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複合機・コピー機のスキャンとは?
結論から述べますと、スキャンとは光の情報をデジタル信号に変換することです。
複合機・コピー機では、原稿台や自動原稿読み取り装置(ADF)に、原稿などをセットしてコピーボタンを押すと、画像や文字が複写された印刷物が出て来ます。
画像や文書をスキャンして印刷する場合やスキャンしたものをデータ化する場合など、ボタン1つでできる作業ですが、機械の中では、どのようなことが行われているのでしょうか?

大手事務機メーカーのコピー機部門で、生産技術職として約8年勤務していました。本体の生産ライン立ち上げなど生産技術系の仕事で様々な本体の問題を検討してきたので、コピー機における印刷のメカニズムは熟知しています。
今回はコピー機の基本機能であるスキャンについて、仕組みや故障の原因などを技術的に解説していきたいと思います。
複合機・コピー機のスキャンのメカニズム
コピーを行うためには、セットされた原稿や本などに対して光を当て、はね返ってきた光をデジタル信号に変換する動作が行われています。これを「スキャン」と言います。
原稿などをスキャンして印刷する方法は大きく分けて二つあります。
- 原稿台ガラスに対象物を置いてスキャンする方法
- ADFに原稿をセットして両面や複数枚を自動でスキャンする方法
本体の上部にあるスキャナー部分には、原稿などに光を当てる光源、それを取り込むレンズ、光をデジタル信号に変える撮像素子などが一つになった「光学ユニット」があります。
「光学ユニット」は用紙の進行方向に対して垂直な方向(主走査方向)の1ラインを一度に読み取ることができます。進行方向に対して平行な方向(副走査方向)は、用紙もしくは光学ユニット自身が移動しながら読み取ることで、対象物全体のスキャンを可能にしています。
原稿台ガラスでもADFでも、読み取りは同じ「光学ユニット」で行われます。それぞれのスキャン方法の違いを、印刷の仕組みと一緒に見ていきましょう。
印刷の仕組み
オフィスやコンビニで使用されている複合機・コピー機は、電荷の潜像を描いてトナーを吸着し、用紙へ転写する「電子写真方式」を主に用いています。
トナーを運ぶのは「感光体ドラム」と呼ばれる部品で、表面全体を均一に帯電した後、スキャンされたデータやPCなどから出力されたデータを、レーザー光に変換し照射することで画像データが潜像として現れます。
以下、印刷の一連の流れを紹介します。
- 帯電:ドラム表面全体を均一に帯電させる
- 露光: 出力された画像や文字の通りに光を当て、ドラム表面内に電荷の差を発生させる
- 現像: 電荷の差によって、光が当たった部分にのみトナーが吸い寄せられドラムに像が描かれる
- 転写:トナーによって描かれた像を紙へ直接転写する、または転写ベルトに1度移してから紙へ転写する
- 定着: 紙に乗せられたトナーに熱と圧力を加えて定着させる
原稿台ガラスもしくはADFからスキャンされた画像や文字は、②露光の工程でレーザー光によって感光体ドラムに描かれます。スキャン時の動作は読み取りの方法によって違いがあり、対象によって適した読み取り方法が分かれます。
それでは、読み取り方法の動作の違いを見ていきましょう。
原稿台読み取りの場合
原稿台読み取りとは、原稿台ガラスに原稿などを置いてスキャンする方法です。この方法では対象物が固定されているため、光学ユニットが対象物の副走査方向に移動して全体像を読み取ります。
主走査方向の読み取り精度(解像度)は光学ユニットの性能に依存し、副走査方向は光学ユニットの移動精度に依存します。移動は2本の金属軸に通されたユニットをワイヤーで引っ張るなどして動いており、この機械的動作を滑らかにできるか?が重要な要素となります。
ADF読み取りの場合
ADFとは複数の原稿(用紙)を、セットした分だけ自動で読み取りを行ってくれるもので、読み取りを行う光学ユニットは固定され、対象物が移動して全体像の読み取りを行います。
セットされた原稿をローラーによって装置内へ引き込み、光学ユニットの上を通ることで、読み取りを行うことができます。
従来の機種では両面読み取りを行う場合、片面の読み取りを終えてから用紙を装置内に引き戻し、再度裏面を読み取る方式が多かったですが、最近の機種ではADF内にも光学ユニットを設置し、一度搬送経路を通るだけで、両面の読み取りを可能にする「自動両面読み取りADF」を搭載する製品が増えてきました。これにより、スキャナーでの両面読み取り速度は格段に上がっています。
ADFでは光学ユニットは固定された状態のため、紙搬送の精度が読み取り精度に影響を与える要素です。
原稿台読み取りとADF読み取りの使い分け
原稿台読み取りとADF読み取りは、コピーする対象がどのようなものか?によって、使い分けると良いでしょう。
本など冊子になっている場合は、原稿台ガラスにセットしてスキャンします。また、印刷面に凹凸があるなど、特殊な原稿の場合も原稿台ガラスからスキャンする方が良いでしょう。
一方、複数の原稿を連続でまとめてコピーしたい場合や、1枚だけすぐにコピーしたい場合は、ADFが適しています。ただし、厚過ぎる紙や薄過ぎる紙、定形外の紙ではADFでの紙搬送が難しくなるので、原稿台からのスキャンを行って下さい。
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ADFの原稿読み取り速度について
原稿を読み取るスピードについては、カタログ仕様の「自動原稿送り装置」の項目などに記載されています。
「原稿読み取り速度」と記載され、A4ヨコ送りの場合に1分間で読み込める枚数が、片面読み取り・両面読み取り・解像度の違いに分けて表示されています。
読み取り速度は、反転による自動読み取りか?両面同時読み取りか?によって変わってきます。また、メーカーや機種によっても、光学ユニットの性能や紙搬送精度などで若干の違いがあります。
最近では、両面同時読み取りが主流になっており、200ページ/分以上の高速読み取りが可能な製品もあります。また、一度に積載できる原稿の枚数も数百枚と多く、スキャン業務の生産性は大きく高まっていると言えます。
日常的に大量の原稿をコピーまたはデータ化する場合は、読み取り速度が高い製品を選ぶと良いでしょう。
また、製品によっては「反転両面読み取りのADF」「両面同時読み取りのADF」「ADF搭載なし」など選択できる場合もあります。
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スキャンの工程で起きる不具合
スキャンの工程で起きる不具合は、印刷工程に比べると少なく、部品の故障よりも用紙の状態や使い方が原因のことが多いでしょう。
以下が、スキャンの工程で起きる不具合の代表例です。
- 印刷物にスジや線が入る
- スキャンした画像が歪んでいる
- ADFで紙詰まりが起きる
これらの不具合が発生した際は、以下の対処方法を参考にしてみて下さい。
印刷物にスジや線が入る
スキャンを行った印刷物に、スジや線などが入っている場合は、原稿台ガラスに汚れや異物が付着している可能性があります。
ADFからの読み取りだけなのか?原稿台からの読み取りだけなのか?によって、汚れや異物が付いている場所は変わりますが、取扱説明書の手順に従ってガラスを清掃してみましょう。
また、原稿台ガラスの汚れが原因の場合は、PCなどからデータを出力した場合にスジや線が入りません。
PCなどに、取込んだ画像データには同様の線などが入っているはずなので、原因の切り分けはしやすいです。
しかし、ガラスを清掃しても線が消えず、印刷物の同じ場所に常に発生するようなら、読み取りを行う光学ユニットが故障している可能性があります。
その場合は、ユーザー側では手の施しようがないので、メーカーや販売店など保守メンテナンス担当者に連絡をして、確認および修理をお願いして下さい。
▼向きや太さによって原因はよって違う!印刷物に線が入る原因と対策
また、キヤノンの複合機「iR-ADV DX C7700 ⁄ C5700 ⁄ C3700シリーズ」では、原稿の読み取りガラスの表面に、糊や修正液、インクなどが付着しにくい「防汚コートガラス」が使われており、汚れや異物の付着が原因の線やスジが入りにくい工夫がされています。
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【コピー機徹底解剖】キャノンiR-ADV DX C7700 ⁄ C5700 ⁄ C3700シリーズの特徴・リース料金は?
スキャンした画像が歪んでいる
スキャンした画像が斜めになって印刷されている場合は、ADFで正しい位置から真っ直ぐ紙搬送することができていません。
これは、ADFにセットした原稿が湿気や静電気を帯びており、送り出す1枚と次の1枚が少しくっついてしまった状態で読み取りが開始されている可能性が考えられます。ADFに原稿をセットする際は、原稿の束を捌いて、くっつきがないか?を確認してみましょう。
これが原因の場合は、ADFから読み取りを行う時のみ発生し、1つの原稿で複数枚コピーすると、出力される画像は常に同じ歪み方をしています。
ADFで紙詰まりを起こす
画像が歪んでいる場合と重複しますが、用紙が湿気や静電気を帯びていると、斜めに搬送されるだけではなく、「重送」と言って、2枚目も引き連れてADFに給紙される可能性があります。
その場合は、途中で重送のエラーが発生したり、紙詰まりが起きてしまいます。
また、厚過ぎる紙や薄過ぎる紙を使用すると、搬送できずに紙詰まりを起こす場合があります。原稿は対象の範囲内のものを使用するようにしましょう。
まとめ
- スキャンとは光の情報をデジタル信号に変換すること
- スキャン方法は原稿台読み取りとADF読み取りの2つがある
- 原稿台読み取りは光学ユニットが移動して対象物の全体像をスキャンする
- ADF読み取りは対象物が移動して全体像をスキャンする
- スキャン時の不具合は用紙の状態によるものが多く、確認してからセットしよう
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