「コピー機の仕入れ先を途中変更出来ないなんて、俺知らなかったよ・・・」
東京上野の安い居酒屋で、複合機販売店を立ち上げた経営者がポツリと漏らした一言を当初は一切信用していませんでした。彼は 「同じメーカーの複合機を、別の代理店から仕入れることが事実上できない」 と愚痴をこぼしていましたが、仕入元を一度選んだら二度と変えられないなど、当時の私は到底信じられませんでした。
仕入元を変えられない、ってどういうこと?
例えば田中事務機というOA販売店が、リコー複合機をリコー代理店Aから仕入れていたとします。しかし田中事務機はリコー代理店Aに不満を持ったので、別のリコー代理店に
「リコーの複合機を御社から仕入れさせてください」
と相談したとします。この時、問題なく卸し価格や条件の話に移行出来るパターンは稀で、ほとんどの場合新規代理店から条件提示が無いか、もしくはリコー代理店Aより明らかに高い卸し価格しか提示してくれません。
なぜこんなことになるのでしょうか?
コピー機業界はムラ社会
背景にはメーカーと販売店との独特の力関係があります。メーカーは中小の販売店には優位に立っていますが、多くの顧客を保有している大手販売店には弱い立場になります。
大手販売店はメーカーにとって
・大量販売
・保守
・価格統制
を担ってくれる貴重な存在です。その機嫌を損ねるリスクを取ってまで 中小代理店の仕入元の乗り換えを認める理由がメーカーにはありません。
新人Gメン及川
ベテランGメン園川
例えば、田中事務機のリコー仕入元が泣く子も黙る大塚商会(あくまで例です)だったとします。田中事務機が大塚とは別のリコー販売店に仕入元を切り替えたとすると、それまで田中事務機にリコーを卸してきた大塚商会の担当者が黙って見過ごすはずがありません。このようなケースで、あえて既存の力関係を崩してまで田中事務機に協力するメーカー担当者は、まず居ないでしょう。
一方、万が一このような障壁が無く、田中事務機が代理店Bを通してリコーを仕入れたとしても今度は代理店Cや代理店Dがさらに安い卸し価格で田中事務機に卸すことになり、どんどん卸価格の水準が下がってしまい、メーカーや大手販売店側の利益が削られてしまう結果になります。
従って、価格水準を高く保ちたいメーカーとしては、最初の上位店である大塚商会から一切切り替えが出来ない仕組みにした方がメリットが有るという構造になっており、メーカーは新規代理店への切り替えを許可しません(明確に拒否すると独禁法違反に該当するので、曖昧な言い方で断るケースが多い様子)。
新人Gメン及川
ベテランGメン園川
一部の例外を除いて、複合機業界では「どのユーザが、どの代理店ルートで買ったか」をメーカーが把握しています。
例えばリコー複合機がABC不動産で利用されているとして、その製品は一次代理店の大塚商会と二次代理店の田中事務機を通して納品しているという事実を把握するシステムになっています(これは義務ではなく慣習のようです)。
一次代理店は自社の代理店や顧客をメーカーに把握してもらうことで自社の代理店と顧客をメーカーに守ってもらうことが出来、またメーカーは代理店を守ることで上位店に恩を売ることが出来るという相互扶助の仕組みです。
結果として二次店や三次店が仕入価格で割を食うことになりますが、大手代理店に裏切られるリスクや卸し価格が下がってしまうマイナスを考えれば「大したことでは無い」ということでしょう。
但し、例外も
しかしメーカーと代理店の組み合わせによっては卸先をメーカーに申告していない一次店もあるので、このような一次店は二次店を奪うことも奪われることも許容しています。
また代理店とメーカーの力関係も重要で、弱小一次店から仕入れている二次店が大手一次店に問合せた場合には先程の「既存店優先の原理」は崩壊し、大手一次店の乗り換えを阻止しないということも有るようです。
回避策は2つ
仕入元を急いで決めない(仕入元未確定の場合)
御社が慌てて売ろうとしている場合、仕入価格の比較になりにくいことを仕入元もわかっているので、高い卸し価格を設定されることが多いです。そこで仕入元を確定してしまうと先述の通り、二度と出られない蟻地獄に自ら入ることになります。
もし御社が急ぎで販売しなくてはいけない場合、仕入れて自社で販売するのではなく、あえて顧客を上位店にトスして販売してもらい、手数料を御社がもらう仕組みで仕入元の確定を回避した方が長期的に見た時に利益が大きいでしょう(目先の利益は減ってしまいますが)。
一度仕入元を決めてしまった場合
このケースでも、メーカーに下位店を報告しない一次店であれば問題なく切り替える事ができます。通常はあり得ないことですが、メーカーと一部代理店の力関係の中で黙認されてきた慣行で、これを利用します。
ただ付き合いが浅い代理店を相手に「御社は卸先をメーカーに報告しますか?」と聞いて正直に応えてくれる代理店はいないと思うので(メーカーのスパイを疑われる・・・ほどメーカーは怖い)、コピー機Gメンまでご相談頂ければ、一部メーカーを除けばご紹介可能と思います。
今回記載した卸の「1社1商流」はオフィス機器の中では恐らく複合機に特有のもののようで、周辺機器であるビジネスフォン、UTMなどでは見られません。なぜ複合機だけこのように不自由な仕組みが生まれて継続されているのか、調査を進めます。