従業員数50人ほどの光系OAコピー機販売店で営業として勤務していた方に、光系営業会社の企業文化や営業ノウハウについてお聴きしました。
新人Gメン及川
ベテランGメン園川
ベテランGメン園川
全ては利益の最大化のために
ーー今は企業向けのソフトウェアを販売をされている鈴木さんから見て、光系の文化とはどういうものでしたか?
「ゾス!」という謎の挨拶に象徴されるように不思議な習慣が多い軍団ですよ。
「お疲れ様です!」「承知しました!」などの挨拶や返答を省略したスラング。光戦士の合言葉として今も使われており、この挨拶を通じて営業としての誇りや帰属意識を互いに確認している面も垣間見れる。
しかしその全てが会社の「利益の最大化」のための文化として最適化されていたんだな、と今は思えます。
ーーどんな不思議な習慣があったんですか?
例えば、社内でずっと明るい音楽が流れていたのは今考えれば奇妙ですよね。
ーー確かに営業会社さんの社内でJ-POPが鳴っているのを聴いたことがあります。
テレアポのテンションを上げるためのようで、光系の会社では一般的ですよ。電話相手のお客さんからも「なんか音楽聴こえるけど・・・」と言われることは有ります(笑)
それから、社内で受注が出たらみんなで机を叩いて賞賛する儀式などは独特ですよね。
ーー前時代的にも見えますが・・・。
確かにそうですよね。しかし音楽も机叩きも光系で根付いているということは無駄な儀式ではなく、相応の価値があったと考えて良いと思います。
ーー利益に繋がらないことなら辞めている?
そこは常に最適化しようとする集団なので、間違いないと思います。
あと9時から18時はテレアポの時間なのでその時間に会議を入れることは絶対に無く、絶対にテレアポか商談を入れないといけません。今のホワイト化の流れとは逆行していますが、自社の利益の最大化という意味ではやはり合理的ですよね。
朝礼で一発芸
ーー朝礼はどんな感じなんですか?
上長からの話の後、数人の営業が指名されて少し話すという流れでしたね。
ーー何を喋れば良いんですか?
難しいことを言う必要はありません。「死ぬ気でやり切ります」「気合いで5アポ取ります!」のように、根性ワードを入れるのが慣習になっていました。
ーー根性が大事なのには同感です。
それから業績が少し悪い時は上長が「高橋!ちょっと空気変えてくんねえか?」という無茶振りがあり、主に若手が一発芸をさせられるという習慣もありました。
ーー朝礼で一発芸ですか?
そうです。退職して3年ほど経つので現職の営業にも聞いていますが、私の古巣では2026年時点でも続いているらしいですよ。
ーーそれは、笑っても良いのでしょうか?
大丈夫ですよ(笑)。スベっている雰囲気も含めてですが、一応笑いは起こります。いつもピリピリした職場でしたが、その時はちょっとだけ空気が和みます。
ーー営業成績が良くても一発芸はやらされるんですか?
いえ、そういう場合は成績が悪い人にパス出来ます(笑)。自分も数字を出せるようになってからは回避出来るようになりました。
ーー売れていない人は地獄ですね。
成績が悪い人が露骨にいびられる文化を作ることで「数字を上げることが圧倒的に有利」という雰囲気をわざと強化している面はあると思います。この辺りも意図的に作られた文化でしょうね。
ーーとすると、年齢が若くても営業成績が良いと威張れる雰囲気があるんですか?
まさに会社はそれを推奨していました。成績が上の若手が成績が悪い先輩に敬語を使っていると社長が「お前なに敬語使ってんだよ」と言って「実績が全て」という雰囲気を作ろうとしていました。しかし結局、それは定着しませんでしたね。
ーーそれは意外ですね、売れない人に人権は無いのかと思っていました。
売れない人に居場所が無いのは確かなのですが、逆に「成績が良ければ天狗になれる」かと言うとまた違っていて、それは降格が当然のように有り得るからです。調子に乗った後で降格するとひどい目に遭うことがわかっているので、降格する可能性が無いほどの強者でなければ横柄にはなりきれないんです。
営業の王道は「明るく元気に、ノリで押し込め!」
ーー営業をしていて一番嫌だったことは何ですか?
お客さんに嘘をつかないといけないことですね。電話口でテレアポ先の社長とあたかも知り合いであることを装ったり、ただの代理店なのに「NTTからの電話」だと勘違いさせるような言い方をしてアポを取らないといけなかったり。
それがあまりに嫌だったので、入社直後に会社をバックれてそのまま辞めようとしたんです。すると上長から電話が入って・・・
ーーどうなるのか恐ろしいです。
私も激しく怒られるのかな想像していましたが、実際にはとても優しかったんです。不満をじっくり聴いてくれて「じゃあお前のテレアポのやり方を築いてみろよ」と。
ーーマネジメントが最適化され過ぎていて恐ろしいですね・・・
辞められるくらいなら、「使える範囲で使う」と言う方針なのでしょうね。実際そこからは約束通りにテレアポの方法は好きにやらせてくれたので、嘘は極力つかずに「安く買って頂けるのでお時間ください」と言う正直ベースの営業に切り替えました。
ーー正直営業って珍しいんですか?
ごく稀にそういうタイプも居ましたが、全体で見れば結局「嘘も付きながら明るく元気にノリで押し込む」営業が成績を出しやすいのは間違い無いと思います。
ーーナンパ師も同じようなことを言いますよね。
チャラく接触した方がチャラい相手をスクリーニング出来るということでしょうね(笑)。我々もガサツな社長さんに営業した方が高額契約をさせやすいですからね。
ーーどのように正直営業で生き残ったんですか?
差別化かなと思います。イケイケ営業では取れない、真面目なタイプのお客さんを拾っていくことが出来たように思います。あとは占い師のように「今の契約だと販売店はこの会社で、次にこんな提案されていませんか?」などと言うと、驚いて信用してくれるという手法も使っていました。
あとは相手の話し方のパターンでこちらの声の大きさ、高さ、速さや話す内容も完全に切り替えていました。今はもう出来なくなってしまいましたが。
ーー正直営業ゆえの難しさはありましたか?
アポを取れる対象も真面目でロジカルなお客さんが多くなり、余計なものを衝動買いさせたりすることは出来ないので余計なものまで色々売りつけようなことはしにくかったですね。
ーーその他、光らしいなと思う社風はありましたか?
お客さんからクレームが発生しても上長から絶対に怒られないということです。それどころか賞賛されます。
クレームを称賛し、さらにぼったくる
ーーなぜ褒められるんですか?
クレームが出るということは、必要の無い商品を買わせて会社に利益をもたらした証拠ですから。
ーー凡人の感覚ではわかりません・・・。
そうですよね、でも「利益の最大化」という意味では一貫していますよね。こういう時、普段は誰よりも怖い上司がクレームを出した担当に歩み寄って「頑張ってんじゃん」などと嬉しそうに声をかけます。
上長が担当に罵倒を浴びせる「茶番劇」
ーーお客さんには謝りに行くんですか?
謝罪に行くのですが、その目的は謝罪ではなくあくまで「追加受注」です。
ーー追加受注?ますますわからなくなってきました。
まずは謝罪を口実に上長がお客さんに電話をするのですが、その段階で「追加で売り込めるチャンスがあるのか」を見極めます。
一度騙されたということは、お客さんが情報弱者で、かつ慎重さに欠ける人であることは間違いありません。さらに電話での話し方も感情的でロジックが弱そうであれば、機嫌だけ取れればチャンスがあると考えます。
ーー感情的なタイプほど余計なものを買ってしまいやすいんですね。
理性の弱い人はどこまでも搾り取られる構造です。
ーー訪問先でどのようにお客さんの機嫌を取り返すのですか?
いつもの茶番劇作戦です。上長とその担当営業でお客さん先に行き、上長が営業をとんでもない勢いで罵倒しはじめます。
ーー担当営業は、戦略だと知っているんですか?
はい、訪問前に上長から「これから客先でお前を罵倒するけど、演技だから気にすんな」と指示があるので、担当営業も顔面蒼白の演技で応えます。
すると、最初は怒っていたお客さんも上長のあまりの剣幕に圧倒されて、なだめに入ることになります。
ーーお客さんがいつの間にか担当営業の味方になってしまいました。
こうなればしめたもので「もう一度ネットワーク構成を最適化しましょう」「お詫びにサービスします」とか何とか言って、また別の商品を売りつけて終了です。
ーー電話後に訪問しないパターンもあるんですか?
ありますよ。知識がある社員や知人の入れ知恵など、別の人間や競合企業がサポートしているパターンなどですね。この場合は追加で売れる可能性は低いので、電話した後で訪問せずに放置します。
ーーえ、放置するんですか?!
はい、クレームは発生していますがあくまで契約としては成立していますし、契約の意向や金額確認は納品時に事務員が電話確認と録音をしているので、訴えられても負けることはないので。
ーーあくまで騙された側が悪い、ということですね。
営業が弱みにつけ込んでいると言えばその通りですが、何も考えず営業マンを信じてしまうというのはどうかしてると思います。
ーーあるOA営業の方は「リース料金をお客さんに曖昧にしか伝えずに売る」と言っていましたが。
うちの会社ではそれは無かったですね。ただ、リース期間が伸びていることをぼかして「料金が同じ」「安くなる」と売っている人は多かったですし、私も期間についてはぼかすことが多かったです。
永久に使われないキャンペーン
ーー他にどんな嘘がありましたか?
これは嘘では無いと思うのですが新しいコピー機なら「今後永遠に使えるように錯覚させる」という手法がありました。
ーーいつかは壊れると思いますが・・・
そこを上手く誘導するんです笑
まず「リースの買取り処理」というオプションを活用します。これはリース契約終了後、2ヶ月分を支払えば買取りさせてくれる契約のことで、特定のリース会社ではこのような契約をさせてくれていました。
ーー再リースではなく?
リース終了後に少額を支払うことでリース契約を延長出来るのが再リースですが、買取りが出来る契約があったんです。
なのでこの手法をアピールして「ずっとリース料金を払い続けるのって馬鹿らしいですよね?今ならキャンペーンで、7年後に2ヶ月分の料金で買取りできますよ」
と説明して、今よりリース料金を上げたりしていましたね。
ーー実際に買い取れるんですよね?
はい、実際にその契約を行使すれば買取も出来ます。でも実際、3年もすればそんなことはほぼ100%忘れているので、途中でなんだかんだ口実をつくって新しい機械に切り替えてもらいます。
ーー正直系の鈴木さんと言えども、少々あくどいことをやってたんですね。
確かにそうですね。あとは相手を見て、大雑把な人だなと思ったら書類に先に印鑑を押させることもありました。
捺印後に営業がこっそり金額を記入
ーーいよいよ恐ろしい話になってきました(汗)
普通はリース書類に書かれている期間と金額が問題無ければ、お客さんが捺印しますよね?
しかしお客さんの雰囲気を見て、言いくるめられそうなら先に書類に印鑑を押させて、後から自分で金額を書くということはやったことがあります。
ーーさすがに問題になるのでは?!
はい、なります(笑)。ただ、書類に捺印されていることは間違いありませんし、印鑑を押した時に金額が書かれていなかった証拠が無いので、完全犯罪が成立するということです。
ーー中身を確認せずに捺印というのもマズイとは思いますが、それにしても恐ろしい・・・。
他に、新規契約の場合は商品ごとの金額を説明する必要がありますが、リプレイスの場合は誤魔化すこともありましたね。
例えば3つの商品を契約しているとして、それぞれのリース終了が①4ヶ月後、②1年3ヶ月後、③2年後だとしてそのうち①と②を入れ替えるとすると・・・
ーーもうわからなくなりました・・・。
書面に落として冷静に見比べないと、何がなんだかわかりませんよね。説明を曖昧にしやすい状況なので、個別の金額は曖昧にしておいて・・・というのは有りましたね。
ーー振り返ってみて、当時の営業活動をどんな風に感じますか?
自分自身の成長にはなりましたし、当時の一緒に苦労した戦友とは一生の付き合いになるだろうなと思います。ただ、やはり当時のお客さんたちには申し訳ないことをしたなと思いますし、もう一度やれと言われても絶対に出来ません。
あと言い切れるのは、これからAIの時代が本格的に到来しても、この手の営業はこの先10年は圧倒的に有効だと思います。だからこそ買い手の皆さんは営業が何をインセンティブにして仕事をしているのかを見極めて付き合って頂きたいと思っています。
ーー短期での利益を追っている営業は特に要注意ということですね。有難うございました!