家庭用プリンターやビジネス用コピー機など様々な商品を展開するキャノンですが、業務用のA4複合機も豊富なラインナップを取り揃えています。しかし、業務用A4複合機はブラザーが強く、なかなかキャノンの牙城を築けていないのが現状です。
キャノンの歴史
キャノン(キヤノン・Canon)は、コピー機やカメラなどで知られている大手電子機器メーカーです。
1932年当時、日本に輸入され始めたライカの模倣品を吉田五郎氏が作成し、その吉田氏が発案して設立された「精機光学研究所」が、現キヤノングループのルーツとなっています。
同研究所は、翌34年に初の国産小型カメラ「CWANON(カンノン)試作機」を制作し、その後、商標を「Canon(キヤノン)」に変更しました。
1936年には、当時日本最大の軍需光学メーカーであった「日本光学工業株式会社(現ニコン)」の協力のもと、キヤノン第一号機「ハンザキヤノン」を発売し、1937年の法人化を経て、現在に至ります。
現在の主な収益事業は、事業比率45.7%(2018年公表値)を占めている「オフィス・ユニット」で、日本でのコピー機シェアはゼロックス、リーコーに次ぐ第3位(約20%)となっています。
キャノンの動向
キャノンのプリンターは、家庭向けインクジェットプリンター/複合機「PIXUS(ピクサス)」、業務用の小型インクジェットプリンター/複合機ブランド「MAXIFY(マキシファイ)」、業務用レーザープリンター/複合機ブランド「Satera(サテラ)」、A3大型コピー機「imageRUNNER(イメージランナー)」など、多数のブランドを展開しています。
さらに、2018年には近年発展しつつある大型ビジネスインクジェット複合機市場に「WG」シリーズで参入し、同カテゴリーの理想科学とエプソンを相手に挑戦状を叩きつけました。
近年のメーカー各社の戦略は「集中と選択」で、カテゴリーを絞り、得意分野を主戦場とすることが定石ですが、全カテゴリーで全ての競合他社と戦えるように準備するあたりが、キヤノンの「大企業としての自信の表れ」と言えるでしょう。
今回の記事では、業務向けA4レーザー複合機より「Satera」シリーズを紹介します。
オペレーター 杏奈
キャノン複合機について
まずはキャノンの強みと弱みをチェックしてみましょう。
強み
キャノンには以下のような『 強み 』があります。
ラインアップが豊富
「全カテゴリーで優等生」であることがキャノンの強みです。とにかくラインアップが豊富で、逆に迷ってしまう方も多いでしょう。
今回は、A4レーザー複合機に絞って紹介しますが、このカテゴリーだけでも、カラー機が5機種、モノクロ機が7機種あります。
コピーの品質が高い
光学系に強いキヤノンは、コピー(複写)能力の高さに特長があります。読み取りデバイス部のスキャナー精度が非常に高く、低品質機にありがちな「読み取りボケ」などがありません。
一般的には高スペックモデルに搭載されているスキャナーはCCDセンサー、低スペックモデルはCISセンサーですが、キヤノンのA4機はすべてCISセンサーのスキャナーであるにも関わらず、画質がCCDセンサーのスキャナーと遜色ないほど、キレイに読み取れます。
キヤノン独自の印刷言語に対応
キヤノン製品のプリンタドライバ(PCから印刷指示をする際のドライバ)は、キヤノンの独自言語である「LIPS(リップス)」に対応しています。こちらは後述の「導入するのに向いている企業」で説明します。
弱み
次にキャノンの『 弱み 』をチェックしてみましょう。キャノンには以下のような『 弱み 』があります。
初期投資費用とランニングコストが高い
キヤノンは性能が高いため、実用性のある高スペックから標準スペックの製品は価格が少し高めです。
予算のことを考えると、個人オフィスでの使用には少し躊躇するかもしれません。同カテゴリーでブラザーが強い理由も、価格面が大きいでしょう。
また、A4カテゴリー特有のトナー交換方式であるため、コピーチャージ方式と比べると、どうしてもランニングコストが高くなります。
筐体の大きさ
レーザー方式を使用しているため、光源とポリゴンミラーなどの構造上の問題から、エンジン部の大きさが目立ちます。機器自体、あまりコンパクトとは言えません。
ホチキスや中綴じの機能はなし
どこのメーカーのA4複合機も同じですが、このようなコピー機に付けられるようなオプションは一切ないため、ホチキスや中綴じなどの機能を使いたい方は注意が必要です。
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キャノンのコピー機が向いている企業・環境
キヤノンのプリンター・複合機が向いているケースとして、以下の2つのケースが挙げられます。
既にキャノンの大型A3コピー機を導入している企業
既にキャノンのA3コピー機を導入している企業は、キャノンの印字品質やコピー品質に慣れてしまっているので、同じメーカーのキャノンが良いでしょう。
特に大型機(メイン機)と小型機(サブ機)などのように、機器を分散して設置した場合は、ユーザーとしてもプリンタドライバのGUIが大きく変わることがないので、スタッフから不満が出ません。
ペーパーレス推進企業
近年は様々な企業で「ペーパーレス化」が進んでいます。
しかし、膨大な書類をデータ化して保存すると、必ず「あの書類どこ行った?」とデータの管理問題や「データが重すぎて出力できない」などアウトプット問題が起こります。
キヤノン製の「image WARE(イメージウェア)」というドキュメントマネジメントソフトウェアは、日本のペーパーレス化を支援しており、既に多くの企業で導入されています。
「imageWARE」を導入している企業や、導入を検討している企業にとって、アウトプット機としてはキャノン製品が一番です。
新人Gメン及川
ベテランGメン園川
新人Gメン及川
「imageWARE」は、基本的に全てのメーカーのプリンターに対応していますが、LIPS以外の場合、一部機能が制限されてしまいます。
その点、キヤノン製品であれば「imageWARE」の機能制限を受けることなく存分に出力が可能です。
ペーパーレス化を推進しており、キヤノンのソフトを導入するのであれば、プリンターもLIPSを搭載しているキヤノンをおすすめします。
キャノンのコピー機が向いていない企業・環境
逆にお勧めしないパターンとして以下のパターンが挙げられます。
省スペース用途として置きたい場合
悲しいことにサイズが大きいことが難点です。
A4複合機は、カウンター下や狭いバックヤードへの設置もできますが、カウンター下に設置するには、少し大きい印象を受けます。
Canonはレーザー方式にこだわっているため、構造が複雑かつ印刷機構が大きいことが最大のデメリットです。コンパクトな製品ならBrotherがオススメです。
中綴じやホチキス留めには非対応
業務用コピー機のようなフィニッシャー機能がありません。そのため、中綴じ・中折り・ホチキス留めなど、仕上げ作業まで複合機で完結することができず、大量の資料を作成する場合は手間と時間が掛かります。
キャノンの価格相場
続いてキヤノン複合機の相場についてお伝えします。
高スペックモデル
- カラー:MF745Cdw(27ppm、LIPS)/743Cdw(27ppm、CARPS):オープン価格 / 実勢価格:65,000円~100,000円
- モノクロ:MF541dw(44ppm、LIPS)/MF447dw(38ppm):オープン価格 / 実勢価格:64,000円~98,000円
標準スペックモデル
- カラー:MF644Cdw(21ppm):オープン価格 / 51,000円程度
- モノクロ:MF249dw(27ppm)/245dw(27ppm)/236n(23ppm、両面印刷不可、無線LAN不可):オープン価格 / 39,000円~25,000円
エントリーモデル(ファクスなし)
- カラー:MF741Cdw(27ppm)/MF642Cdw(21ppm):オープン価格 / 51,000円~67,000円
- モノクロ:MF244(27ppm、ADF付)/242dw(27ppm、ADFなし):オープン価格 / 18,200円~22,00円
キャノンのおすすめ機種
A4機の導入パターンとして一番要望が多い『 省スペース化 』のニーズにフォーカスした場合、モノクロ機で良ければ「MF249dw」が、スペック・コスト面で一番おすすめです。
まとめ
- キャノンのA4機はラインナップが豊富
- 印字品質、コピー品質が高い
- 「imageWARE」との親和性が高い
- コスト面では他メーカーより劣る(高くなってしまう)