ぼったくり評価から継続評価へ!紳士が語るソリューション営業の真髄

ぼったくり評価から継続評価へ!紳士が語るソリューション営業の真髄

複合機メーカーと販売店でソリューション営業に長年関わってきた高見様(仮)に中小規模の複合機販売店がソリューション営業を実践するコツをリアルな手法と裏話も含めて教えて頂きました。

 

高見(仮)様
複合機メーカーで営業職に従事、その後独立し中小OA販売店を中心に営業コンサルに関わる。師匠の「ジェントルマンであれ」と言う言葉を胸に今も媚びない価値提案を軸にした紳士の営業指導を行う。退職先との守秘義務も遵守する紳士のため固有の情報は記事でも伏せております。

 

ーー中小規模のOA販売店さんでもソリューション営業という言葉はよく耳にしますが、実践できていない販売店さんが多いのでは。
その通りですね。多くの販売店さんが結果が出るまで耐えきれずに元通りになっている印象です。

 

ーーでは今日はソリューション営業のその手順や組織づくりのコツを教えてください。まず、ソリューション営業の効果は?

メリットが3つとデメリットが2つあります。

■メリット

  1. 受注率UP
  2. 客単価UP
  3. 継続性と安定化

■デメリット

  1. 商談期間の長期化
  2. 知識が必要

 

 

「コピー機は不要」と言われても商談は続く

 

ーー(コピー機Gメン河合、以下略)メリット①「受注率UP」から教えてください。

ソリューション営業を言い換えると「モノ売りからコト売り」です。モノ売りでは「コピー機を買いますか、買いませんか」という問いになり、ユーザーから買わないと言われたらそこで商談は終了してしまいます。

コト売りでは「業務の改善をしたいですか」という問いかけになるので、「コピー機は買わないけれど文書管理に興味がある」と言われれば、それに関連するソリューション(解決策)としてコピー機を含めて幅広い商材を提案できるので、結果として受注率を上げることができます。

 

ーーきっかけを商材から課題にするのですね。

モノ売りではコピー機を買うお客さんだけを相手にするので効率は良いのですが、イナゴの襲来のような刹那的な営業になってしまい、組織としての継続性は育ちにくいですよね。

 

ーー「コピー機を売るまで帰りません」という営業スタイルがイナゴ系ということですね。

モノ売りのある面での最高峰が押し売り、ぼったくりタイプですね。あんなことは絶対にできないので、イナゴ系には尊敬の気持ちもありますが……。

 

ーー次に、メリット②「客単価UP」はどうでしょうか。

課題に応じて文書管理から基幹システムまであらゆる商品を提案するので、客単価を上げることができます。また、オフィス内に複数の複合機やプリンターがある場合は、それらを最適化する提案の中で配置を変えたり、他社の複合機を入れ替えたりすることでコピー単価(カウンター料金)も向上することができます。

家庭用含めた複数台保有のユーザには各コピー機の稼働率、電気料金、スペースコストも割り出す提案になるので面白いですよ。

 

 

社長の飲み会ネタとしてのペーパーレス

 

ーー相場の倍の価格でコピー機を契約している中小企業も多いですが、中小の社長同士でコピー機コストの情報交換がないからではないかと思っていますが、どうでしょうか。

そういう面は確かにありますね。逆に、社長友達から「社内の図面共有はクラウドに統一してるから印刷はしなくなったよ」などと聞くと、すぐに自社にも導入したいと鼻息が荒くなる社長は多いですよ。

 

ーー社長同士の自慢ネタは影響が大きいんですね。

経営基盤が安定した地方の企業ではあるあるかもしれません(笑)。社長仲間に影響されて急にペーパーレスを叫び出す社長が多いですが、我々は紙を完全になくす「ペーパーレス」ではなく、徐々に減らしていく「レスペーパー」を提案することで、業務を改善しながら印刷コストも下げて頂く提案をすることが多いです。

 

 

毎年6,000万の売上を出す営業マンを雇用し続けられるか。

 

ーー極端にやろうとすると反動が大きいですもんね。では、メリット③「継続性と安定化」はどうでしょうか。

今はサブスク型のサービスも増えているので、ソリューション営業では必然的に継続売上が発生する商品を販売していくことになります。

継続手数料のことをアニュイティと呼んでおり、例えばシステムを販売すれば年間保守料が入ってきます。例えばこのようなアニュイティを月100万円積み上げれば年間1,200万円に当たります。1,200万円の利益を出そうとすると、利益率20%でも6,000万円の売上を毎年作らないといけません。

 

ーー毎年6,000万円の商品を売り続けるより、600万円のアニュイティを守り続ける方が継続性は高そうですね。そこにたどり着くのは簡単では無いと思いますが。

その通りで、デメリット①「商談期間が長くなる」につながります。お客様の業務の把握から始まり、課題ごとに商材も変わるので最初の受注まではやはり時間がかかります。

 

ーーソリューション営業をやると決めた社長の気が変わらなければ良いのですが…。

それが、やはり変わってしまうのです(笑)。なのでこのプロジェクトを始める前に社長には腹をくくってもらいます。と同時に、なぜソリューション営業に挑戦するのかというグランドデザインを一緒に作り、心が折れそうな時に一緒に立ち返ります。例えば「おじいちゃんから引き継いだ会社だから次の代に引き継ぎたい」などが多いですね。

 

ーー頑張ってきた祖父母や両親を見てきたわけですね。ただ想いが美しすぎて続かなそうな気もします…。

そうなんです。なので意外に「あの頃のようにバンバン経費を使いたい!」「キャバクラで豪遊したい!」のような身勝手なモチベーションの方が頑張れるという方も多いです。なのでソリューション営業に取り組む背景を掘り下げた上でスタートしないといけません。

ソリューション営業部隊の成長は経営者がキレるのを我慢した度合いに比例するので、経営者のマインドはとても重要です。

 

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    ソリューション営業部隊は2人以上、10%以下

     

    ーー他にはどんなポイントがありますか?

    他には、組織を一度に変えすぎないのもポイントです。既存営業であるモノ売りが目先の利益を生んでいる場合、営業が20人いればソリューション営業部隊は2~3人に留めておきます。

     

    ーー1人でスタートするのはどうですか?

    それは絶対におすすめできません。なかなか利益を生まないプロジェクトとして社内から白い目で見られることが多いので、1人では現場が耐えられないので、最低でも2人は必要です。

     

    ーー「人という字は……」という金八先生の教えは確かなのですね。次にデメリット②の「知識が必要」を教えて下さい。

    お客さんの業務を知り、課題を知り、それを解決できる商品サービスなどの知識が必要になるので、覚えることはコト売りの比ではありません。

     

    ーー誰でもできることではないですよね。メンバー選定はどうすれば?

    知識は必要ですが、必ずしも頭脳明晰なメンバーを選ぶ必要はありません。むしろ凡事徹底、言われたことにまずは真面目に取り組める人が最適です。

    全体を見れば膨大な情報量ですが、経験でカバー出来る部分が多いので継続力があれば問題有りません。なので体育会系の人などは最適です。

     

    ーー年齢はどうですか?

    システムを絡めた営業が多いので、できれば若い方が良いですね。ターゲットは中小の社長なので、社長の子どもくらいの年齢だと入り込みやすいという利点もあります。

     

    ーー逆にダメな人は?

    過去のやり方に固執している人はダメですね。特に50歳以上で過去の成功体験にしがみついているタイプを抜擢すると悪いオーラを発散し出すので、やめておきましょう(笑)。

     

    ーー営業の評価項目も変える必要がありますよね。

    一般的な営業は売上利益などの結果評価にすることが多いですが、ソリューション営業を導入して1年くらいは利益は出ないのが当たり前なので、導入時はプロセス評価に重きを置きます。

    例えば訪問数や特定項目のヒアリング件数など「頑張ればできること」を評価することから始めて、手応えを感じてもらいます。そこから徐々に結果指標に移行していくのが望ましいですね。

     

     

    同業集中エリアを攻める

     

    ーー営業先のターゲットはどう選定しますか?

    よくやる手法として、同業が集中しているエリアを探します。例えば製造業が集まる町工場エリア、観光業が集まるエリア、製薬会社が集まるエリアなど、地域ごとの特性を踏まえて見つけられると思います。その業種が印刷やスキャンなどを使うとより提案がしやすいですね。

     

    ーー同業が集中していると営業効率が良いということですね。町工場エリアを例にターゲットになる規模感を教えてください。

    社長に直接会いやすい規模感は、製造業なら年商5億円以下、従業員20人以下が狙い目です。手法は古風ですが、飛び込み営業が効果的です。

     

    ーーどんな感じで接触するんですか?

    いきなりその場で商談しようとせず、まずは挨拶だけで良いのです。「新しく担当させてもらったので」と声をかけると、改めて時間をもらいやすいですよ。

     

    ーー古風な挨拶ですね……。

    しかし、これが効くんです。

    従業員の方が「新しい担当が来た」と社長に伝えてくれると、社長の方も流れ作業的に時間を作ってくれるケースが多いんですよ。そこで「次回は御社が作っている商品について教えてもらえませんか」とアポを取ります。製造業の社長は話好きな方も多く、自分が作っているものの話であればいつまでも話したいというタイプが珍しくないんです。

     

    ーー「話したい」「アウトプットしたい」という欲求を使うのですね。

    現場では社長さんの話を聴きながら、指図書(製造に必要な情報資料)がどのように流れているか、ラインのどこでモノが溜まっているか、その原因は何か、などを把握していけば、必然的に商材の提案はできるようになります。

     

    ーー話してくれない頑固親父には……。

    ストレートに聞くだけでなく、他社の事例を話すところから関係を作っていきます。情報をもらえば返したくなるのが人間の心理ですから。

     

    ーーテレアポを使うシーンもあるのですか?

    先ほどよりもう少し大きな規模感の会社、製造業で言うと従業員50人、年商5億円以上の規模感に対してです。ここは飛び込みだけでは話が進まないので、テレアポ、WEBサイトからの問い合わせ、飛び込みも含めた複数の手段を組み合わせていきます。

     

    ーーこの規模感だと社長にお会いするのは難しいですか?

    それでも社長に会わないことには始まらないので、ここでは補助金を絡めた情報提供を使います。資金繰りの話はこの規模感なら社長の仕事なので、社長を引き出しやすいです。

     

    ーーようやく最初の商品が売れたとして、そこからどのように提案を広げていくのですか?

    そのためにはまず、継続的に営業がお客さん先に顔を出せる口実が必要です。システムであれば保守契約でお金をいただくので、その運用状況の確認を口実に時間をもらえますよね。

    さらにコピー機を導入できたのであれば、「ガラスを拭かせてください」というのも会社に入り込む口実になります。

     

    ーーこれも昭和の手法ですが…。

    意外と使えます。会社に入り込めば「他に使っているコピー機はあるか?」「カレンダーはどの会社のものを使っているか?」「パソコンの数は?」など、多くの情報を取れます。これを「目で見るサーベイ(調査)」と呼んでおり、練習しながら鍛えていきます。

    さらに、商談連鎖の設計も重要です。

     

     

    「営業時」ではなく「導入時」にこそヒアリング

     

    ーー格好良いワードが出てきました。

    もし会計システムを導入する機会ができたら、会計システム導入時に販売管理システムや人事システム、勤怠のことなども同時にヒアリングしていきます。

     

    ーー導入前と導入後ではお客さんの姿勢が違うんですね。

    営業段階ではお客さんは売り込まれないように心を閉じていますが、逆に購入の意思決定をした後は「買ったものを有効に使いたい」と心を開くモードに切り替わるので、情報もどんどん出してくれます。その時に次の商材のヒアリングを絡めます。

     

    ーー売りながら、次の商材も想定して進める必要があるんですね。

    ただし、会計システムのように税理士からの指定がある商品など、乗り換えに障害が大きいものは上手く後回しにする工夫も必要です。

     

    ーー営業としてもやりがいがありそうですね。

    その通りで、やればやるほど面白くなる営業スタイルだと思います。まだまだ奥深い世界ですが、今回はこのあたりで失礼いたします。

     

    ーーありがとうございました!

     

    オペレーター 杏奈

    高見さん、話しぶりもジェントルマンでしたね!
    高見さんがメーカー勤務の頃、大手ユーザから「コピー機を100台規模で買うから、うちの商品を使って欲しい」とバーター取引を持ちかけられた話もして頂きました。

    ベテランGメン園川

    新人Gメン及川

    100台・・・!それ、断るん?!
    はい、彼のポリシーに沿わないとのことであっさり断ったのだそうです。

    ベテランGメン園川

    でも本音では、ちょっとだけ後悔したと仰っていました・・・。

    ベテランGメン園川

    新人Gメン及川

    100台やもんな!そこがまた人間らしくてええやん。

     

    【編集後記】
    私がコピー機Gメンの一括見積サービスを開始したのは、ある経営者さんの体験がきっかけです。その方は複合機の見積を依頼したところ、断っても断っても強引な営業を受けた結果、

    「コピー機の購入自体が恐怖になった」

    と仰っていました。きっとユーザだけでなく、押し売りする営業にとっても振り返れば素敵な思い出ではないでしょう。これからソリューション営業を含めた継続的な関係を評価する販売店が増え、営業はお客さんを騙すことではなく喜ばせることが評価される業界に出来るよう、働きかけて行きたいと思います。

     

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