ★★★☆☆ |
価格 | ★★★★★ | |
ポイント | ||
価格は最も安いが、原則としてメーカーの保証は受けられない |
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トナーカートリッジの寿命
トナーカートリッジの交換目安は、A4用紙の片面印刷で5,000~20,000枚程度と言われますが、印刷内容によって一概には言えません。各部品の摩耗や劣化もさることながら、トナーと共に撹拌されているキャリアは、摩擦を繰り返し劣化していきます。
また、複合機・コピー機では、レーザープリンターのようにユーザー交換ではなく、基本的に業者での対応になります。交換が必要な時期が近づいてきたら、本体上でトナーカートリッジの交換を促す表示があるので、できるだけ早いタイミングで業者へ連絡するようにしましょう。
トナーカートリッジ起因の画像不良
トナーカートリッジは機械的な動作だけでなく、物理的な制御も必要とされる複雑な技術が集結しているため、印刷品質に大きな影響を与えます。
頻繁に起こるものではありませんが、トナーカートリッジに不具合が発生した際に起こる画像不良を幾つか紹介します。
白い縦スジ
マグネットローラーによって運ばれるトナーは、数㎛のスキマを空けた金属ブレードの間を通って均一化されています。何かのきっかけでスキマよりも大きな異物が入り込んでしまったり、トナーの塊などが発生してしまうと、そこだけスキマに引っ掛かってしまい、トナーを移動させることができなくなってしまいます。
そうなってしまうと、印刷された画像には、印刷方向と平行に色が乗らず白く抜けたようなスジが発生してしまいます。
黒い点々
トナーと一緒に撹拌され帯電を促しているキャリアは、感光体ドラムへ移動せず、トナーカートリッジに戻ってきます。ところが、何らかの理由でキャリアがドラムへ移動してしまうと、トナーと一緒に定着され黒い点々のようなものが画像に現れます。
キャリアはトナーよりも粒径が大きいため、その部分を触ると少しザラついているのが特徴です。
濃淡のある横スジ
マグネットローラーの回転にムラがあると、その周期でドラムとの距離が部分的に遠くなったり、近くなったりして、ドラムへ移動するトナーの量にムラが出る場合があります。そのムラは、そのまま画像にも出てしまいます。
印刷方向とは垂直にマグネットローラーのピッチで等間隔にスジが出てくるので、業者などに確認すればすぐに分かるでしょう。
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トナーカートリッジの劣化や故障は、様々な画像不良を引き起こすため、交換の時期が来たら、すぐにメンテナンス業者へ連絡をして交換対応を行ってもらうことをオススメします。
まとめ
- トナーカートリッジは供給されたトナーを帯電させドラムへ運ぶユニット
- トナーとは着色するための粒状の樹脂材料で、滲みにくく、高速での印刷を可能にする
- トナーカートリッジ内では磁力と静電気の力でトナーが循環し、ドラムへ移動する
- 純正と非純正のトナーカートリッジが存在し、それぞれ品質や価格に差がある
- トナーカートリッジは印刷品質に与える影響が大きく、適切なタイミングで交換すべき
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